サントリー美術館では、8月24日(日)まで、「まだまだざわつく日本美術」が開催中です。本展は、2021年に開催された展覧会「ざわつく日本美術」の第2弾。思わず「心がざわつく」ような展示方法や作品を通し、日本美術の魅力にぐっと近づける展覧会となっています。
今回のテーマは「ぎゅうぎゅうする」「おりおりする」「らぶらぶする」「ぱたぱたする」「ちくちくする」「しゅうしゅうする」の6つ。作品を見るポイントがそのままテーマとなっているため、日本美術初心者の方でも気軽に楽しめるでしょう。
「第1章 ぎゅうぎゅうする―あれもこれも!?『○○尽くし』デザインをひとつ残らず知り尽くす」では、同じ意味や種類のモチーフを集めた文様である「尽くし文」や「ものづくし絵」に注目。
なかでも、幸福の願いが込められた「宝尽くし文」の代表格《色絵寿字宝尽文八角皿》は、15種類もの宝物がお皿一面に描かれた作品です。中央には大きく「寿」と記され、その周りには宝珠が並んでいます。さらにその外側には様々な縁起物が描かれ、見ているだけでパワーがもらえそうな魅力を放っています。
屏風を中心に構成される「第2章 おりおりする―実は自由自在!? 屛風を自分好みに折り曲げてみると...」では、その折り方による印象の違いについて紹介。
当時の屛風は日常生活の中で自由に折り曲げて使用されていたそうです。そのため、私たちがよく目にするジグザグな形だけでなく、空間の大きさや用途に応じて不規則に折り曲げても問題がなかったそう。そこで、本展では屛風のミニチュアを作成し、自由に折り方を試せる体験型の展示を設置。ぜひ、遠近感や立体感の違いを感じてみてください。
恋愛をテーマに制作された作品を集めた「第3章 らぶらぶする―いつの時代も心ざわめく!? 思い思われふりふられな複雑♡(らぶ)模様」で注目したいのは、何といってもそのストーリーの複雑怪奇さ。
人間に恋する鼠が登場する《鼠草子絵巻》や、鳥羽院の寵姫が強力な妖狐だった姿を描く《玉藻前草子絵巻》、大蛇の生贄に捧げられた姫君が海龍王と結ばれる物語《天稚彦物語絵巻》など、人間同士の恋愛だけでなく、人間以外の存在と結ばれる作品がたくさん登場します。
「第4章 ぱたぱたする―二次元⇔三次元!? 展開させればハッとする立体作品の妙」では、今までイメージとして脳内で組み上げるしかなかった立体作品の図様を紙に展開することで、イラストの繋がりを分かりやすく鑑賞できるよう工夫を凝らした展示を披露。
《紫陽花螺鈿蒔絵重箱》【展示は、7月28日(月)まで】や《雄日芝蝶螺鈿蒔絵茶箱》といった箱を覆うように描かれた美しい蒔絵をはじめ、《紫色藤蒔絵瓶》や《紫霞風炉》などの瓶や焜炉に描かれた図様まで幅広く取り上げられています。作品の角や丸みに合わせて図様を配置することで、モチーフに立体感が生まれる作り手の絶妙な配置センスが伺える、貴重な機会となるでしょう。
青森県津軽地方の農村女性が育む伝統技法「津軽こぎん刺し」に焦点を当てた、「第5章 ちくちくする―手は口ほどにものを言う!? ひと針ひと針に表れた刺し手の気持ち」。均一に揃えられた幾何学模様を手で一針ずつ縫い付けていく途方もない作業を想像すると、思わず感嘆の息が漏れてしまいます。
約40種の「モドコ」と呼ばれる基礎的な単位模様を用いて、「てこな(蝶)」「べこ(牛)刺し」など、身近なものを表現。本展では、そんな「モドコ」の拡大模型を作成し、実際に手で触れられる壁面展示も置かれています。複雑な模様も手で触れることで、その規則性が理解しやすくなるかもしれません。
最後はコレクターアイテムに注目した「第6章 しゅうしゅうする―集めて分けて保管して!? コレクターたちの愛と執念」が展開。サントリー美術館の収蔵品の中でも、彫刻家・朝倉文夫氏が集めた日本・中国・ヨーロッパのガラス作品や、皮膚科医・上林豊明氏が集めた髪飾りやそれに類する文献を鑑賞することができます。
江戸時代の女性の髪形をまとめた資料集《髪風俗》から二つの髪型を抜き出し、個性的な二つの櫛《木台兜形蒔絵櫛》《木台魚形櫛》と組み合わせた顔はめスタンドは本展ならでは。ぜひ写真を撮ってお楽しみください。
通常よりも丁寧な解説が盛りだくさんな本展。これまで日本美術に縁がなかった方でも、きっとその面白さに気が付くことでしょう。8月10日(日)には、子どもから大人まで楽しめる「みんなで楽しむ!サン美まるごとアートフェス 2025」を開催予定です。こちらも併せてチェックをしてみてください。
編集部 福島
「まだまだざわつく日本美術」
会期:2025年7月2日(水)~2025年8月24日(日)
※作品保護のため、会期中展示替を行います。
※本展は一部の作品を除き、撮影可能です
開館時間:10:00~18:00(金曜日は10:00~20:00)
※8月9日(土)、8月10日(日)、8月23日(土)は20:00まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
休館日:火曜日
※8月19日(火)は18時まで開館
主催:サントリー美術館
協賛:三井不動産、鹿島建設、サントリーホールディングス
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2025_3/index.html