2020年10月30日(金)に「2020年度グッドデザイン賞」の大賞選出・発表会がオンラインにて行われ、「大賞」「金賞」「グッドフォーカス賞」の受賞結果が発表されました。
今年度のグッドデザイン賞のテーマは、デザインにおいて他者や社会、環境などについて考え、それに応えることを示す「交感」。昨年のテーマである「美しさと共振力」を受け継ぎつつも、その次のステップへと飛躍しました。
新型コロナウイルス感染症による影響で減少すると思われた応募者数ですが、昨年とほぼ同数の4,000件を超える応募があったそうです。これについて、日本デザイン振興会の理事長である大井篤氏は「デザインに対する志と熱意に敬意を表したいです」とコメントを寄せました。
そんな4,769件の審査対象の中から、審査において高く評価され、かつ多くの生活者から支持を得たデザイン=大賞に選ばれたのはWOTA株式会社による自律分散型水循環システム [WOTA BOX]。世界初の「持ち運べる水再生処理プラント」として生活排水を98%以上再利用し、上下水道いらずの水利用を可能にしました。
プロデューサーである前田瑶介氏は本デザインについて、当日実施されたプレゼンテーションで、「今までとの一番の違いは、水インフラを土木・建設の世界から、家電・製造業の世界に変えた点です」とアピール。「水道では解決できない水需要に、低コストかつ短時間で応えることができます」と説明しました。
ちなみに、 [WOTA BOX]と僅差で決選投票となったのはVUILD株式会社による宿泊施設 [まれびとの家]。デジタルファブリケーション技術を用いて、木材調達から加工・建設までを半径10km圏内で完結させ、宿泊施設を作りました。
森にデジタルファブリケーション技術を導入することで、豊富に植わった大径木を地域内で家具・建築化できる生産体系を構築。さらに地域の大工と共に設計を進めることで、土着性とデジタルの配合に成功した点が高く評価されました。
2020年度グッドデザイン賞受賞結果
(カッコ内:対前年比)
受賞件数:1,395件(-25件)
受賞企業数:974社(+34社)
審査対象数:4,769件(-3件)
グッドデザイン賞受賞発表会には、審査委員長の安次富隆氏と審査副委員長である齋藤精一氏が登壇。安次富審査委員長は今年の傾向について「小さなシステムをつくり、それを多様に適合させていこうという循環型の提案が多くありました」と話し「そのものはもちろん、その背景にある思考を丹念に見ていきました」と審査を振り返りました。
また、審査員として「ベターでもベストでもない"グッド"を選ぶ」ことを軸にしていると明かし「上から目線で評価するのではなく、また比較でなく、『いいね』『きれいだね』そう言い合えるものを残しました」とコメントしました。
齋藤氏もそれに大きく頷き「一つ一つを細かく調べ、ディープなところまで審査を行いました。そして、胸を張って『グッド』と言えるデザインを選出しています」と審査にかける思いを語り、 [WOTA BOX]については「問題に対して、本当に何が必要なのかを見極めた部分を高く評価し、当たり前のものとなっていた水をここまで疑い、そしてこのスピード感、価格で新しいものを生み出す点も素晴らしいです」と称えました。
六本木未来会議では、審査委員から高い評価を得て選出された100点のデザインが展示、紹介された「グッドデザイン・ベスト100」のレポートを掲載中。ファイナリストにも残った「東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト」をはじめ、ほかにどんなデザインが「グッド」として選ばれたのか、ぜひ覗いてみてください。
また、21_21 DESIGN SIGHTでは、新しく生まれたデザインではなく、スタンダードとして愛され続けるデザインの価値にフォーカスした「2020年度ロングライフデザイン賞受賞展」が11月8日(日)まで開催中です。あわせてご覧ください。
編集部 高橋
2020年度ロングライフデザイン賞受賞展
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3
会期:2020年10月30日(金)~11月8日(日)
開館時間:平日11:00~19:00 土日祝10:00~19:00
観覧料:無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://www.2121designsight.jp/gallery3/longlifedesign2020/
グッドデザイン賞(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.g-mark.org/