六本木エリアのギャラリーを編集部スタッフの目線で紹介する「六本木ギャラリー探訪」。今回は、以前も本コラムでご紹介した「ペロタン東京」「Yutaka Kikutake Gallery」も入っている六本木のピラミデビルの4階にある「TARO NASU」です。
(※今回のインタビューはコロナウィルス感染拡大防止のためメールインタビューにて実施しました)
お話を伺ったのは、オーナーの那須太郎さん。「最初にギャラリースペースを持ったのは、1998年、佐賀町の食糧ビルの一室でした」と振り返りつつ「当時にくらべると、東京の現代アートのマーケットも拡大してきたことを実感します」と本ギャラリーについて語ってくれました。
まずは、ギャラリーオープンの経緯から。「六本木に移転したのは2019年の5月です。約10年いた東神田のスペースを離れて六本木に戻ってきました。東神田に移転する前は六本木の芋洗坂のギャラリービル内にスペースがあったので、10年ぶりの六本木です。
(六本木に開廊した理由について)アクセスの良さや、アートエリアとしてだけでなくショッピングや飲食の街としてもアクティヴな点に魅力を感じています。もちろん森美術館の存在も大きいです。豊かな生活のための要素の一つとして、アートが自然に溶け込める環境を提供してくれる場の力というのは大事だと思っています」
TARO NASUでは、コンセプチュアルアートを軸とした活動を行なっているアーティストの作品の紹介を通じて、現代アートのさらなる可能性を探っていますが、今後はこれまでとは異なる仕事へのアプローチも考えているのだとか。
「数年前に画廊とは別にアート&パブリックという会社を立ちあげました。画廊でやってきた仕事と社会との接点を考えた時に、画廊という枠を外すことで新しいことができるのではないかと思って始めた事業ですが、それ以来、岡山芸術交流という官民一体のパブリックアートプロジェクトの企画やディレクションに携わったり、インテリアデザインとアートの関係を考えたりとこれまでとは異なる仕事へのアプローチも可能になっています。
画廊ではこれまで以上に展覧会の実現と発信にエネルギーを注ぎ、アート&パブリックではアートと社会のより充実した接点を模索するという、二本立てで、アートのおもしろさを追求していきたいですね。
そして、コロナの影響で世界的に経済活動が停滞しているなかできっと様々な変化がこれから生じていくはず。せっかく拡大してきたマーケットの縮小ということにならないように新しい道を模索していきたいです」
変化が多い今日の中でも、絶えず歩を進め続ける那須さんに「デザイン&アートの街」としての六本木について聞いてみました。
「都市が与えることができる様々な楽しみがバランスよく共存しているのが六本木だと思います。六本木ヒルズが劇的に街の風景を変えたことはもちろんですが、東京ミッドタウンがあり国立新美術館があり、麻布十番商店街があり、他方、劇場やレストランがあって、と新旧が並存して作り出す都市のダイナミズムやスケール感の違いが生む多様性がおもしろい。そういう"寛容"な場所だからこそ、アートやデザインのような遊び心に挑戦するものが活きてくるのかもしれないですね」
現在開催されているのはリアム・ギリックの個展「馬らしさはあらゆる馬の本性である」。ギリック自身の原点に立ち返る、彼の本質を体現するかのような展覧会なのだとか。
「展覧会タイトルはジェイムズ・ジョイスの代表作『ユリシーズ』からの引用ですが、ギリックは美術学校時代に同じタイトルで論文を書いています。ものの"存在"と"本質"との違いを識別することの重要性を説くこの『ユリシーズ』の一節は、ギリックの創作活動の原点の一つ。ギリックの作品世界をしるためのよい機会を与えてくれる個展だと思います」
「馬らしさはあらゆる馬の本性である」は7月4日(土)まで開催中です。またとないこの機会に、ギリックの作品世界を感じに行ってみてはいかがでしょうか?
「TARO NASU」
住所:〒106-0032 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル4F
TEL:03-5786-6900
営業時間:12:00~17:00
※6月2日(火)より当面の間、時間を短縮し営業をしております。
休廊日:日曜、月曜、祝日
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):http://www.taronasugallery.com/