以前、ギャラリー探訪でもご紹介した「TOTOギャラリー・間」で開催中の、「フィールドオフィス・アーキテクツ展」に行ってきました。フィールドオフィス・アーキテクツとは、台湾の地方都市・宜蘭(イーラン)を拠点に活動する設計集団。現在、台湾建築界でもっとも注目を集めている設計アトリエだそうです。
会場は、「時間と仲良く」「山、水、土、海と暮らす」「基準線としてのキャノピー(天蓋)」「ただ自分の身体に意識を向け、いつしか時を忘れる」という、4つの「気づき」を軸に構成。それぞれ、模型と説明文、動画が展示されていました。
入ってすぐに目につくのは、「1st Vascular Bundle」という作品の模型。いくつかのエリアが組み合わさって、ひとつの巨大な模型になっています。というのも、これは13年のうちに5つの公共施設整備プロジェクトが少しずつ重なりながら進行したものだから。
「建築とは、人と社会、そして自然や環境とを繋ぐ対話の窓口であるべき」というフィールドオフィス・アーキテクツの考え方がよく表れています。
見たことない形の展示台も目を引きました。もともとは農業用ハウスのフレームで、手作業で曲げたものを組み合わせているそうです。フィールドオフィス・アーキテクツ設立者の黃聲遠(ホァン・シェン・ユェン)さんが、「みんなで力を合わせてつくりあげていることの象徴」として使ったのだとか。
中庭には、アート作品のような展示が。先ほどのフレームを使ったインスタレーションと、宜蘭の街の写真を写したプレートが、水の上に浮いています。こちらは雨の多い宜蘭の街を表現したもの。鉄の錆もあえてそのままにしていて、彼らがあくまで「自然」を大切にしていることが伝わってきます。
上のフロアには、こんなオブジェもありました。こちらは、最後の展示「ただ自分の身体に意識を向け、いつしか時を忘れる」で紹介されている、宜蘭県立櫻花陵園という霊園のアプローチブリッジの断面。
このオブジェのほか、動画とパネルがあるだけで、最後の展示にだけ模型がなく、「?」と思っていたのですが、その理由は最後に明らかに。
建築の知識がない私が特に興味をひかれたのは、模型。単純にミニチュアを見る楽しさもありますし、これをベースに巨大な建築物をつくったのだと思うと驚きもひとしお。どの模型もほこりにまみれていて、使い込まれている(=何度も説明するために使われている)ことがわかるのも印象的でした。
最後に、スタッフの濱口さんに見どころを聞いてみました。
「個人的にいいなと思っているのが、展示の最後に紹介している霊園のオブジェ。あれ、実際に納骨されるものと同じサイズなんです。『建築はいつかなくなるけど、自然は美しいまま残る』という想いが込められていて、模型を置いていないのはそのためだと聞きました。そういう詩的な側面も、ぜひ楽しんでみてください」
編集部 飯塚
「フィールドオフィス・アーキテクツ展 Living in Place」
会場:TOTOギャラリー・間
会期:7月10日(金)~9月12日(土)11:00~18:00
※月曜・祝日・夏期休暇 8月8日(土)~17日(月)は休館
入場料:無料
http://www.toto.co.jp/gallerma/ex150710/index.htm