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INTERVIEW
96
福原志保バイオアーティスト Shiho Fukuhara / Bio Artist
Shiho Fukuhara / Bio Artist

『日本ならではの好奇心で、バイオプレゼンスが可能になる場所にする』【後編】

バイオアートの拠点となるために必要なこと。

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  • NO96 福原志保 『日本ならではの好奇心で、バイオプレゼンスが可能になる場所にする』【後編】
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update_2018.09.12 photo_yoshikuni nakagawa / text_ikuko hyodo

ロンドンでバイオアーティストとして注目を集め、現在は東京を拠点に世界中の都市を飛び回る福原志保さん。木の中で故人のDNAが生き続ける『Biopresence』や、遺伝子組み換えによって開発された青いカーネーションを白に戻す『Common Flowers / Flower Commons』など、バイオとアートの融合で生まれる作品は、生命に対する常識や倫理観を揺さぶります。今後ますます盛り上がることが予想されるジャンルのアーティストとして、六本木という街にどんな可能性を感じているのでしょう。さまざまな都市との比較を交えながら語ってくれました。

前編はこちら

輪廻転生を理解できる日本人とバイオアート。

 バイオアートに対する反応は、国によって全然違います。たとえばイギリスだと、『Biopresence』はほぼタブー扱い。メディアに取り上げられても、90%はバッシングだったりします。怒りの手紙をもらったり、「福原志保はどこだ?」って展覧会に怒鳴り込んでくる人もいたりして、怖かったのを覚えています(笑)。フランスの場合は「この作品はアートとして成立するのか」というディスカッションが積極的に巻き起こったりもするのです。他方日本は倫理観やアートの定義みたいなところはすっ飛ばして、アイデアとしておもしろい! となると、意外とすんなり受け入れてしまうことも多いと思います。日本人はおもしろいものに対する好奇心が旺盛で、知らないものでも脅威より興味が強いような気がします。

Biopresence2055

『Biopresence2055』

「福原志保+ゲオルク・トレメル」として発表した、バイオプレゼンスのインスタレーション作品。日本では2005年にICCで開催された『オープン・ネイチャー:情報として自然が開くもの』展で展示された。撮影:木奥恵三

 以前、『Biopresence2055』という作品を、ロンドンのサイエンス・ミュージアムで1年間展示したあと、東京のICCで3か月間展示したことがあるんです。そのときの反応も、見事に真逆でした。「この作品をつくる意味がわからない」とか「こんな木をつくるのは、神への冒涜だ!」というような怒りの反応が、イギリスの主流。日本は「ゴジラ細胞みたい」とか「それって家族と一緒に入れるの?」とか「自分はソメイヨシノになりたい」みたいに、思い思いのことを言ってくれるんです。やっぱり生きとし生けるもののなかに神が宿っているという思想や、輪廻転生っていうのが感覚として染み込んでいるので、木として人間の遺伝子が生き続けることにそれほど不自然さを感じないのでしょうね。反応があまりにも素直だから、拍子抜けしてしまったくらいです(笑)。

ICC

ICC

NTTインターコミュニケーションセンター(ICC)が、1997年4月に西新宿の東京オペラシティタワーにオープンした文化施設。メディアアートをはじめとする、最新テクノロジーを駆使したアート作品を展示。ワークショップやパフォーマンス、ギャラリーツアー、キッズ・プログラムも随時実施している。
写真提供:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

前例がないと慎重になる日本と、大胆になる欧米。

「これはアートだ」という断りを入れると、許されてしまうことってたくさんありますけど、だからこそアートは非日常、非現実的なものとして扱われがちですよね。私はその意識を変えたいという思いが強くあります。アートはホワイトキューブのギャラリーから飛び出して、もっと街に溶け込むべきだと思っているので、木という素材をあえて選んだところがあるんです。国から融資してもらって、ロンドンでバイオプレゼンス社を立ち上げたのも、アート作品だけど私たちの日常に近いものであることを想像してほしかったし、アートを真剣に考えてもらうチャンスだと思ったんです。作品を発表する側にとって、一番怖いのは何も反応がないこと。たとえネガティブな反応だとしても、違和感や嫌悪感の理由を考えることが大事だと思っているので。日常生活を送っていると、わくわくしたり、些細なことに疑問を持ったりするようなことがどうしても少なくなってしまいがちですよね。アートはそういった感情を思い出させてくれる、スポーツみたいなものだと私は思っています。

『Biopresence』はまだ実現できていないのですが、発表当時と比べると技術がかなり向上したことで、かかる予算が約100分の1になったという研究もあります。以前は科学者の方にお願いをするしかなかったんですけど、私たち自身が作業をできるようになったのも大きいですね。できないからと諦めるのは簡単ですけど、ほかにもいろんな方法があるかもしれないじゃないですか。ひとつの壁に向かって突進して、それを崩せなかったとしても、いろんなところに種をまいてしつこく続けていたら、10年くらい経った頃にうまくいく可能性もあるわけだから。実現したいという思いだけはぶれずに進んでいれば、これまでやってきたことやまいた種が、どこかでつながる瞬間が必ずあると思っています。

 日本で実現する可能性ももちろんありますが、日本の場合、前例がないことに対してすごく慎重になりますよね。欧米は逆で、前例がないということはルールもまだつくられていないわけだから、大胆にやっちゃえ! っていう思考回路なんです。しれっとやってしまって、あとで怒られればいいやって考えるんですけど、日本は怒られるパターンを想定しすぎて、急にできなくなってしまうことが多い気がします。それって結局、何もコトが起こっていないのと同じだから、長い目で見ると大きな失敗ですよね。そういう考え方って、大きなプロジェクトを進めるときだけでなく、日常からすでに始まっているんだろうなあ、と思ったりします。

福原志保_メイン画像_04

街なかの巨大オブジェの楽しみ方とは。

 六本木って、巨大なオブジェがポツンポツンとあったりするじゃないですか。オランダの空港とかでもよく見かけるので、エアポートアートって呼んでいるんですけど、突然「ぬん!」とデカイのが出現する滑稽さがあって、作家名を探してもよくわからない。いろんな意味で謎が多いんですけど、日本のは柵で囲ったりして、入れないようにしちゃっているものが多いですよね。ケガをしないようにとか、そういう理由なんでしょうけど、それこそ自己責任でいいのにって思うんです。夏に巨大なオブジェに触って、やけどしそうなくらいの熱さを感じることなんて、まさにサイエンスじゃないですか。

 岐阜に養老天命反転地っていうテーマパークがあるんですけど、作品を見るだけでなく、触れてみたりよじ登ったりして体感して楽しむから、ケガをすることだって普通に起こり得るんです。だけどみんなそれを承知で、自己責任で楽しんでいますよね。子どもが公園で遊ぶときだって、危険と隣り合わせのところで体感して、いろんなことを学んでいくわけじゃないですか。クリーンすぎる環境で子どもを育てたら免疫がつかないから、大人になって大ケガしちゃいますよね。

養老天命反転地

養老天命反転地

岐阜県養老町の養老公園内にあるテーマパーク。アーティストの荒川修作とそのパートナーで詩人のマドリン・ギンズによる構想を実現した、身体で体験できるアート作品。「極限で似るものの家」と「楕円形のフィールド」というふたつのメインパビリオンで構成され、起伏に富んだフィールドで身体を使いながらアートを楽しむことができる。
© 1997 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins.

花粉症から見えてくる、土を増やすことの大切さ。

 バイオアートという視点で街を見ると、「都市とバイオ」というプロジェクトは結構あるんです。たとえば以前、永田町のビルの屋上で養蜂をしていましたけど、蜂はある程度の分布があるから、蜂に付着した花粉のバクテリアを採取して、街のバクテリアマップをつくるようなこともできるんですよね。バイオクラブには、自分たちでいろんなところからバクテリアを採取して、マップにしている人もいました。

 都会にもバイオアートの素材はたくさんあるのですが、東京はもうちょっと木が増えたほうがいいですよね。東京ってほかの世界的な都市と比べると、公園がものすごく少ないんです。だから空を見たいと思ったら、ビルの上に行くのが一番手っ取り早かったりする。ミッドタウン・ガーデンみたいにビルに囲まれているけど、空がスコンと抜けている場所は貴重ですよね。アートは集中して見ると疲れるから、こういうオアシスみたいな空間があるのはありがたいです。

 花粉アレルギーも、結局は同じ種類の木を植え過ぎたことの弊害ですよね。花粉を減らしたいから木を減らしたり、木のあるところに近づかないというのは、根本的な解決になりません。もっといろんな木を混ぜて植えるとか、飛散した花粉が吸着しないアスファルトではなく土を増やしたり、公園を増やすような発想の転換が必要なんじゃないかと思います。100年後、200年後に、人間が木に順応できなくなってしまってからでは遅すぎます。街をつくるという意味でもエコシステムをきちんと見直して、デザインしていきたいですよね。

前編はこちら

取材を終えて......
最近はパリと東京を行ったり来たりしているという福原さん。インタビューは、その過密なスケジュールの合間を縫って行われました。生命のあり方について考えるきっかけを与えてくれる作品の数々は、いつも素朴な疑問から生まれるそうで、「アイデアはプレッシャーがあったら出てこない」とのこと。それらをアートとして形にしていくまでの長い道のりで大事なのは、諦めないこと。さばさばとした語り口から、意志の強さが感じられました。(text_ikuko hyodo)

福原志保

福原志保 / バイオアーティスト
福原志保 / バイオアーティスト

アーティスト、研究者、開発者。2001年ロンドンのセントラル・セント・マーチンズ卒業、2003年ロイヤル・カレッジ・オブ・アート修了。2004年ゲオアグ・トレメルとアーティスティック・リサーチ・フレームワーク「bcl」を結成。以後、特にバイオテクノロジーの発展が与える社会へのインパクトや、水環境問題について焦点を当てている。また、それらにクリティカルに介し、閉ざされたテクノロジーを人々に開いていくことをミッションとしている。

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