森美術館では、11月9日(日)まで「藤本壮介の建築:原初・未来・森」を開催しています。建築家・藤本壮介氏の初となる大規模個展で、約30年にわたって展開してきた主要プロジェクトを8セクションに分けて紹介します。
開催に先立って開催されたプレスプレビューには、藤本氏のほか、コラボレーターとして本展に参加している幅允孝氏、倉方俊輔氏、宮田裕章氏らが登壇しました。
藤本氏は「故郷である北海道の森からインスピレーションを得て、"森"こそが多様性を受け入れる、未来を象徴する概念になりうるのではと考えました。本展のセクションには森そのものをイメージしたものがありますし、建築界における概念的な森など、建築環境そのものを体感してもらえる場になっています」と、タイトルにもある"森"の重要性について明かしました。
「思考の森」は300平方メートルを超える展示室に、活動初期から現在計画中のものまで100超のプロジェクトが集結した大型インスタレーションです。手前から時系列順になっており、奥に進むほど現在に近づいてきます。
東京の景色が一望できる大きな窓がある展示室に出現した、ブックラウンジ「あわいの図書室」。幅氏が藤本建築から着想を得て選んだ40冊の書籍が、5つのテーマ「森 自然と都市」「混沌と秩序」「大地の記憶」「重なり合う声」「未完の風景」に基づいて配置されます。
「ゆらめきの森」では、建築模型に人の動きを表現したアニメーションを投影しています。《UNIQLO PARK 横浜ベイサイド店》では、滑り台やボルダリングなどで子どもたちが遊びまわる様子が見られます。
本展では、2025年大阪・関西万博《大屋根リング》が各所で紹介されていますが、中でも「開かれた円環」にある5分の1スケールの部分模型は圧巻です! 高さ4メートル超の大きさで再現されており、中を通ることもできます。
内部にある人物模型は、実際に万博に訪れた人の動きを再現しているそうです。中をのぞくと、巨人になった気分が味わえます。
「ぬいぐるみたちの森のざわめき」では、藤本氏の建築9つがぬいぐるみとなってユーモラスな会話を繰り広げます。このかわいらしいぬいぐるみは藤本事務所のスタッフお手製というから驚きです。それぞれの建築の特徴をわかりやすく説明してくれるので、子どもも楽しめます。
2031年施工予定の音楽ホール兼震災メモリアル《仙台市(仮称)国際センター駅北地区複合施設》。15分の1の大型吊模型と資料が、「たくさんの ひとつの 森」に展示されています。模型の内側に立つと、ステージからの目線で客席を見られるのが面白いです。
最後の「未来の森 原初の森--共鳴都市 2025」は、藤本氏と宮田氏が考案した未来都市が模型と映像によって表現されています。900もの球体が集まって形成された未来都市は、SFの世界観そのもの。藤本氏いわく、これは未来予想ではなく、あくまでも問いかけなのだとか。
回顧展でありつつも、これから先の100年の建築がどうなっていくのか、想像が膨らむ展覧会となっていました。没入感のある展示が多いので、建築にあまり詳しくない人も存分に楽しめる構成になっています。
編集部 齊藤
「藤本壮介の建築:原初・未来・森」
会期:2025年7月2日(水)~11月9日(日)※会期中無休
開館時間:10:00~22:00
※火曜日のみ17:00まで
※ただし、8月27日(水)は17:00まで、9月23日(火)は22:00まで
※最終入館は閉館時間の30分前まで
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
主催:森美術館
助成:文化芸術活動基盤強化基金(クリエイター等育成・文化施設高付加価値化支援事業)、独立行政法人日本芸術文化振興会、公益財団法人石川文化振興財団
協賛:株式会社大林組、株式会社ジンズホールディングス、鹿島建設株式会社、株式会社きんでん、NOT A HOTEL株式会社、SANEI株式会社、清水建設株式会社、住友林業株式会社、ルイナール、株式会社竹中工務店、トヨタ自動車株式会社、サンユー建設株式会社、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社、アラップ、フジテック株式会社、前田建設工業株式会社、三機工業株式会社
企画:近藤健一(森美術館シニア・キュレーター)、椿 玲子(森美術館キュレーター)
コラボレーター:幅允孝(ブックディレクター、有限会社バッハ代表)、倉方俊輔(建築史家、大阪公立大学教授)、宮田裕章(データサイエンティスト、慶應義塾大学教授)
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.mori.art.museum/jp/index.html