六本木エリアのギャラリーを編集部スタッフの目線で紹介する「六本木ギャラリー探訪」。今回は、六本木通りを挟んで六本木ヒルズの向かいにある「CLEA R EDITION & GALLERY」を訪れました。うかがった日は会期の谷間、ふだんは見られない展示準備中の様子もどうぞ。
お話をうかがったのは、ディレクターの佐藤拓さん。展覧会のディレクションやアートフェアへの出展、さまざまなコーディネートなども行っています。ちなみに、以前「六本木と人」に登場した井上裕紀さんとはデスクを並べる同僚だそう。
この日は、荻野竜一さんの個展の撤収と、6月5日から開催されるディナ・ガディアさんの個展の準備中でした。
「ファウンダーの中牟田洋一が、ファニチャーレーベルE&Yの立ち上げなどデザイン畑で活躍してきたこともあって、硬いファインアートギャラリーというより、ジャンルを問わずに扱っているのがウチの特徴でしょうか。個展を開催していた荻野竜一さんも、多ジャンルを横断するような作品が特徴のアーティストです」
「この小畑多丘さんの彫刻もそうですね。これ実はオーナーの私物で、販売できない作品なんですが(笑)、ヒップホップカルチャーの世界観を、一本の丸田から削り出して表現した本格的な作品。明確に意識しているわけではありませんが、ジャンルレスな作家が集まっているのかもしれません」
「今、続々と届いている、ディナ・ガディアの作品も面白いですよ。彼女はフィリピン人作家で、大衆向けの雑誌や本をコラージュして新しいイメージをつくり出しています。この馬の作品も一見かわいいんですが、よく見ると目が二重になっていたりとグロテスク。そこに作家の主張が込められているんです」
「これはシンガポールのアートフェアで販売した作品で、額装が終わったばかり。送り先はイギリスだったかな? お客さんは国籍も年齢層もさまざまです。もっと多くの人がアートを購入する世の中になるといいんですけどね(笑)」
「作品ってすごく私的なものだから、たとえば同じ金額でブランドもののバッグを所有するより、ずっと楽しみが多いんですよ。作品と向き合ったり、自分とその作品の物語を語ったりする権利があるというか......。作品を購入することで、気持ちがすごく豊かになる。その感覚をぜひ味わってほしいですね」
アートを買うコツを聞いてみると、たくさんの作品を観て自分の好みを知ること、作品を部屋に置くと劇的に雰囲気が変わることなど、素人の私にもわかりやすく教えてくれた佐藤さん。最後に、恒例の「六本木をデザインとアートの街にするにはどうしたら?」という質問には、こんな答えが。
「海外でギャラリーが集まっている地域では、各店がオープン日を揃えていたりするんですよね。で、みんな呑んだくれていて(笑)。六本木でも、アートナイトのようなお祭りのときだけじゃなく、日常的に、ゆるやかにアートに関わる何かが起きている状況がつくれたらいいのではないでしょうか」
つい長居してしまい、そろそろ失礼しようかと思ったとき、グラスの絵に気づいて思わずパシャリ。これ、ufo907さんというアーティストが、落書きをするかのように、こっそり描いたものだそう。
このグラスが、アートのある豊かさを象徴しているような気がして、なんだか私のテンションもアップ。「よし、絶対にアートを買おう、いつかきっと。」と心に決めて、ギャラリーをあとにしました。
編集部 飯塚
information
「CLEAR EDITION & GALLERY」
住所:東京都港区六本木7-18-8岸田ビル2F
TEL:03-3405-8438
開廊時間: 11:00-19:00
休廊日:日曜、月曜、祝祭日
http://www.clearedition.jp