サントリー美術館で6月16日(日)まで「サントリー美術館コレクション展 名品ときたま迷品」が開催中です。
国宝や重要文化財のように誰もが認める「名品」と、これまでなかなか日の目を浴びることのなかった「迷品」。本展は、その両方を区別なく展示しています。一見、迷品と見えるものも、魅力を知ることで名品と感じることもあるでしょう。そんなメイヒンが一挙に揃う貴重な機会となっています。
展示品のいくつかには「学芸員のささやき」という特別解説がついています。ちょっとマニアックな裏話を知ると、作品のイメージががらりと変わるかもしれません。
まず「第1章 漆工 生活を美で彩る」では、蒔絵や朱漆塗、螺鈿など様々な技術が施された漆工の作品の数々が展示されています。
黄金に輝く《浮線綾螺鈿蒔絵手箱》は国宝。鎌倉時代の手箱というと、神宝をはじめとする名品が数多くありますが、その中でも代表的な作品として挙げられる品です。
絵巻や絵画、屛風が並ぶ「第2章 絵画 おおらかな心で愛でる」で特に目を引いたのは、重要文化財でもある《泰西王侯騎馬図屛風》。
ペルシア王、エチオピア王、フランス王アンリ四世、イギリス王(※イギリス王については諸説あり)を描いた四曲一双の屛風です。西洋画的な表現もありつつ、金箔や顔料などは日本由来のものが使われており、まさに和洋折衷な一品です。
続く「第3章 陶磁 人類最良の友と暮らせば」では、縄文時代から人間の生活とともにあったやきものの数々を見ることができます。美濃焼や鍋島、有田、京焼など、伝統的なやきものが並ぶさまは壮観です。
桜と楓、異なる季節の風物詩が一皿に描かれた《色絵桜楓文透鉢》は、透かしの加工が作品に立体感を演出しています。
染織物や装身具が展示される「第4章 染織と装身具 装わずにはいられない」。4階から3階に向かう際の吹き抜けスペースでは、展示されている染織物と同じ模様の垂れ幕が出迎えてくれます。
「火事と喧嘩は江戸の華」と言われた江戸時代、町火消の「よ組」が着用していたとみられる羽織《平四目紋革羽織(一番組よ組)》ですが、サントリー美術館では40年ぶりの展示ということで、必見の一品であるといえます。
細工品の飾りが付いた簪「変り簪」も複数展示されています。《鼈甲台象牙彫犬張子飾り風車形変り簪》は犬と風車の細工が付いた一品。風車は本物と同じく、風を受けて回る遊び心溢れる仕掛けが施されています。
「第5章 茶の湯の美 曇りなき眼で見定める」では、茶会で使われた道具の数々を見ることができます。
「第6章 ガラス 不透明さをも愛する」では、江戸時代の日本や近世ヨーロッパなど、世界各国の個性的な品々を取り上げています。
「フランス・アール・ヌーヴォー期の名工」と呼ばれるエミール・ガレの作品は全部で5件展示されています。《花器「カトレア」》もそのひとつです。
ペリカンはキリスト教において自愛や献身を象徴するモチーフ、そしてドラゴンは不遜や悪を象徴するモチーフとされます。欧米的な印象も受けますが、ペリカンとドラゴンは葛飾北斎の作品から転用されているとか。
ここでは、2023年に開催された「吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」でも展示された《藍色ちろり》が再登場。このほか、美しいガラス作品が目を楽しませてくれました。
それぞれの時代の人々に愛され、現代へと引き継がれてきた品々を見ることができる本展。作品とその歴史に触れることで、あなただけの「メイヒン」と出会えるかもしれません。
編集部 山下
「サントリー美術館コレクション展 名品ときたま迷品」
会期:2024年4月17日(水)~6月16日(日)
※作品保護のため、会期中展示替を行います
休館日:火曜日
6月11日(火)は18時まで開館
開館時間:10:00~18:00
※金曜日および4月27日(土)、28日(日)、5月2日(木)~5日(日・祝)、6月15日(土)は20時まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
主催:サントリー美術館、朝日新聞社
協賛:三井不動産、三井住友海上火災保険、サントリーホールディングス
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2024_2/