森美術館では、2023年3月26日(日)まで「六本木クロッシング2022展:往来オーライ!」が開催されています。
森美術館が共同キュレーション形式で開催する「六本木クロッシング」。2004年以来、日本の現代アートシーンを総覧する定点観測的な企画として3年に一度開催されてきた本展は、今年で7回目の開催となります。今回は、"コロナ禍により途絶えてしまった人々の往来を再び取り戻したい"という思いを込めて、「往来オーライ!」というサブタイトルがつけられています。
会場に入ると、O JUNによる絵画と、青木千絵による彫刻作品が展示される空間が広がります。
一見、無造作に展示されているようにも思えるO JUNの作品ですが、これらは本展のトピックのひとつでもある「さまざまな隣人と共に生きる」を念頭に置いて集められたものだそう。風景を描いているようでいて、実はとある事件をモチーフにしているなど、それぞれの背景には人間の営みが隠されています。
人間と抽象的なフォルムが一体化したような青木氏による作品からは、強い生命力が感じられます。
強烈なインパクトを放っていたのは、市原えつこによる《未来SUSHI》。回転寿司のように回っているのは、作家が考えた2030年から2110年ぐらいまでの寿司。大将を務めるペッパーくんが、自身のエピソードを交えながらメニューの説明をしてくれます。
続いては、やんツーによる展示。物流業界の倉庫で使われている自動搬送ロボットが、仏像や椅子などのオブジェを展示しては元の棚に戻すということを淡々と繰り返すインスタレーションです。コロナ禍によって自動化が加速した物流業界と、変わらず手作業での作品展示を続けている美術業界。その対比と問いかけがなされています。
SIDE CORE / EVERYDAY HOLIDAY SQUADが手掛ける都市の風景をイメージした造形は、一つひとつよく見ると、道路での夜間工事などで使用される照明器具やカラーコーンによって構成されています。 こちらは、AKI INOMATAによる《彫刻のつくりかた》の一部。一番小さなものがオリジナルで、ひとつは人間の彫刻家が、もうひとつは自動切削機を用いて制作したものです。
実は、この小さなオリジナルの彫刻はビーバーがかじった木の残骸。一般的に彫刻とは人間が作るものとされていますが、ビーバーや機械でも彫刻家になりえるのかもしれません。
本展と並行して、小プログラム「MAMコレクション016:自然を瞑想する―久門剛史、ポーポー、梅津庸一」、「MAMスクリーン017:ナンシー・ホルト、ロバート・スミッソン」、「MAMプロジェクト030×MAMデジタル:山内祥太」も同時開催中です。
リアルタイムに変化していくオンラインゲーム型の映像インスタレーション《カオの惑星》は、会場内に設置されたタブレット端末での操作が反映されるだけでなく、PCやスマートフォンを使ってWeb上でどこからでもアクセスが可能。本展に足を運ぶのが難しいという方でも参加できます。
既に日本を飛び出して世界で活躍しているアーティストから新進気鋭の若手までが一堂に会するこの機会。日本アート界の"今"を、ぜひその目で確かめてください。
編集部 尾原
「六本木クロッシング2022展:往来オーライ!」
会期:2022年12月1日(木)~2023年3月26日(日)
※会期中無休
開館時間:10:00~22:00(最終入館 21:30)
※火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30)
※ただし3月21日(火・祝)は22:00まで(最終入館 21:30)
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
主催:森美術館
企画:天野太郎(東京オペラシティアートギャラリー チーフ・キュレーター)、レーナ・フリッチュ(オックスフォード大学アシュモレアン美術博物館 近現代美術キュレーター)、橋本 梓(国立国際美術館主任研究員)、近藤健一(森美術館シニア・キュレーター)
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.mori.art.museum/jp