東京における現代アートの創造性と多様性を国内外に発信する年に一度のイベント、アートウィーク東京が今年は11月7日(木)から11月10日(日)の4日間開催されました。その一環として、2023年に「買える展覧会」として始まった「AWT FOCUS」が今年も開催。今回はその様子をレポートします。
「AWT FOCUS」の会場は、現存する日本最古の私立美術館である大倉集古館。美術館での作品鑑賞とギャラリーでの作品購入という2つの体験を掛け合わせたこの展覧会ですが、毎年異なるテーマのもとでキュレーションされ、出展作品はすべて購入可能となっています。
第2回となる今年は、森美術館館長であり国際アートリサーチセンター長も兼任する片岡真実氏が監修を務めました。「大地と風と火と:アジアから想像する未来」と題し、自然の摂理や不可視のエネルギーなどをテーマとした多種多様な作品が集められました。
開催に先立って行われた展示解説ツアーにて、片岡氏は「会場がいわゆるホワイトキューブではないので、私の新しい邸宅だと考えて作品を配置しました。美術館で観るよりも近い距離で作品をお楽しみいただけます」と、大倉集古館ならではの魅力について説明しました。
展示は「宇宙の構造」「手、身体、祈り」「見えない力」「自然界の循環とエネルギー」の4セクションに大別され、日本からインドネシア、韓国、台湾、フィリピン、ブラジル、香港、メキシコまで、世界各地域から57組のアーティストが参加。日本の26のギャラリーに加え、ソウルのKukje Galleryやマニラ、ニューヨークに拠点を置くSilverlens、台北のTKG+など海外のギャラリーも作品を出展しました。また特別出陳として、3点の大倉集古館所蔵品も出展されました。
もの派の巨匠、菅木志雄氏をはじめとする名だたる作家から新進気鋭の若手まで、幅広い作家の作品が楽しめました。
異なる作家の作品の配置のされ方から生まれるシナジーも魅力の一つ。たとえば、ブスイ・アジョウ氏の《アママタ、ファースト・マム》と西條茜氏の《飲み込んだ罪》が隣り合っていますが、どちらも母性をテーマの一つとしている作品。交互に鑑賞することで、新たな気付きが得られそうです。
1階、2階が会場となっていますが、特に2階の内装は中国風の色が強く、天井や柱など建築自体を眺めても楽しいです。龍を模した装飾もあり、金子富之氏の《天之叢雲九鬼武産龍王》との調和は見ごたえがありました。
ミット・ジャイ・イン氏の《WV AWT》シリーズは、通常壁にかけて鑑賞する作品ですが、本展ではあえて横にして展示されています。片岡氏によれば「荒れ果てた地方のようにも、建物のないマンハッタンのようにも見えますよね」とのこと。角度が変わることで、捉え方に変化が生まれることがとても興味深いです。
山田紗子建築設計事務所による会場構成にも注目が集まった本展。展覧会のテーマとも呼応するアジアの文明や文化について考えさせられる展覧会でした。
アートウィーク東京では、「AWT FOCUS」以外にも数多くの充実したプログラムが開催されました。今年も東京を代表する53の美術館・ギャラリーをつなぐ無料のシャトルバス「AWT BUS」が運行されたり、「AWT TALKS」では、多様なバックグラウンドをもつ第一線のゲストを迎えたシンポジウムなどを開催。その他、コレクターを目指す方向けのプログラムや、村上隆氏と大竹伸朗氏の対談など新作がオンライントークに追加された他、建築×食×アートのコラボレーションを感じられる特設の「AWT BAR」が今年も登場。
ランドスケープアーキテクトの戸村英子氏が設計を担当し、多くの方で賑わいました。SANAAの妹島和世氏が監修した、東京の街に佇む名建築を巡る建築ツアー「TOKYO HOUSE TOUR」もテストケースとして実施され、建築家・東孝光氏が1966年に設計した東京都心の住宅「塔の家」と、建築家・伊東豊雄氏が1983年に設計した東京郊外の住宅「花小金井の家」が特別に公開されました。
編集部 齊藤
アートウィーク東京
https://www.artweektokyo.com/
「AWT FOCUS 大地と風と火と:アジアから想像する未来」
会期:2024年11月7日(木)~11月10日(日)
会場:大倉集古館 1・2階
出展作家:アーリーン・シェケット、青木陵子、赤松音呂、新井卓、アルベルト・ヨナタン・セティアワン、アレキサンダー・トヴボルグ、安藤晶子、イー・イラン、イケムラレイコ、上田勇児、植松永次、沖潤子、表良樹、金子富之、川田喜久治、キム・テクサン、桑田卓郎、小林万里子、西條茜、笹本晃、篠田太郎、シュシ・スライマン、菅木志雄、ソピアップ・ピッチ、ソランジュ・ペソア、䑓原蓉子、田島美加、タロイ・ハヴィニ、崔在銀、ツァイ・チャウエイ、トーマス・ルフ、土肥美穂、戸谷成雄、中井波花、八田豊、原田裕規、廣直高、藤倉麻子、ブスイ・アジョウ、フランシス真悟、ヘリ・ドノ、ポクロン・アナディン、ホセ・ダヴィラ、前田常作、松井紫朗、マリーナ・ペレス・シマン、ミット・ジャイ・イン、宮永理吉(三代東山)、宮本和子、十三代 三輪休雪、向山喜章、ヤン・へギュ、吉増剛造、米谷健+ジュリア、リー・キット、リンダ・ベングリス、ローラン・グラッソ
主催:一般社団法人コンテンポラリーアートプラットフォーム
特別協力:公益財団法人 大倉文化財団 大倉集古館
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.artweektokyo.com/focus/