国立新美術館では11月11日(月)まで「田名網敬一 記憶の冒険」を開催しています。田名網敬一氏の60年以上にわたる創作活動を、初公開の最新作を含む膨大な作品とともに振り返る初の大規模回顧展です。
田名網氏は、幼少期の戦争体験とその後日本に流入したアメリカ大衆文化の影響を受けた、色鮮やかな作風で知られています。2024年も活発に創作活動を続けていた田名網氏ですが、本展が始まって2日後となる8月9日(金)に88歳で逝去されました。
本展は全11章から構成されます。まず会場に足を踏み入れると、高さ約3.5mのインスタレーション《百橋図》と対面。本展のための新作で、重なり合う橋にプロジェクションマッピングが投影され、独特の世界観を形成しています。
前半は、60〜70年代の作品が中心です。1975年に初代アートディレクターを務めた日本版月刊『PLAYBOY』をはじめとする、雑誌や広告などが並びます。第3章「アニメーション」では、実際の映像作品だけでなく、その素材も見ることができます。
第4章では、主に80年代に制作された絵画や立体作品を見ることができます。当時、古代中国の神仙思想やアジアの民衆文化、さらには結核の治療で生死をさまよった際に薬の副作用で見た夢・幻覚からインスピレーションを受けていたそうです。
第7章で展示されている新作《アルチンボルドの迷宮》は、田名網氏が敬愛するジュゼッペ・アルチンボルドの作品を引用して作られた立体作品です。隣には、アトリエの一部を再現したインスタレーションが登場します。
第8~9章では、主に2020年代に発表された作品群が展開されています。《記憶の修築》と題された温室の中には、田名網氏の夢日記とスクラップブックが入っています。
《ピカソ母子像の悦楽》シリーズが壁一面に並べられた様子は圧巻です。写経のごとくピカソを模写し続けたという田名網氏。時代を超えた異才二人のコラボレーションに思わず息をのみました。
第11章とエピローグでは、多種多様なコラボレーション作品が紹介されています。Mary Quant、adidasなどのファッションブランドや、GENERATIONS from EXILE TRIBE、八代亜紀、RADWIMPSといったミュージシャンとの協働など、ジャンルを横断した作品を生み出してきました。
特に注目したいのが、生前交流があったという、赤塚不二夫氏とのコラボレーション作品。擬音の手書き文字を取り入れるなど、赤塚ワールドへのリスペクトがふんだんに盛り込まれた最高のオマージュとなっています。
原色の鮮やかな世界から溢れる生命力を感じる展覧会となっています。オーディオガイドは無料で利用でき、耳からも展示を楽しめます。
編集部 齊藤
「田名網敬一 記憶の冒険」
会期:2024年8月7日(水)~11月11日(月)
休館日:毎週火曜日
開館時間:10:00~18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
会場:国立新美術館 企画展示室1E
主催:国立新美術館、朝日新聞社、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁
協賛:集英社、adidas、MATTEL CREATIONS™
制作協力:ソニー・ミュージックエンタテインメント
協力:NANZUKA
後援:J-WAVE
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.nact.jp/exhibition_special/2024/keiichitanaami/