21 日比野克彦 (アーティスト)

日比野克彦 (アーティスト)

3月23日~24日、六本木の街を舞台にオールナイトで開催されるアートの祭典、「六本木アートナイト」。そのアーティスティックディレクターに就任した日比野克彦さんの六本木未来計画は、年々規模を拡大するこのアートプロジェクトに託す思いそのもの。一夜限りにして、一夜限りにあらず。地域の人と共につくり上げるお祭りで、六本木をアートとデザインの街に変えようとしています。

update_2013.2.6 / photo_taro hirano / text_tami okano / edit_rhino

六本木にあるもの。夜。

大地の芸術祭

大地の芸術祭
新潟県十日町市と津南町からなる、
自然と人間が共に暮らす「里山」が今も残る地域越後妻有にて、
3年に1度、開催される世界最大規模の国際芸術祭。

 「六本木アートナイト」というタイトルを初めて聞いたとき、なるほどな、と思ったんです。僕は10年ほど前から地方のアートプロジェクトに関わっているのですが、2000年から新潟ではじまった「大地の芸術祭」は、美術館ではなく、その土地、「その場所」にあるものを活用し、作家が土地の力を吸い上げて作品にしていく。香川県の直島などを舞台にした「瀬戸内国際芸術祭」もその場所にあるもの、つまり瀬戸内海の島々そのものをステージにしている。

 昔は「田舎」と言われていた場所が、今は田舎とは言わせず、「場の力をもっているところ」なんだという思いが地域にはあるし、そういう認識がみんなの中にも出てきたと思うんですね。で、新潟がたとえば「棚田」で、瀬戸内が「島」だったら、じゃあ、東京ってどういう力を持っているの? 六本木には何があるの? というと、「夜」でしょう。だからアート"ナイト"はとても腑に落ちたし、これは面白いな、と思ったんです。

地域の人たちと関わりをつくっていくために。

六本木アートナイト

六本木アートナイト
六本木地区の美術館や商店など、地域と人が一体となったアートイベント。日比野さんは2009年に行われた第1回六本木アートナイトからアーティストとして参加。今年のアートナイトの情報はコチラからどうぞ。

 昔は東京を地方だとは思っていなかったのですが、スカイツリーができはじめた頃、5、6年くらい前からかな、下町を拠点にアーティストや学生たちが動き出すようになってきて、「東京」をひとくくりに言うのではなく、墨田区や台東区、東京の中の「地域」を語るようになってきた。それでふと思ったんです。そうか、東京も地方なんだ、って。僕が続けている「明後日朝顔プロジェクト」もそれまで東京ではやったことがなかったけれど、千代田区にある「アーツ千代田3331」でやってみたんです。すると、地域のおっちゃん、おばちゃんたちが朝顔の世話をしに来てくれる。その時に改めて、東京にも住民がいて、当然だけれど地域というものがあり、コミュニティがあるんだ、って思ったんですよね。

 それで、今回の「六本木アートナイト」ですが、六本木の魅力は「夜」だということに加え、ぜひやりたいと思っているのが、地元の人たちとの関わりをつくっていくこと。六本木という地域と一緒につくっていくことです。六本木商店街の方々とも話をしていて、アートナイトは一晩だけれど、その日に向かって一緒に盛り上げていく、そのプロセスもひとつのアートだ、という言い方をしています。

アートナイトは春のお祭り。年中行事にしたい。

 住民と一緒に「六本木アートナイト」をつくり、一晩明けて終わったときに、また来年やりたい、って、すぐ思うような「祭り」にしたいんですよね。祭りって、準備しながら祭りに向かって進み、終わるとすぐまた次の年の準備が始まる。そういう住民の「年中行事」にしていきたいんです。

 年中行事になることはアーティストたちにとっても、大きなことだと思うんですよね。アートナイトは今年で4回目で、続けていけば参加したアーティストも累積でどんどん増えていく。その人たちにとって「春の夜には、六本木アートナイトがある。六本木に行けば仲間に会える」っていう恒例の1日にしたい。

 ミュージシャンって夏になるとフェスをやるじゃないですか。いろいろなアーティストがステージに出て、今年も会えたね、来年もまた会おうぜ、みたいな感じで夏フェスを楽しみにしている。あれって正直、羨ましいんですよね(笑)。アートにもフェスが欲しい。作品を飾るだけではなく、自主的に人が集まり、繋がりが生まれる場所。それが「六本木アートナイト」です。