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2017年07月03日

【展覧会レポート】 シュウゴアーツ「シュウゴアーツショー 1980年代から2010年代まで」

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六本木通りから少し裏に入ったところにある、3つの現代美術ギャラリーが集結した商業施設「complex665」。その2階にあるシュウゴアーツでは現在「シュウゴアーツショー 1980年代から2010年代まで」と題された展覧会が開催されています。所属作家14名の作品を集めた今回のグループ展では、作品と共に現代アートの30年を振り返ることができます。

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会場に入るとすぐに、作品たちがお目見え。展示スペースは大きく二つに分かれており、入り口側のスペースは、ペインティング作品を中心に構成されていました。

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部屋に入ってすぐ目に飛び込んでくるこの絵は、髙畠依子さんの2017年の作品「空へ」。
元々テキスタイルに興味を持っていたという髙畠さんの作品は、絵の具を手作りのチューブから糸のように細く出し、それを交差させながら重ねていくという独特の技法が特徴。まるで布を織るかのように絵を描いていきます。

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さらにそこに色付けをしたり、風をあてて絵の具を吹きとばしたりして変化を付けた絵の表面は、見る箇所や距離によって表情が様々に変化します。目を凝らすほどに惹きつけられる、不思議な魅力をもった作品です。
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こちらは千葉正也さんの2017年の作品で、その名も「サンキュー(閻魔大王と奪衣婆)#2」。地獄の番人である閻魔大王と、三途の川を渡る人の衣服を剥ぐという奪衣婆がモチーフになっています。
2人の登場人物は、千葉さん自身が紙粘土でオブジェをつくり、それを描いたもの。また、背景はアメリカのハドソン川の写真を見て描かれたものなのですが、これは、三途の川の隠喩として用いているのだそう。写実技法の高さだけでなく、制作手法やそこに隠された物語にも、思わず唸ってしまいます。

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こちらは時代を少し遡り、2004年に制作された小林正人さんの作品「Unnamed 2004 #9」。
小林さんの作品は、既製品のキャンバスに囚われずに描く作風が特徴。キャンバスを張るのと同時に絵を描き進め、作品全体にとってあるべき姿を追求しながら制作していくそうです。小林さんの手の温かみと力強さが伝わってきます。

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トゲのような凹凸がある不思議な形の彫刻作品は、シュウゴアーツ最年長作家である戸谷成雄さんの1988年の作品「二子丸」。もの派に影響を受けながら、もの派以後の彫刻を確立した作家として活躍し、現在に至るまで創作活動を続けられています。

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こちらも同じく戸谷さんの作品。1986年制作の「気配」です。どちらの作品も、木をチェーンソーで掘り進めて形をつくっています。チェーンソーと聞くと少し荒々しく感じますが、間近で見るとその凹凸は実に繊細です。
また、削った際に出た木屑を燃やし、その灰を塗料として使用。塗料がついた箇所はコンクリートのようにも見え、所々に見える木の表面と混ざり合って、独特の質感が表れています。

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入り口側のスペースは、若手作家の新作とベテラン作家の旧作を同じ空間で静かに戦わせる、という裏テーマのもと配置を考えているそう。それぞれの作品のエネルギーが入り乱れる、濃密な空間です。

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奥のスペースへ歩みを進めると、思わずこの作品に目を引かれました。三嶋りつ惠さんのガラス彫刻作品「XY」です。
この作品をはじめ、三嶋さんのガラス彫刻作品はベネチアングラスのメッカ「ムラーノ島」の工房の職人とのコラボレーションにより制作されています。ムラーノでは、アーティストはディレクションに徹し、職人がそのアイデアを形にするというスタイルで作品づくりが行われていて、彼女もその手法を20年以上続けています。ガラスという繊細な素材でありながら、力強さと優美さを兼ね備えた佇まいに、心を惹かれます。

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奥のスペースで一際存在感を放っていたのが、電子音楽家から美術家に転向した経歴をもつ藤本由紀夫さんの作品「The Music (four-panel folding screen)」。
4面あるパネルに、複数のオルゴールがシンメトリーに取り付けられています。このオルゴールの音色、実は、スマホの乱数生成アプリでつくった乱数に従って音を当てはめ、作曲したものだそう。言い換えれば"スマホが作曲した音楽"ということです。

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こちらはその楽譜。メインのメロディーのほか、それを元に逆再生などのアレンジを加えて複数の音色が作られ、それぞれのオルゴールに組み込まれています。
演奏する人によって、どのオルゴールをどのタイミングで鳴らすのかも様々。偶然性を取り入れながら、誰でも現代アートの音色を奏でられる作品となっています。

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既成概念にとらわれない創作活動を行う作家を取り上げることを方針に掲げるシュウゴアーツ。『シュウゴアーツショー』と銘打つだけあり、今回紹介したもの以外にも、その技法や題材に驚かされる作品ばかりでした。ぜひ足を運んで、作品から溢れるそのエネルギーを体感してみてください。


information
シュウゴアーツショー 1980年代から2010年代まで
会場:シュウゴアーツ
会期:2017年6月3日(土)~7月8日(土)
開館時間:11:00~19:00
休館日:日曜日、月曜日、祝日及び展示替え期間
入館料:無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://shugoarts.com/

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