水野学さんのインタビューから誕生した"クリエイティブディレクションを学ぶ学校"「六本木未来大学」。全5回のうち第4回までが行われ、いよいよ2016年3月7日(月)に開催される「水野学さん、まとめると、クリエイティブディレクションって何ですか?」が締めくくりになります。そこで、開催直前の"総復習"として、これまでの講義内容をまとめてご紹介。参加予定の人も検討中の人も、気になる講義をぜひチェックしてみてください。
第1回目の講義を担当したのは、コピーライター/クリエイティブディレクターの小西利行さん。いわく「伝える」ではなく「伝わる」が「最大にして最短のクリエイティブディレクションの考え方」。
「みなさんがここに来るまでにたくさんの広告を見たと思いますが、覚えているものってありますか? そんなにないですよね。それって、伝わってないってことなんです。『伝える』はエゴで、『伝わる』は共感。そして大切なのは『伝わるアイデア』を発見しようとする姿勢です。今は、新しく発見された『伝わるアイデア』が、みんなから共感され、広がる時代。クリエイティブディレクションの最初の関門は、伝わるように変換できるかどうか」
さらに「コンセプト」についても。コンセプトとは「それがあることで、みんなが一気に仕事に取りかかれる言葉」。小西さんが以前手がけたイオンレイクタウンを例に話してくれました。
「『人と、自然に、心地いい』っていう、非常にダサいワードを出した(笑)。そうしたら、じゃあ私は椅子をたくさん置きますとか、壁の色を少し明るくしますとか、アイデアが100以上も上がってきたんです。これがコンセプトとして機能したということ。今もイオンレイクタウンにはこのコンセプトが生きていて、自走してアイデアを出しているようです。こうなったら、クリエイティブディレクションはすごくうまく回っていきます」
第2回は、NTTドコモで「iモード」の立ち上げを行い、現在は慶應義塾大学で教鞭をとるかたわら数々の企業で取締役を務める夏野剛さんが登場。
「環境が激変しているんだから、ずっと同じビジネスモデルではやっていけません。(中略)アップルがiPodを出したとき、日本の技術者は『これはハードディスク付き音楽プレイヤーで、落としたら壊れる』なんて言っていたけれど、それは間違い。あれはiTunesというソフトを使って、ネット経由で音楽を聴くことを前提にした装置。つまり、アップルはビジネスモデルを変えたんですよ」
「(日本は)経営の三種の神器『人、金、技術』、全部そろっているんです。弱いのが、語学能力の低さや、予定調和好きなところ。会議で反対意見を言うと、上司が『おれの顔に泥を塗った』とか、よくあるでしょう? でも、これは甘え。摩擦があるほどイノベーションは起こりやすくなる。だから、意見が違う人といっぱい話してください。20年で生産性が上がっていないということは、これからアメリカ並みに成長できるということ。そのチャンスがごろごろ転がっているのが、今の日本なんです」
映画プロデューサー・作家として活躍する川村元気さんが、映画「バクマン。」を例に教えてくれたのは、映画や小説をつくる際の「思考回路」について。
「重要なのは、面白さを『発見』すること。そして発見の組み合わせを『発明』すること。映画プロデューサーはシェフみたいなもので、まずはマンガや小説などからいい素材を発見する必要があります。そこに、監督や脚本家、俳優などクリエイターを掛けあわせて、工夫を凝らした宣伝広告を打ってお客さんに届ける。この組み合わせを間違えると、料理と一緒で、すべてが台無しになってしまうんです」
「僕は脳の半分くらいに『違和感ボックス』を持っていて、そこに気づきや思いつきをいつもためているんです。それが『発見』につながっている。ひとつの発見だけで作品をつくることもできるかもしれませんが、僕はそこからしつこく粘って、3つか4つの発見の組み合わせを『発明』する。この作業に延々と時間をかけるのが、僕のものづくりの基本になっています」
先日行われた第4回講義では、博報堂で雑誌『広告』編集長を務め、現在はクリエイティブエージェンシー「ケトル」で多彩な仕事を手がける嶋浩一郎さんがメディアごとの「作法」について教えてくれました。
「よく広告代理店の人が『ワンコンテンツ・マルチユースだからお得ですよ』って言うんです。でもそれは間違っていると思います。たとえば同じテキストを書籍にすることも雑誌にすることも、ウェブサイトに載せることもできるけれど、"乗り物"が違えば、編集の作法が異なります。コミュニケーションに携わる人はその違いに敏感にならなきゃいけない」
さらに、「不特定多数を相手にしているのに、コミュニケーションの質がワン・トゥ・ワンになっている」ラジオ的なコミュニケーションが必要になる、と嶋さん。
「(今後)企業と生活者のコミュニケーションがメッセンジャー上で行われるようになるはず。すでにヤマト運輸はLINE上で配達通知したり受取日時が変更できるサービスを開始しているし、(中略)これからは、企業と生活者がどんどんプライベートな中でやりとりするようになる。そう『みなさん』から『あなた』へ、ラジオ的なコミュニケーションに変わっていくと思っています」
そして、今期最後の授業では、水野さん自身が登場し、これまでの総括として「クリエイティブディレクションのまとめ」について語ります。これまでの内容を"復習"しつつ、最後の講義をぜひ聴いてみてください。申し込みは3月4日(金)まで受付中、気になる方はぜひ。
編集部 飯塚
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六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#07
「六本木未来大学 by 水野学」第5回
「水野学さん、まとめると、クリエイティブディレクションって何ですか?」
【日 時】3月7日(月)19:00~21:00
【会 場】東京ミッドタウン・カンファレンス(ミッドタウン・タワー4F/東京都港区赤坂9-7-1)
【定 員】150名 ※事前登録制
【授業料】2,000円(税込)
お申込はこちら
http://6mirai.tokyo-midtown.com/page/project07/#class-05