《蜘蛛》1997年
Installation view Louise Bourgeois:I have been to hell and back.And let me tell you it was wonderful.Mori Art Museum,Tokyo,2024
ⒸThe Easton Foundation/Licensed by JASPAR,Tokyo,and VAGA at Artists Rights Society(ARS),New York,2024.
update_2024.11.08
森美術館で、2025年1月19日(日)まで「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」が開催中です。1997年以来、27年ぶりに開催されるルイーズ・ブルジョワ氏の国内最大規模の個展で、彫刻、絵画、ドローイング、インスタレーションなど100点以上が集結。本展出品作品の約8割が、1998年以降に制作された日本初公開のものになります。
「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」展示風景
Installation view Louise Bourgeois:I have been to hell and back.And let me tell you it was wonderful.Mori Art Museum,Tokyo,2024
ⒸThe Easton Foundation/Licensed by JASPAR,Tokyo,and VAGA at Artists Rights Society(ARS),New York,2024.
本展はブルジョワ氏の創造の源であった、家族との関係をもとに大別。第1章「私を見捨てないで」、第2章「地獄から帰ってきたところ」、第3章「青空の修復」で構成されています。
「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」展示風景
Installation view Louise Bourgeois:I have been to hell and back.And let me tell you it was wonderful.Mori Art Museum,Tokyo,2024
ⒸThe Easton Foundation/Licensed by JASPAR,Tokyo,and VAGA at Artists Rights Society(ARS),New York,2024.
第1章「私を見捨てないで」では、母親像や母性をテーマとした作品が紹介されます。ブルジョワ氏は、母親と早くに死別したことから、「見捨てられるのではないか」という恐怖に囚われていたといいます。そのほか、自身の子どもとの関係性からインスピレーションを受けた作品もあります。
「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」展示風景
Installation view Louise Bourgeois:I have been to hell and back.And let me tell you it was wonderful.Mori Art Museum,Tokyo,2024
ⒸThe Easton Foundation/Licensed by JASPAR,Tokyo,and VAGA at Artists Rights Society(ARS),New York,2024.
血縁関係による「母」だけでなく、自分を受け入れてくれるという意味で母のような存在や、それに近い信頼関係を築いた友人たちをテーマにした作品もありました。《午前10時にあなたはやってくる》(2007年)は、1980年からブルジョワ氏を生涯支えた男性助手との関係性をたくさんの手で表現しています。
「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」展示風景
Installation view Louise Bourgeois:I have been to hell and back.And let me tell you it was wonderful.Mori Art Museum,Tokyo,2024
ⒸThe Easton Foundation/Licensed by JASPAR,Tokyo,and VAGA at Artists Rights Society(ARS),New York,2024.
続いて、「堕ちた女--初期の絵画と彫刻」と題したコラムが、第1章と第2章をつなぎます。ここでは、アメリカ人美術史家のロバート・ゴールドウォーター氏と結婚し、ニューヨークに移り住んだ1938年から最初の10年間に制作された絵画と彫刻を見ることができます。
《ヒステリーのアーチ》1993年
Installation view Louise Bourgeois:I have been to hell and back.And let me tell you it was wonderful.Mori Art Museum,Tokyo,2024
ⒸThe Easton Foundation/Licensed by JASPAR,Tokyo,and VAGA at Artists Rights Society(ARS),New York,2024.
都内の景色が一望できる大窓が設置された展示室に吊られているのは、彫刻《ヒステリーのアーチ》(1993年)。このモデルも、先ほど触れた助手です。当時、ヒステリーを起こすのは女性だけとされていましたが、男性も持つものであるという意味を込めて作られました。
「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」展示風景
Installation view Louise Bourgeois:I have been to hell and back.And let me tell you it was wonderful.Mori Art Museum,Tokyo,2024
ⒸThe Easton Foundation/Licensed by JASPAR,Tokyo,and VAGA at Artists Rights Society(ARS),New York,2024.
第2章「地獄から帰ってきたところ」では、父との確執を含め、不安や罪悪感、嫉妬、殺意、敵意など、否定的な感情にフォーカスしています。
《シュレッダー》1983年
Installation view Louise Bourgeois:I have been to hell and back.And let me tell you it was wonderful.Mori Art Museum,Tokyo,2024
ⒸThe Easton Foundation/Licensed by JASPAR,Tokyo,and VAGA at Artists Rights Society(ARS),New York,2024.
赤い暖炉にも劇場のようにも見える《父の破壊》(1974年)は、彼女の最重要作品の一つともいわれています。テーブルの上に、肉や骨などバラバラになった人体が載せられています。この人体は父親を表現しており、家父長制による支配に対する批判や復讐といった感情が読み取れます。
「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」展示風景
Installation view Louise Bourgeois:I have been to hell and back.And let me tell you it was wonderful.Mori Art Museum,Tokyo,2024
ⒸThe Easton Foundation/Licensed by JASPAR,Tokyo,and VAGA at Artists Rights Society(ARS),New York,2024.
壊れた人間関係の修復と心の解放が主なテーマとなっている第3章「青空の修復」。赤いグワッシュで生命の循環を表す連作《家族》(2007年)《妊婦》(2009年)《花》(2009年)は、最晩年の5年間で描かれた作品です。
「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」展示風景
Installation view Louise Bourgeois:I have been to hell and back.And let me tell you it was wonderful.Mori Art Museum,Tokyo,2024
ⒸThe Easton Foundation/Licensed by JASPAR,Tokyo,and VAGA at Artists Rights Society(ARS),New York,2024.
六本木ヒルズのアイコンである巨大な蜘蛛の彫刻《ママン》の作者、ブルジョワ氏について、より深く知ることのできる展覧会となっています。本展の後にあらためて《ママン》を見に行くと、これまでとは違った印象を抱くかもしれませんね。
編集部 齊藤
INFORMATION
「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」
会期:2024年9月25日(水)~2025年1月19日(日)
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
開催時間:10:00~22:00
※火曜日のみ17:00まで
※入館は閉館時間の30分前まで
※会期中無休
※ただし12月24日(火)、12月31日(火)は22:00まで
主催:森美術館、読売新聞社、NHK
企画:椿玲子(森美術館キュレーター)、矢作学(森美術館アソシエイト・キュレーター)
企画監修:フィリップ・ララット=スミス(イーストン財団キュレーター)
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.mori.art.museum