日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)が主催する「JAGDA学生グランプリ」をご存じでしょうか? 対象は高校生以上の学生たち、いわば"デザイン甲子園"ともいうべきコンペティションです。その受賞作品を展示するのが、本日8月26日(金)からスタートしたこの展覧会。フレッシュな作品が一堂に集う、その様子をどうぞ。
「JAGDA学生グランプリ」がスタートしたのは昨年のこと。第2回となる今回は「SNS」をテーマにしたB1ポスター作品を募集しました。審査員長を務める原研哉さんら7名のクリエイターが応募作品800以上の審査を行い、グランプリと準グランプリ、優秀賞や審査員賞を決定。会場には入選以上の111点が展示されています。
見事グランプリを獲得したのは、椙元勇季さん(桑沢デザイン研究所)の作品、「こういう日常」。原研哉さんは「よく計算されてできた表現だと思う。他作品のSNSの理解や表現と比べると、工夫の度合いが頭一つ抜けている」と絶賛。ビジュアルはもちろん、コピーがとても印象的です。
今回、モチーフとしてとても多かったのが「指紋」。会場を案内してくれたJAGDAの坂田さんによれば、「学生たちにとっては、SNSはほとんどスマートフォンと同義のようですね。その解釈だけにとらわれない発想の作品が高い評価を得ました」とのこと。写真は岸田紘之さん(桑沢デザイン研究所)による、スマートフォン操作時の指の動きをビジュアライズした作品、準グランプリを受賞。
そのほか、審査員賞に選ばれた作品も。こちらは「原研哉賞」、鎌田青さん(東北工業大学)による「moral degeneration」。描かれているのは倒れている人をスマホで撮影しているシーン、社会風刺的なニュアンスが感じられます。シンプルながら他作品とは一線を画す作風が、たしかに目を引きました。
代表的なSNSをうまく擬人化し、同じく審査員賞を受賞したこちらは、金丸ひよりさん(穴吹デザイン専門学校)の作品。書かれているコピーは、右から「戸板(toita)くんは、他人に流される」「谷田部(yatabe)くんは、みんなを洗脳する」「吹田(fukida)さんは、束縛してくる」。SNSのマイナス面をユーモラスに描いています。
タイポグラフィー作品もありました。下部のアプリのアイコンから飛び出ている文字は「微熱と快楽」「無限の迷宮」。「くったくなくSNSの魅力を伝えている」とは原研哉さんの評。佐藤由貴さん(東京造形大学)による、優秀賞受賞作品です。
さまざまな作品がある中で私が気になったのは、同じく優秀賞を獲得した、中山愛菜さん(文京学院大学)のこちら。とてもシンプルに表現されたスマホの画面に、何かがびっしりと描き込まれているのですが......。
ごく一部を拡大してみると、おびただしい数の人がぎゅうぎゅうに詰まっているのがわかります。SNSの中の悲喜こもごもを直球で表現、ものすごい時間と労力をかけたであろう、学生らしさあふれる作品でした。
ほかにもまだまだ紹介したい作品はたくさん。10代〜20代前半が中心のフレッシュな学生たちの作品は、どれもほんの少し"青くささ"を感じられて、観賞後はなんだか甘酸っぱい気持ちに......(とはいえ、なんと70歳の学生の応募もあったそう!)。高校野球は終わってしまいましたが、みなさんも"デザイン甲子園"を観戦してみてはいかがでしょうか?
編集部 飯塚
information
「JAGDA学生グランプリ2016」
会場:東京ミッドタウン・デザインハブ
会期:8月26日(金)~9月11日(日)
開館時間:10:00~19:00
※会期中無休
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://designhub.jp/exhibitions/2524/