国立新美術館では5月26日(日)まで「DESIGN MUSEUM JAPAN展 2024~集めてつなごう 日本のデザイン~」を開催しています。
本展は、2020年1月から制作・放送されたNHKの番組「デザインミュージアムをデザインする」(Eテレ)に基づく取り組みで、2021年からは「デザインミュージアムジャパン」という特集番組で、クリエーターたちと共に〈デザインの宝物〉を探してきました。今回は竹谷隆之氏、小池一子氏、名久井直子氏、片岡真実氏、永山祐子氏、永積崇氏、総勢6名によるデザインの宝物を展示しています。
漁師の家に生まれ育った造形作家の竹谷氏は、故郷の北海道で「漁師の化粧板」をリサーチ。ニシン漁の漁船には、船大工による彫刻絵模様〈化粧板〉が施されています。船大工によってデザインに特色があり、見る人が見れば誰が作った船か一目でわかるそうです。
クリエイティブディレクターの小池氏は、秋田県羽後町で毎年行われる西馬音内盆踊りの衣装を取り上げています。その起源は1280年代まで遡るという説があるほど歴史ある衣装で、祖先から受け継がれた古い絹布を組み合わせて縫う「端縫い」や藍染めなどの伝統的な技術が用いられています。
ブックデザイナーの名久井氏がリサーチしたのは、山形県の古代布「しな織」と、独自の糸作りを追求し生み出された「超極細モヘア糸」。開催に先立って行われた企画説明会で名久井氏は「自分の仕事とは直接的な関係はないが、今あるものをどうやってよりよくしていくか考えるヒントをいただいた」と、貴重な経験になったことを語りました。
キュレーターで森美術館館長の片岡氏は、産業陶器の産地として知られる愛知県常滑市で「すだれレンガ」と「電らん管ハウス」に注目。焼きものは、その特性上リサイクルが容易というエコロジカルな面もあり、まさに現代に即したマテリアルといえます。
なお、森美術館では常滑市と関連が深いアーティストであるシアスター・ゲイツによる個展「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」が開催中。こちらもあわせてチェックを。
建築家の永山氏は、滋賀県大津市坂本にて石工職人集団 穴太衆(あのうしゅう)が築く野面積みに着目します。野面積みは、自然の石をほとんど加工せずに積み上げていく技術で、自身が多い日本に合った工法だそうです。現物の展示は難しいため、レプリカが展示されています。
音楽家の永積氏は、愛媛県内子町で建物の軒下に残る「こて絵」を調査。こて絵とは、左官職人が鏝(こて)を使い、漆喰で立体的に描いた浮彫のことで、施主へのお礼として施したといいます。
漆喰は石灰・つなぎの麻などの繊維・糊・油などを混ぜて練った粘土状の素材で、日本特有の建築材料です。漆喰を盛り付ける道具は職人によってさまざまだそうで、中にはスプーンや竹串などを使うこともあるとか。
会場奥では「デザインミュージアムジャパンカード」が並びます。気になるカードを選んでリングで留めれば、カタログが完成。今後も、同じフォーマットでの作成を予定しているそうです。
なお、イギリス・ロンドンにあるJAPAN HOUSE LONDONでは、展覧会「Design Discoveries: Towards a DESIGN MUSEUM JAPAN」を開催。2024年9月8日(日)までと会期が長めなので、この夏にロンドンへ行く予定のある方は立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
編集部 齊藤
「DESIGN MUSEUM JAPAN展 2024~集めてつなごう 日本のデザイン~」
会期:2024年5月16日(木)~5月26日(日)
開館時間:10:00~18:00(金曜日は20:00まで)
※入場は閉館の30分前まで
会場:国立新美術館 展示室3B
観覧料:無料
主催:NHKプロモーション、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁
共催:NHKエデュケーショナル
協力:一般社団法人 Design-DESIGN MUSEUM
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://design-museum-japan.jp/