六本木で働く・住む人に、街についてのインタビューをし、リレーでつなげる当企画。今回は、造園の設計、施工、管理から室内の観葉植物のコーディネートまで、植物に関する様々なサービスを提供している「トムス・ガーデン」オーナーの高山恒久さんです。1981年のAXISビルオープン以来、同ビルにショップを構え続けてきた高山さん。仕事のオン・オフはなく、常に同じテンションで日々を過ごしているという高山さんですが、その原動力になるものとは?
Q 01
六本木といえば_________。(一言で表すと?)
A
強いて言うなら「混沌としている街」ですかね。
ご縁があって約40年間このAXISビルでお店を開き、近所に住んだこともありますが、積極的に行きたい場所ではないかなあ(笑)。僕は六本木というよりも、このAXISビルが好きなんです。現在このビルは、ブリヂストンタイヤ創業者・石橋正二郎氏の3代目にある石橋寛氏が取締役会長を務めていますが、彼は一つの確固たる理念を持って運営しているので、40年前のビルとは思えないくらい、いつも新鮮なんです。
僕は幼少期を吉祥寺で過ごしたのですが、今でも中心から少しはずれたところで、個人がちょっと背伸びをしてやりたいことをやっています。ところが中心部は、ユニクロやドン・キホーテなどが数年前から乱立しはじめ、生活している人の便利さは増したけれど、魅力の「み」の字もない。僕のものの考え方で言えば、魅力とは発信している人の顔が見えることなんです。物事の面白さは個人の感性というか、「やりたいことをやりたい」という思いから生まれてくるものだと考えますね。
Q 02
あなたがオススメする、六本木のベスト3は?(飲食店を含む、あらゆるお店でOK)
A
1位 AXISビル
ひいきするわけではないですが、やはりこのビルですね。これだけ一つの筋を守ろうとしているところは少ないです。
2位 国際文化会館
前川國男氏、坂倉準三氏、吉村順三氏による設計ですが、空間としてとても完成度が高いです。春になると桜もとても綺麗ですね。
3位 ホテルオークラ東京
今はあまり行かないですが、空気的に好きでしたね。
Q 03
六本木にある、お気に入りの景色は?
A
国際文化会館の庭です。自分の中で決めている席からの景色や、春に見える桜の分量などスケールがヒューマンサイズでお気に入りです。僕は学生の頃から自分の好きな席やホテルの部屋などが決まっているんです。そこから見える山の緑、海の面積、夜景との距離感などには人一倍うるさいですね。僕は緑の仕事をしているので、建築と緑がどう見えるのかは、無意識のうちに考えてしまいます。
Q 04
六本木のアフター5の過ごし方は?
A
年に何回かは六本木で人と一緒にご飯を食べたりしますが、お酒も飲まないですし、目的なく人と群れたりもしないので、どこにも寄らずに家に帰ることがほとんどです。
Q 05
六本木ならではのリフレッシュ方法は?
A
僕、仕事で疲れるという経験がないんですよね。オン・オフがないんです。仕事以外の自分の好きな時間は本を読んでいるか映画を見ているか、散歩しているか、自分にとって濃い会話をしているか・・・。最近は落語に凝っていますね。
短い人生をどう生きるかについては、18歳の頃から考えています。だって1日は1440分しかありませんから。人生は短いと思うから、仕事で折り合いをつけて、自分を切り捨てて生きてきた人生ではないんです。名声や名誉、地位などに囚われず、過度なお金過度の努力もしないし無理もしない。気分良く生きることを考えて生きてきました。
Q 06
身の回りのお気に入りのデザインは?
A
全てにこだわりがあります。どれか一個、なんてものはないですね。僕ほど、ありとあらゆるものにこだわりがある人はいないと思います。自分で買ったものは、全てお気に入りですし、きっとどんなに貧乏しても、お気に入りのものしか買わないですね。
Q 07
六本木をもっと良い街にするには?
A
個人で決めることではないと思います。年齢層も違うし、人種も違う、前回のインタビューで塚野さんがおっしゃっていた通り「租界」のようなこの場所で、最大公約数なんか取れっこないんです。良い状態にするということは、悪いことを直していくこと。じゃあ、その悪い部分を全部潰せば本当によくなるのか?違いますよね。
人が時代を作るし、時代が人を作る、そう意味では時代が街を作るので、なるようにしかならないですよ。強いて言えば、まずは自分の生活をより良くすることを考えてく。そうすれば、その輪は徐々に広がっていくのではないでしょうか?
Q 08
前回出演した方(塚野さん)とのつながりを教えてください。
A
共通の知り合いの紹介です。ですが、それ以前にもよくここ(AXISビル)に来ていたので顔は知っていました。性格が真反対なのですが、かれこれ約25年の付き合いですね。
no.066
高山恒久さん
60代・「トムス・ガーデン」オーナー
六本木歴 約40年