東京ミッドタウン・デザインハブでは第86回企画展「日本のグラフィックデザイン2020」が開催中です。本展は会員約3,000名を擁するアジア最大級のデザイン団体、日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)が、1981年より発行を続ける年鑑『Graphic Design in Japan』の2020年版の発行を記念して開催している展覧会。会場では、掲載作品の中から約300点が実物とモニタで展示されています。
全JAGDA会員の互選により選ばれた選考委員には浅葉克己さん、植原亮輔さん、渡邉良重さん、えぐちりかさん など六本木未来会議でもインタビューやプロジェクトに参加しているクリエイターたちが名を連ねています。
今回、全出品作品の中から最も優れたグラフィックデザインに与えられる「第22回亀倉雄策賞」を受賞したのは、菊池敦己さんによるブックデザイン「野蛮と洗練 加守田章二の陶芸」。
20世紀後半に活躍した現代陶芸化の人生の変遷をおさめた図録が、選考委員から「一分の隙もない仕上がり」「加守田章二という人物がそのまま伝わってくる」と高く評価されました。
こちらは「興福寺中金堂落慶法要散華 まわり花」(作・三澤遥)の映像のワンカット。興福寺中金堂落慶法要のための散華として散布されたものです。散華とは、諸仏を供養する法要で、寺院の屋根から花を撒くこと。元々は蓮の花を撒いており、現代でも蓮の花びらをかたどった色紙がよく用いられています。
この「まわり花」は、回転から生まれる残像によって空中に一輪の花を咲かせます。平面の紙で行われていた散華が立体的になることで、より印象的なものになりました。本デザインは各カテゴリの高得票作品の中から、「特に優れたグラフィックデザイン」作品に授与される「JAGDA賞2020」を受賞しました。
同じく「JAGDA賞」を受賞したのはクリエイターインタビューにも登場した永井一史さんによる寝具メーカー「西川」ロゴ。昭和初期以降、袂を分かっていた3社の統合で新しく生まれました。歴史的に使用している丸い判のような造形を引き継ぎながらも、文字を直線的にすることで、伸びやかに未来に向かって進んでいく様子を表現。また、アルファベットを使用することで、世界中の人の健やかな眠りに貢献したいというグローバルな目線が感じられます。
こちらは、佐藤卓さんが企画した「風景の科学展」の展覧会写真集。この展覧会は、写真家・上田義彦さんが撮影した写真を、国立科学博物館の研究者が解説し、対象物とともに展示したものです。芸術と科学という、一見遠そうに見える二つを見事に融合させ、写真を入り口に科学の世界へと誘うデザインで、思わず目を奪われてしまいました。
本レポートで紹介したほかにも、数えきれないほどのグラフィックデザインが展示されていました。中には生活に馴染んだ商品パッケージもあり、改めて身近なデザインの素晴らしさを感じるいい機会になるかもしれません。
年鑑『Graphic Design In Japan 2020』には、厳正な選考を通過した約600作品(1,500図版)を掲載。2020年7月下旬発売予定です。一冊、お手元にいかがでしょうか?
編集部 峰崎
東京ミッドタウン・デザインハブ第86回企画展
日本のグラフィックデザイン2020
会場:東京ミッドタウン・デザインハブ
会期:2018年7月10日(金)~8月31日(月)
開館時間:11:00~19:00
※状況に応じ、会期・開場時間を変更する場合があります。
休館日:会期中無休
観覧料:無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://designhub.jp/exhibitions/6072/