現在、ANB Tokyoでは11名の作家が4つのフロアで作品を展開する「Encounters in Parallel」が開催中です。1年前の2020年10月に六本木にオープンしたANB Tokyo。こけら落とし企画展として去年は「ENCOUNTERS」が開催されましたが、本展はそれをアップデートした展覧会となっています。
前回に引き続きのテーマ、表現と表現の「Encounter(遭遇)」に加え、それぞれの創作に対して異なるフィードバックが「Parallel(平行)」に生じることを指すタイトルとなった本展。従来のグループ展は、キュレーターがアーティストそれぞれの持ち場を"区分け"し、ストーリーや流れを構成していきますが、本展ではキュレーターがファシリテーターとなり、アーティスト同士が同じ空間を共有しながら互いの作品が共鳴する形を模索し進行する形をとっています。
例えば、異なる表現方法で活躍する長田奈緒、西村有未、山本華、横手太紀の4名が参加している7F会場では、横手氏が《When the cat's away, the mice will play》で使用している砂に共鳴する形で、その奥に砂ぼこりで汚れた車の写真《湖畔》が配置されています。このように本展では作家や作品ごとではなく、フロア丸ごとでアートを感じることができます。
「データと写真」「デジタルとリアル」など、人が無意識に境目を解釈し、選り分けていることに対して疑問を投げかける作品が並ぶのは小山泰介、藤倉麻子、吉野ももによる6F。いずれも、異なる方法論を用いながら、我々の無意識の認識を揺さぶり、そして再構築していきます。このフロアでは床にもある仕組みが施されており、その答えを探るのも楽しみ方の1つです。
これまでのフロアとは打って変わり、暗闇の中で光が静かにまたたく4Fでは、展示室に水を張ることで、現実と対になる鏡面世界を出現させていました。廃材を用いて、光と物質が織りなす没入空間を作り出すことを得意とする小金沢健人、冨安由真。二人の作家によって、普段目には映らない「何か」への意識を増幅させられていきます。
大岩雄典、砂山太一によるインスタレーション《悪寒|Chill》が1点のみ置かれた3F。様々なレトリックが組み込まれた言葉がスクリーン上に並びますが、実はこの背景は来場者がいる3Fのミニチュアを写したもの。我々が見ているはずのこの空間も、さらに誰かに見られている空間なのでは?と考えさせられるようで、世界を襲う冷え冷えとした予感=悪寒を、空間に見事に上演していました。
参加作家は全員で11名。それぞれがそれぞれの作品と遭遇し、さらにその遭遇をフロアごとに来場者が目撃する、一つのビルに複数の階層を持つANB Tokyoならではの「Encounters in Parallel」を体感することのできる展覧会でした。
12月21日(火)には音楽、美術、舞台芸術など境界を超えて活躍する山川冬樹をディレクションの軸に、昨年から参加しているアーティストの小金沢健人、音楽プロデューサーのKenji "Noiz" Nakamura、キュレーターの山峰潤也が意見を交えながら、多彩なゲストと共にビルの垂直構造を生かしたパフォーマンスを作り上げるライブ配信イベントも実施されます。詳細は公式サイトにてご確認ください。
編集部 高橋
Encounters in Parallel
会場:ANB Tokyo
会期:2021年11月27日(土)~12月26日(日)
オンライン事前予約制:https://reserva.be/anbtokyo
休館日:月曜日、火曜日
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://taa-fdn.org/events/1310/