4月25日から26日にかけて、一夜限りのアートの祭典「六本木アートナイト2015」が行われました。今回、六本木未来会議は「六本木未来かるた」で参加。これはクリエイターインタビューが50人を迎えたことを記念して、これまでインタビューで語られた「六本木の街を魅力的にするアイデアやヒント」を"かるた化"したもの。今回のレポートでは、六本木アートナイトと、あわせて開催されたかるた大会の様子をお届けします。
六本木アートナイトのメインプログラムは、日没とともにスタート。18時30分になると、六本木ヒルズで「コアタイムキックオフセレモニー」が開催されました。今回のメインビジュアルを手がけたファンタジスタ歌磨呂さん、アーティスティックディレクターの日比野克彦さん、メディアアートディレクターの齋藤精一さんなどなど、参加アーティストたちが次々に花道を通ってアリーナに集結。
「今回の目玉、アートトラックが、100組を超えるアーティストが、今宵、街の中で、光り、つながり、参加する。去年はダウンを着ていましたが、今年は6回目にして一番暖かいですね(笑)」と日比野さん。「アートトラックプロジェクトは、『街が生き物だったら』というキーワードからはじまりました。たくさんのプログラムがありますので、明日の18時まで、ぜひ!」と齋藤さん。
お二人のそんなやりとりを経て、今回のテーマ「ハルはアケボノ ひかルつながルさんかすル」を全員で唱和して、いよいよコアタイムがスタート!
セレモニーの直後、アリーナ横に設置されたアートトラック「アケボノ号」に仕込まれた3つの巨大ミラーボールが回転し、DJによるライブステージがはじまりました。こちらのトラックは、もう1台の「ハル号」とともに、ライゾマティクスが制作したもの。アケボノ号は実際に街なかを走って、六本木の各所を移動してパフォーマンスを行います。
アリーナの近く、毛利庭園では、以前ブログでもご紹介したチームラボによる「願いのクリスタル花火」が展示中。オープニングセレモニーの直後ということもあって、これからアートナイトを楽しもうというたくさんの人がスマホ片手に花火を楽しんでいました。
その少し前、東京ミッドタウンでは18時から「六本木未来かるた大会 by 六本木未来会議」がスタート。かるたの配布だけでなく、実際にかるたを使った参加者同士による対戦も行われました。勝者には六本木未来かるたの箱入りフルセットが贈られるとあって、会場はすでに長蛇の列。
配布用に用意した全67枚の札がこちら。大会会場の東京ミッドタウンのほか、21_21 DESIGN SIGHTやIMA CONCEPT STOREなど六本木の各所でも配布を行いました。配布先で話を聞いたところ、かなりの人気で品切れが続出。内容はすべて、特設ウェブサイトで見ることができますので、ぜひご確認を。
大会が行われたのは、ガレリア館内の床がガラス張りになったエリア。ここに畳を敷いて、6名1グループで対戦を行いました。横には竹の植栽もあって、まさにかるた大会にぴったり!
写真は東京ミッドタウンに設置された「ゴジラ」の立体作品(「MIDTOWWN meets GOZILLA〜RETURNS〜」)、多くの人がカメラを向ける中、SNSでハッシュタグをつけて投稿することで赤く発光する演出が。今回のアートナイトでは、こんな「参加する」仕掛けがたくさん。ここからは六本木各所で行われたプログラムを紹介します。
こちらは、けやき坂にあるパブリックアート「カウンター・ヴォイド」前の様子。東日本大震災をきっかけに、作者の宮島達男さんの手によって消されたこの作品を使って行われていたのは、再点灯を目指す「リライトプロジェクト」によるワークショップ。以前、宮島さんがクリエイターインタビューで語ってくれた構想が、アートディレクターの長嶋りかこさんなど、賛同する人たちの手で具現化していました。
「3.11について考えてもらうために、私たちからのメッセージの一部をブランクにして、そこに入る言葉をウェブサイトに投稿できるようにしました。僕が書いたのは『3.11が"暗くなっ"ている。』。みんなの想いをウェブにアーカイブして、再点灯へのエネルギーにしていけたらうれしいですね」(宮島)
「このメッセージの元になったのは、私が考えていた『3.11が消えかかっている。』という言葉。あれから4年が経って、忘れられつつある3.11について、そして環境や立場によっても異なる想いを目に見えるようにしたくて。プロジェクトははじまったばかり、秋には3.11後の社会を考え、切り拓いていくためのスクールも開校予定です」(長嶋)
ここは外苑東通りから一本裏手に入ったビルの中。工事中でスケルトン状態になっていた地下1階では、台湾の若手作家、ウー・ジーツォンの作品が展示されていました。左が「Wire I」、右が「Crystal City 002」、いずれもプロジェクターで網の影を壁面に投影したメディアアートです。ゆっくりと動きながら多様な形の影が変化していく様子は、会場となった地下空間の雰囲気とあいまって神秘的な雰囲気。
同じビルの4階では、映像作品が上映中。舞台はとある写真館、その主が鑑賞者に向かって「いい写真になりますよ」などと語りかけながら、カメラのシャッターを切ります。その後、暗室で主が手にしたのは、なんと鑑賞者が写った写真! 一連の映像の中に観ている自分が登場するという、驚きのインタラクティブアートでした。
こちらのビルでは、オープニングセレモニーを終えたばかりの日比野さんに遭遇。このあとも何度かお見かけしましたが、参加者のみなさんと一緒になって六本木の街を巡って、アートナイトを楽しんでいた様子。
冒頭でも紹介したアートトラックの片割れ、「ハル号」は東京ミッドタウンに常駐。このトラック、六本木に関するデータを収集してそれに対する感情をも表現する「人格を持った働く車」なのだそう。さらにこのトラックにも、参加型のある仕掛けが......。
それは、特設サイトから投稿した文字を、たくさんの提灯が並んだ「提灯アレイディスプレイ」に表示する機能。写真は、ディスプレイに表示された「しろくま」という文字が流れていく様子、投稿した参加者からは「出た!」と歓声が。
トラックの反対側では、アーティスト、DOPPELMONさんによるライブペインティングが開催中。描いていたのは巨大な龍の姿。写真は20時頃の制作状況で、明け方の完成を目指しているこのことでした。
「開始1時間前に簡単に打ち合わせをして描きはじめました。ついお客さんとおしゃべりしちゃって、なかなか進まないんですが(笑)。ライブペインティングは描き手に感情移入できますから、僕が巨大な絵に挑む姿を自分に置き換えて、気持ちに火をつけてもらえたらうれしいですね」
東京ミッドタウンの地下1階では、「Tokyo Midtown Award 2014」アートコンペの受賞作家6名による作品群が展示中。写真の住田衣里さんによる「Canon」のほか、それぞれが六本木アートナイトのために制作した新作が展示され、行き交う人々の目を楽しませていました。
日没からおよそ3時間が経ち、六本木アートナイトはますます盛り上がりを見せます。六本木ヒルズ、東京ミッドタウン、国立新美術館を中心に、六本木各所で展開されるプログラムの数は100以上。「六本木未来かるた大会」は23時まで開催されていました。
今回の六本木アートナイトでは、「オープン・コール・プロジェクト」として一般からの作品も公募。選ばれたアーティストたちが、街角で展示を行っていました。写真は、スイッチ総研による「六本木アートナイトスイッチ」。写真中央のサイリウムが"スイッチ"になっていて、振るとパジャマ姿のおじさんがやってきて小芝居をしてくれるという内容。
写真左のカラーコーンを使ったおかだゆかさん&川名宏和さんの作品「KAWAT Tower」をUFOに見立て、「まいったなぁ、ここ、UFOがよく停められるんだよね〜。......はい、六本木商店街スイッチWIND」とひとしきりしゃべってはどこかに消えていきます。ちなみに「WIND」は、展示場所のお店の名前、これを何度も何度も繰り返していました。
国立新美術館の敷地内に展示されていたのは、たくさんの大きな花。これらは機械彫刻作品で、ほのかな光に照らされてゆっくりと開閉していました。通りから少し離れた静かな場所、しかも夜ということもあって、なんとも幻想的な雰囲気。
国立新美術館の敷地をさらに奥へ進むと、冒頭で紹介したアートトラック「アケボノ号」の姿が。ボディのデコレーションはアーティストのMAHAROさんによるもの。ここではミラーボールを参加者が操作するというパフォーマンスを披露、このあとも各所に出没していました。
国立新美術館の隣、政策研究大学院大学に展示されていたのは、なんと巨大な飴。蛍光灯を用いたシャンデリア作品で知られる東恩納裕一さんがつくり出した、ゆっくりと回転するオブジェです。先ほどの「Bloom」とはまた違った意味で幻想的な風景に、足を止めて鑑賞する人がたくさん。
時間はおよそ22時、夜が深まる中、東京ミッドタウンのかるた大会会場は、相変わらず盛況。参加待ちの列が途切れることなく続き、中には何度も並んで参加した人の姿も。
試合は3ヶ所で同時に開催。「六本木の夜を もっと活かそうぜ」など、読み手が札を読みあげると、参加者たちは描かれたイラストと「ろ」の文字を手がかりに、札を探して奪い合い。制限時間は「六本木」にちなんで6分で行われました。
完全オリジナルのかるたで、経験による差がなかったせいか、子どもたちも奮闘。この頃には配布用の札もすべてなくなり、試合で勝たなければ「六本木未来かるた」が手に入らないとあって、終了間際の大会はさらに白熱していました。
「賞品のかるたセットがほしくて参加しました(笑)。かるた大会なんて、何年ぶりだろう。途中まではぜんぜん取れなくて、まさか勝てると思いませんでした。うれしいです!」
こちらの試合では、右列中央の女性が見事に勝利。たくさんの人が「かるた」という形でクリエイターのアイデアを楽しみ、一夜限りのアートの祭典を思う存分満喫していました。
23時を回って「六本木未来かるた大会」は無事に閉幕。その後も六本木アートナイトはますます盛り上がり、お祭りは翌日の18時まで続きました。ちなみに、かるたの配布は終了しましたが、特設サイトではPDFデータがダウンロード可能。ぜひプリントアウトして、ご自宅でも楽しんでくださいね。