BLOG

2017年07月21日

【展覧会レポート】国立新美術館・森美術館「サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで

170721_blog01.png

リー・ウェン 《奇妙な果実》 2003年

現在、国立新美術館・森美術館両館では、「サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで」が開催されています。本展では、社会・経済ともに大きな変化を遂げてきている東南アジアで、1980年代から現在までのあいだに制作された作品を紹介しています。
国立新美術館・森美術館が共同で行う企画展ははじめてのことで、東南アジアの現代美術を紹介する美術展としては史上最大規模です。展覧会は9つのセクションに分かれていて、それぞれ異なった視点から東南アジアで現代美術がどう発展してきたのかを読み解きます。本展に出展されるのは、86組のアーティストによる約190点の作品。今回は、その膨大な作品の中から一部を紹介していきます。

170721_blog02.png

まずは森美術館から。エントランスには、天井から体長8メートルの大きな白象が吊るされていました。存在感と不思議な佇まいに圧倒されるこちらのモニュメントは、実は《サンシャワー》という作品の一部。壁に投影される映像作品と合わせて成り立つインスタレーションです。本展のために作られた世界初公開の作品であり、タイを代表するアーティスト・映画監督のアピチャッポン・ウィーラセタクンとアーティストのチャイ・シリにより共同で制作されました。

170721_blog03.png

こちらは、カンボジア・プノンペンで立ち退きを迫られている地区にある作家の家でのプロジェクトを部分的に再現した作品、ティス・カニータの《天使の小屋》。

170721_blog04.png

色とりどりの旗と、多数の赤いバイク、白い手とスピーカーによって構成されているこちらの作品は、インドネシアのジョンペット・クスウィダナントによる《言葉と動きの可能性》。スピーカーからは、長く独裁を続けたスハルト辞任のスピーチと祝祭的な音楽を合わせたものが流れています。様々な団体のそれぞれの思想やステートメントが書かれた旗が無人のオートバイの上に掲げられたこの作品には、独裁主義政権の終わりと民主主義の始まりを熱狂的に祝う都市の姿が表されています。

170721_blog05.png

1200個の色鮮やかなプラスチック製の風鈴が風に揺れ、過剰なほどの音を奏でているこちらのインスタレーション作品は、フィリピンのフェリックス・バコロールによる《荒れそうな空模様》。フィリピンは、世界一暴風雨の起こる国と言われていますが、風鈴は船上で仕事をしている人に風が起きていることを警告したり、畑を耕している人のために鳥を追い払ったりする役割をしていました。

人間のために警告を与えてきた風鈴を大量に用いているこちらの作品は、今日の環境問題の多くが人間によってもたらされている、という警告のメタファーともとらえられます。

続いて、国立新美術館のレポートです。

170721_blog06.png

こちらは、インドネシアのFX ハルソノ《声なき声》という作品。9枚のパネルの指文字は、インドネシア語で「民主主義」を表しています。パネルの手前には、指文字に対応するアルファベットが刻まれたスタンプが置かれており、自由に押すことができます。一文字一文字押していくことで、この作品に込められた意味をより深く感じ取れるかもしれません。ぜひ会場で試してみてください。

170721_blog07.png

赤いランタンの集まりは、本展のポスターにも使われているシンガポールのリー・ウェンによる《奇妙な果実》という作品。リー・ウェンが自身の身体を黄色く塗って「イエローマン」となり、中国文化の象徴であるランタンをかぶって公園や砂浜を歩くというパフォーマンスをしているそう。シンガポールにおける「黄色人種」および「中国文化」のとらえられ方を問い直しているようにも感じられます。

170721_blog08.png

生地屋の店内をそのまま再現したこの作品は、タイのナウィン・ワランチャイクンによる《ふたつの家の物語》。ナウィンの父親が市場で営んでいる店「OKストア」を再現しているのだとか。

ところ狭しと並べられている生地や洋服、無造作に置かれたはさみや食べかけのお菓子、そして針が動いている時計やカレンダーが、これ以上ないほどリアルで、時間も空間も飛び越えて現地にいるような感覚に包まれます。

作家のワランチャイクンは9月30日(土)、10月1日(日)開催の六本木アートナイト2017の招聘作家でもあります。

170721_blog09.png

部屋一面に糸を敷き詰めたこちらの作品は、タイのスラシー・クソンウォンによる《黄金の亡霊(どうして私はあなたがいるところにいないのか)》。5トンもの糸が使われており、糸の中には9本の金のネックレスが紛れ込んでいます。鑑賞者は中に入って探すことができ、幸運にもネックレスを見つけることができると、スラシーのサイン入り宝石箱に入れて持ち帰ることができます。実際に中に入って探してみましたが、見つかる気配はまったくありませんでした。これは、なかなか根気がいりそうです。

170721_blog10.png

この小さな店舗は、インドネシアのアングン・プリアンボドによる《必需品の店》。雑貨やおもちゃ、アクセサリーや薪に至るまで様々な商品が並んでいて、それぞれ値付けされていて、なんと実際に買うことができます。ミュージアムショップではなく展示場内で買い物ができる美術展は、なかなか珍しいのではないでしょうか。

170721_blog11.png

発展めざましい東南アジアの現代美術に様々な視点から触れることができる、見ごたえのあるこの展覧会、みなさんもぜひ足を運んでみてください。

展示とあわせて、東南アジアへの理解を深められるプログラムも多数開催される予定ですので、詳しくは公式ページをご覧ください。

information
サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで
会場:国立新美術館 企画展示室2E、森美術館
会期:2017年7月5日(水)〜10月23日(月)
主催:国立新美術館、森美術館、国際交流基金アジアセンター

国立新美術館
時間:10:00~18:00(金土〜21:00)
※入場は閉館の30分前まで
「六本木アートナイト2017」の開催に伴い、9月30日(土) 、10月1日(日)は22:00まで開館
休館日:毎週火曜日

森美術館
時間:10:00~22:00(火〜17:00)
※入場は閉館の30分前まで 「六本木アートナイト2017」の開催に伴い、
9月30日(土)は翌朝6:00まで開館
休館日:会期中無休


観覧料:2館共通 一般 1800円 / 大学生 800円
単館 一般 1000円 / 大学生 500円
高校生および18歳未満の方(学生証または年齢のわかるものが必要):無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します): http://sunshower2017.jp/index.html



関連ブログ