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2018年03月12日

【展覧会レポート】サントリー美術館「寛永の雅 江戸の宮廷文化と遠州・仁清・探幽」

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現在、サントリー美術館では「寛永の雅 江戸の宮廷文化と遠州・仁清・探幽」が開催中です。本展では、江戸幕府が政権を確立し、戦乱の世が終わりを告げた頃の「寛永文化」から生まれた「雅」な世界を見ることができます。

桃山文化と元禄文化にはさまれた寛永文化は、「きれい」「洗練」「瀟洒(しょうしゃ)」といった特徴を持っており、信長・秀吉の時代を背景とした「豪壮・華麗」な桃山文化や、町人文化が花開いた「狂気」の元禄文化に比べると、個性やインパクトに欠けるという見方もあります。

そのため、あまり語られることのなかった寛永文化ですが、今回の展覧会ではこれまでとは一味違う「雅」「きれい」にスポットライトが当たり、洗練されたその一つ一つの作品をじっくりと楽しむことができます。

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白釉円孔透鉢 野々村仁清 一口
江戸時代 17世紀 MIHO MUSEUM【全期間展示】

入口を入ってすぐのところには、ポスターにもなっている直径20cm弱ほどのオフホワイトの「白釉円孔透鉢」が展示されています。野々村仁清による、シンプルでありながらも多数の穴があいたユニークな形はとても現代的で、江戸時代にこのようなアイディアや技術があったことに驚いてしまいました。

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左:白釉円孔透鉢 野々村仁清 一口
江戸時代 17世紀 MIHO MUSEUM
右:桐鳳凰図屛風 狩野探幽 六曲一双
江戸時代 17世紀 サントリー美術館

展示は全5章で成っており、第1章は「新時代への胎動―寛永のサロン」。寛永文化の中心となった京都では、学問・芸術に造詣の深い後水尾天皇らがサロンを開き、洗練された「雅」な世界を追求しました。それらのサロンでは、武家、公家、町衆、文人といった身分を超えた交流がなされていたのだとか。

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重要文化財 東福門院入内図屛風 六曲一双
江戸時代 17世紀 徳川美術館
(C)徳川美術館イメージアーカイブ/DNPartcom
【展示期間:3/21~4/8】 ※現在は展示されていません

広げるとかなりの大きさになる「東福門院入内図屛風」は、国の重要文化財としても登録されている作品。元和6年に二代将軍・徳川秀忠の娘和子が後水尾天皇の女御として入内した際の行列を描いています。馬の蹄の音や、牛車の車輪が廻る音、人々のざわめきがこちらまで聞こえてきそうなほどリアルな作品でした。

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右:小袖屛風 黒綸子地斜格子菊吉祥文模様絞縫腰巻 二曲一隻
左:小袖屛風 白綸子地橋模様絞縫小袖 二曲一隻
どちらも江戸時代 17世紀 国立歴史民俗博物館
展示期間:~3月12日(月)

後水尾院は宮廷文化の復興に力を注ぎ、宮廷では古典復興の機運が高まりました。第2章では、その流れの中で尊ばれた和歌や源氏物語を素材とした書画や、東福門院(徳川和子)の所用と伝わる美しい小袖を素材とした屛風などが見られます。屛風に仕立てられているにもかかわらず、柄や影のきめ細かさから、一歩引いて見ると、まるで本物の小袖が衣桁にかかっているようですね。

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左: 膳所光悦茶碗 本阿弥光悦 江戸時代 17世紀 MOA美術館
中:膳所光悦茶碗 本阿弥光悦 江戸時代 17世紀 個人蔵
右:油滴天目茶碗 芙蓉台添 中国・南宋時代 北村美術館

3階に下りると、寛永文化を代表する茶人である遠州の好みの茶道具が展示されています。遠州は伏見奉行を長く務めた江戸幕府の有能な官僚でもあり、宮廷文化の「雅」を茶の湯に導入した人物。

遠州は宮廷文化、東山文化的な唐物、桃山文化的な侘び、さらに中国、朝鮮、ヨーロッパにいたるまで、新旧様々の道具を自らの美意識で選別し、新たな茶の湯の世界を切り開きました。それは優美で均整の取れた形や明るい色彩を特徴とし、後に「きれい寂び」と評されるようになります。

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左:色絵金銀菱重茶碗 野々村仁清 三井記念美術館
中:色絵花輪違文茶碗 野々村仁清 サントリー美術館
右:黒釉色絵金銀菱文茶碗 野々村仁清 愛知県陶磁美術館
いずれも江戸時代 17世紀

さらに進んだ先には、金森宗和と野々村仁清の特集があります。宗和は遠州と同じく寛永期に活躍した茶人で、「白釉円孔透鉢」の作者である仁清を指導しました。写真はどれも仁清の作品です。

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左:色絵鶴香合 野々村仁清 サントリー美術館
中:色絵鴛鴦香合 野々村仁清 大和文華館
右:色絵鵯香合 野々村仁清 滴翠美術館
いずれも江戸時代 17世紀

仁清は華麗な色絵陶器で有名ですが、宗和の指導を受けていた初期の作品は、落ち着いた色調と独創的かつ洗練された造形を持つ、「きれい寂び」のような、寛永の美意識的なものでした。左から「色絵鶴香合」「色絵鴛鴦香合」「色絵鵯香合」は、手のひらサイズのかわいらしい作品。鳥の上半身部分が蓋になっており、この中に香を収納していたそうです。

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桐鳳凰図屛風 狩野探幽 六曲一双のうち左隻
江戸時代 17世紀 サントリー美術館【全期間展示】

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桐鳳凰図屛風 狩野探幽 六曲一双のうち右隻
江戸時代 17世紀 サントリー美術館【全期間展示】

狩野探幽は京都で狩野派の絵師の家に生まれますが、幼い頃にその画力を徳川家康・秀忠に認められ、本拠地を江戸に移して幕府の御用絵師として活躍しました。彼の優美で平明な画趣は、交流のあった遠州の「きれい寂び」に通じるものとも言え、宮廷文化からも賞賛されました。

「桐鳳凰図屛風」の制作された経緯は記録に残っていませんが、屛屏風の飾り金具に徳川家の家紋である葵紋が施されていることから、幕府との関係で制作が進められたものだと考えられています。また、金地や鳳凰といった晴れの場を飾るのにふさわしい題材や、鳳凰に表象される親子愛・夫婦愛から、婚礼の場で使用されていたのでは?と推測されています。

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手前:和蘭陀半筒茶碗 オランダ 17世紀 個人蔵
奥:ひずみ高麗茶碗 朝鮮時代 17世紀 個人蔵

泰平の世が生み出した新しい美、新しい価値観。宮廷に権力があった古典の世界、武士が力を持った戦国の世界、そして泰平の世に生まれた雅の世界、やがて生まれてくる町人の文化。日本の文化の大きな流れの中で生まれた「きれい」を、じっくりと味わってみてください。

※作品保護のため、会期中展示替えを行います



編集部 月島





information
寛永の雅 江戸の宮廷文化と遠州・仁清・探幽
会場:サントリー美術館
会期:2018年2月14日(水)~4月8日(日)
開館時間:10:00~18:00
※金・土は20時まで開館。※いずれも入館は閉館の30分前まで
休館日:火曜日(ただし4月3日は18時まで開館)
入場料:一般1,300円、大学・高校生1,000円、中学生以下無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://suntory.jp/SMA/

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