現在、21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2では、企画展「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」が開催されています。本展では、ミュージシャンの小山田圭吾(Cornelius)が展覧会のために書き下ろした新曲「AUDIO ARCHITECTURE」を、9組の作家たちがそれぞれの視点から解釈し、映像作品を制作しています。
ギャラリー1では、稲垣哲朗による「AUDIO ARCHITECTURE」のスタジオライブ映像が、空間いっぱいに映し出されています。
小山田氏は楽曲について、「今回はいくつかの"言葉"を、本展の展覧会ディレクターである中村勇吾さんにもらい、そしてその歌詞をもとに、この楽曲を作りました。これまで何度か企画でご一緒させていただきましたが、音楽でコラボレーションをしたのは今回が初めてです」と明かしました。
小山田氏の独創的な音楽を全身に浴び、ギャラリー2に足を踏み入れると、そこには約27メートにもおよぶ大きなスクリーンが。ここでは、大西景太、折笠良、梅田宏明、勅使河原一雅、UCNV、水尻自子、ユーフラテス(石川将也)+阿部舜、辻川幸一郎×バスキュール×北千住デザインら8組の映像作品が上映されています。巨大スクリーンの裏側は、8つのブースに区切られており、それぞれの作品が個々でも楽しめるようになっていました。
こちらは、大西氏による「Cocktail Party in the AUDIO ARCHITECTURE」。Cocktail Party=カクテルパーティ効果とは、パーティのような大人数が集う雑音の中でも、話し相手の声や、自分の興味のある話題がきちんと自分の耳に届いてくるという「音の選択的聴取」を指す言葉。本作では1つの音を可視化し、その効果を再現しています。
例えばベースの音などは、音楽を全体で聞いている時には、その音楽に馴染んで聞こえてきますが、本作ではベースを形で表現した"丸い物体"を目で追うことによって、ベースの音が音楽から一層際立って聞こえてくるのです。
ユーモラスで官能的な線の動きによって、観る人の触覚をくすぐったり内臓をまさぐったりするアニメーションを制作してきた水尻氏。本展では、楽曲の歌詞の中で様々な感覚が対比されている構造に着目しながら、感覚の微妙なズレを表現しています。作品内には、写真のティッシュのように同じ物体が複数個登場しますが、同じ物体でも形や動きに差異が生まれ、それぞれの動きに目が離せなくなります。
このほかにも、筋肉繊維の画像をモチーフに制作した梅田氏の「線維状にある」、構造の崩れたデジタル画像の美学を描くUCNVによる「Another Analogy」など、「AUDIO ARCHITECTURE」の様々な解釈がギャラリーを贅沢に使って展示されています。
展覧会ディレクター中村氏は本展の見方について、「それぞれの一つ一つの作品に向き合っていただくと同時に、全体の空間、つまりAUDIO ARCHITECTUREの空間、つまり音楽建築空間"を体験してもらえれば」と話しています。
1つの音楽がそれぞれの作家の手によって音、言葉、リズムなどに分解され、再構築されている本展。音楽を、音楽以外のメディアによって表現し尽くすことで生まれる空間は、中村氏の言葉通り、まさに"音楽建築空間"でした。
編集部 髙橋
information
AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
会期:2018年6月29日(金)~10月14日(日)
開館時間:10:00~19:00(入場は18:30まで)
休館日:火曜日
入観料:一般 1,100円、大学生 800円、高校生 500円、中学生以下無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://www.2121designsight.jp/program/audio_architecture/