国立新美術館では11月7日(月)まで、「国立新美術館開館15周年記念 李禹煥」が開催されています。本展は、「もの派」の代表的な美術家・李氏の、東京では初めてとなる大規模な回顧展です。
李氏は、「もの派」を牽引した作家として広く知られています。もの派は、戦後日本美術におけるもっとも重要な動向の一つで、国際的にも大きな注目を集めてきました。
石や木、土などの自然素材と、鉄板やガラス、ゴム、セメントなどの人工的な素材をほぼ未加工のまま提示することで、"もの"との関係性を探るもの派。本展でも、自然と人工物の対比が表現された作品が多く展示されています。
《関係項》の特徴は、自然と人工物などの二項対立構造。対照的な構造のはざまからどのような気づきを得るのかは、見る者にゆだねられます。
《関係項―棲処(B)》では、床一面に薄い石が敷き詰められています。歩くと会場に音が響き渡り、いやが応でも自身の存在を感じさせられます。
《関係項―彼と彼女》は、向き合った石に対応するかのように、鉄板が歪んでいるのが特徴的。隣の《関係項―不協和音》では、石と関わることにより、ステンレス棒が自らの重さで湾曲しています。
玉砂利で埋め尽くされた床に、二つの石と鏡のようなステンレス板が置かれている作品は《関係項―鏡の道》。板の上を歩くと、自分の姿が映し出されます。
野外に展示されている《関係項―アーチ》は今回の新作。2014年にヴェルサイユ宮殿で発表されたアーチ作品のヴァリエーションとして再制作されました。インスピレーション源は、30年以上前に見た虹だとか。
門やアーチをくぐると、不思議と非日常的な体験を連想するものです。日本でいうと、鳥居のような神秘的な存在が思い浮かびますね。
後半は、絵画作品を中心に展開されています。《点より》では、地塗りされたキャンバスに規則正しく点が打たれています。たっぷりと絵の具を付けた筆で打たれた点は、次第に薄らいで消えていきます。
〈点より〉の次は、〈線より〉に。そして、〈風より〉〈風と共に〉を経て、〈照応〉のシリーズに変遷します。近作の《対話》や《応答》では、キャンバスの余白が目立つように。この空白のバランスと、美しいグラデーションがまた絶妙です。
本展では、無料で音声ガイドを利用できます。俳優の中谷美紀氏による鑑賞ポイントのほか、李氏本人や本展担当キュレーターによる解説などが繰り広げられます。李氏と中谷氏の対話にも注目です。手持ちのスマートフォンを使用しますので、来場の際はイヤホンをお忘れなきようご注意ください。
また展覧会ホームページでは、李氏による《対話―ウォールペインティング》や《関係項》などの制作風景を収めたメイキング映像を公開中 。本展の開催に際したインタビュー映像もありますので、予習・復習の一環として、併せて楽しんでみてはいかがでしょうか。
編集部 齊藤
6月8日(水)に行われた記者発表会の様子はこちら
【取材レポート】国立新美術館「国立新美術館開館15周年記念 李禹煥」記者発表会
国立新美術館「国立新美術館開館15周年記念 李禹煥」
会期:8月10日(水)~11月7日(月)
※毎週火曜日休館
会場:国立新美術館 企画展示室1E
〒106-8558東京都港区六本木7-22-2
時間:10:00~18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
入場料:一般1,700円、大学生1,200円、高校生800円
※中学生以下は入場無料
※障害者手帳をご持参の方(付添の方1名を含む)は入場無料
主催:国立新美術館、朝日新聞社、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁
協力:SCAI THE BATHHOUSE
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://leeufan.exhibit.jp/