11月1日(火)に2022年度の「グッドデザイン賞」大賞が発表されました。応募総数5,715件、ゲーム機器やカメラなどといった電化製品から、選挙啓発キャンペーンサイト、パ-キングエリアや公園などに至るまで、さまざまなデザインの中から選ばれたのは、地域で子どもたちの成長を支える活動「まほうのだがしやチロル堂」でした。
「チロル堂」は2021年10月、奈良県・生駒市に駄菓子屋としてオープン。18歳以下の子どもたちは入口で1回100円のガチャガチャをまわして入店します。カプセルには専用通貨「チロル札」が1~3枚入っており、駄菓子やカレー(通常500円)などを食べることができます。これは大人たちが店内で買い物や飲食をすることによる収益や、全国からのサブスクリプション形式の寄付によって成り立っており、孤独や貧困に悩む子どもたちを地域全体で支える仕組みとなっています。
審査委員長である安次富隆氏は、「チロル堂」のデザインにおける画期的なポイントを次のように説明しました。
「支援というものは、助ける側と助けられる側というのが明確に二分されています。そして、お互いがそれを意識しているんですね。「チロル堂」のマジックは、良いことをしている/されているという気持ちを完全になくしたところにあります。これはひとつのデザインの発明なのだと思います」
また、審査副委員長である齋藤精一氏は、「チロル堂」が総得票数6,989票と、2位(2,895票/ハンズフリーパーソナルモビリティUNI-ONE)以下に大きな差をつけたことに触れつつ、「デザインの領域でまたひとつの境界線が変わった」と話しました。
「チロル堂」の方々が楽しく活動しているのを目の当たりにして、「Web3やブロックチェーン、NFTなど、テックで何とかしようと思っている試みを、地元の愛と熱意だけで上手くやれている事例なんじゃないか」と考えさせられたといいます。
受賞発表の場に「チロル堂」を代表して登壇したのはアトリエ e.f.t 代表の吉田田タカシ氏。店のオペレーションについては、なるべく"デザインされている"という印象を取り除くことを意識したそうです。
というのも、「チロル堂」の一番の目的は、自然にみんなが集まってくるような"たまり場"となること。実際、店内にあるスペースではワークショップや本の読み聞かせの会などが開かれ、地域の人々が自由に利用して楽しんでいるそうです。
2022年7月には、この取り組みに賛同した人たちによって金沢に「チロル堂」2号店がオープン。今後の広がりについて吉田田氏は、「"楽しい"ということはお金を払わなくても手に入る、ということを感じ取れると、みんなが豊かになっていくと思いますし、それが全国に広がると嬉しいですね」と希望を語っていました。
「チロル堂」が誕生した背景には、コロナ禍で運営ができなくなった子ども食堂をどうやって存続させるかという課題があったそうです。厳しい逆境を経て、こうした素晴らしい取り組みがなされ、それが高く評価されたということは、とても前向きなこと。今年の「グッドデザイン賞大賞発表会」は、そんな希望に溢れる場となりました。
編集部 尾原
「GOOD DESIGN AWARD 2022」
会場:東京ミッドタウン・デザインハブ(東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー5階)
会期:2022年10月7日(金)~11月6日(日)
主催:公益財団法人日本デザイン振興会
後援:経済産業省、中小企業庁、東京都、日本商工会議所、日本貿易振興機構(JETRO) 、国際機関日本アセアンセンター、日本経済新聞社、NHK、World Design Organization
公式サイトで詳細を見る(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://promo.g-mark.org/