サントリー美術館では6月25日(日)まで、「吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」が開催されています。
ドロドロに熔けた熱いガラスに息を吹き込み、風船のように膨らませて器を作る技法を「吹きガラス」といいます。その歴史は長く、紀元前1世紀までさかのぼります。本展では、吹きガラスを生み出す作り手の「技」にフォーカスし、240点の作品が展示されています。
まず第一章と第二章で、古代ローマとヨーロッパの吹きガラスを紹介。特にローマ時代では、石や金属の器が喜ばれたため、吹きガラスもそれを模した器が多かったそうです。やがて、重力や遠心力を活かした曲線美と、飴細工のような装飾が見られるようになります。
中でも「二連瓶」や「四連瓶」と呼ばれる、試験管がくっついているような独特な形をした作品群に目を惹かれます。ここでは、世界に3つしかないと言われている「三連瓶」も見られます。これらがどうやって作られたのか、現代のガラス作家による試作品も並んで展示されています。
15~17世紀頃になると、熱いガラスを成形・加工する「ホットワーク」の技術はイタリア・ヴェネチアにおいて一つの頂点に達します。特に《船形水差》の美しさには視線を奪われることでしょう。複雑かつ繊細な装飾は、職人による技術の結晶といえるかもしれません。なお、会場には世界で最も古いガラスの製造法をまとめた書物なども展示されています。
第三章では東アジアの作品が並びます。ヨーロッパと比べると、小さく薄く、シンプルなデザインが目立ちます。中でも《藍色ちろり》の美しさは別格でしょう。
これまでどのように作られてきたのか不明だったそうで、本展を機に技法研究が行われました。その様子は、入場してすぐのスクリーンに映し出されています。6階ホールでも記録映像を上映しているので、あわせて足を運びたいものです(※イベント開催日は上映を行いません)。
第四章では近代日本の吹きガラスが集められています。西洋スタイルの製法が伝播したこことで、大きく厚く、多彩な装飾が見られるようになります。たくさん並ぶ、レトロで可愛らしい氷コップの中から、ぜひお気に入りを見つけてみてください。
最後となる第五章では、現代アートとしての吹きガラス5点が展示されています。中には「これもガラスでできているの?」と驚くような作品も。ガラスケースはなく、肉眼でしっかりと観察することができますよ。
サントリー美術館が所蔵する古今東西のガラスの名品が並ぶ展覧会は、2013年の「Drinking Glass」以来10年ぶりです。この貴重な機会をぜひお見逃しなく。
編集部 齊藤
サントリー美術館「吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」
会期:2023年4月22日(土)~6月25日(日)
※作品保護のため、会期中展示替を行います。
会場:サントリー美術館(東京・六本木)
開館時間:10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)
※いずれも入館は閉館の30分前まで
休館日:毎週火曜日
6月20日は18時まで開館
主催:サントリー美術館、読売新聞社
協賛:三井不動産、三井住友海上火災保険、サントリーホールディングス
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2023_2/index.html