六本木のギャラリーSCAI PIRAMIDEでは、5月25日(土)までニナ・カネル氏と和田礼治郎氏の二人展「42 Days」を開催しています。
スウェーデン出身のカネル氏と、広島出身の和田氏は、どちらもドイツ・ベルリンを拠点として活動する彫刻家です。また、両者ともそれぞれ独自の芸術言語を用いて、循環する物質と環境の移り変わりを探求しています。展覧会タイトルの「42 Days」は、会期日数を表しています。
この展覧会では二人の近作の彫刻が中心に展示されています。和田氏の《STILL LIFE》は、斜めに配置された三枚のガラス板の間に果物が投げ込まれています。
果物は時の経過とともに朽ちていき、時折落下していきます。床に落ちているのは生の果実からダイレクトキャストしたブロンズ製の果実だそうです。
壁面にあるのは和田氏の《ABSINTHE MIRROR》です。アブサンとはかつてヨーロッパで多くの中毒者を生んだことから退廃や陶酔を彷彿とさせる蒸留酒のこと。《ABSINTHE MIRROR》をのぞき込むと、鏡の間に入ったアブサンを通して自身と対面することになります。
カネル氏の《Days of Inertia》は日本で制作された彫刻作品で、伊達冠石の石板の上に水を張っています。自然光を反射してきらめいたり、振動によって水面が揺らいだりと、環境の変化によって異なる表情を見せます。角度によっては、六本木ヒルズが映り込む姿も見られます。
奥へ進むと、和田氏の4連作《EXOSPHERE》とカネル氏の《Elsewhen》を見ることができます。
《EXOSPHERE》では磨かれたチタンの裏側から熱を加えることで、表面の干渉色と反射の歪みが生み出されています。見る位置によって無限の表情を見せるさまは、まさに銀河のようです。
モーター音を響かせる 《Elsewhen》というタイトルの作品は、予想外の言葉で、空間と時間を纏める表現です。
回転するコンベアーの上 を、小石が不規則に転がっていきます。予想外の動きは、見ていて飽きません。
二人の芸術表現は、1960年代から70年代のミニマル・アートやコンセプチュアル・アートに通じるものがあります。時の流れやエコロジー、さらには生命の構造について考えさせられる展覧会となっています。
なお、国立新美術館では「NACT View 04 和田礼治郎:FORBIDDEN FRUIT」を6月10日(月)まで開催中。本展と合わせて足を運んでみてはいかがでしょうか。
また、六本木未来会議ではカネル氏が参加した森美術館「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」のレポートも公開中です。
編集部 齊藤
ニナ・カネル/和田礼治郎「42 Days」
会期:2024年2月15日(木)~5月25日(土)
時間:12:00~18:00
定休日:日曜日・月曜日・火曜日・水曜日・祝日
場所:SCAI PIRAMIDE(東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル 3F)
展覧会ウェブサイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.scaithebathhouse.com/ja/exhibitions/2024/02/content/