サントリー美術館では9月1日(日)まで「徳川美術館展 尾張徳川家の至宝」が開催中です。
徳川御三家の筆頭である尾張徳川家では、家康の遺品や歴代当主の所持品などが代々引き継がれてきました。それら約1万点を所蔵しているのが、名古屋市にある徳川美術館です。本展では徳川美術館が所蔵している品々が、テーマごとにまとめられています。
「第1章 尚武 もののふの備え」では、武家のシンボルとも言うべき武具の数々を見ることができます。
「妖刀」として広く名の知られた《村正》。徳川美術館では、刀がもつ当時の風合いを極力変えないよう、あえて研がずに保存しているのだそうです。村正のほかには、家康の愛刀であった《物吉貞宗》なども展示されていました。
大名にとって芸能・技芸は政(まつりごと)の道具であり、学ぶべき教養の一つ。「第2章 清雅 -茶・能・香-」では、そんな大名文化を語るのに欠かせない能装束や茶道具、香道具が並びます。
《唐物茶壺 銘 金花 大名物》は安土城完成の際、祝いの品として織田信長に贈られました。それがいつしか豊臣秀吉へ、そして家康へと渡ったと言い伝えられています。安土桃山時代の行く末を見届けた金花は、戦国三英傑によってどのように愛でられていたのでしょうか。歴史のロマンを感じる作品です。
名古屋城の代名詞、"金のしゃちほこ"にちなんだ《金彩鯱香合》は、尾張家歴代当主のなかで最も茶の湯を愛したとされる斉荘(十二代当主)が職人につくらせた香合の一つです。
武家文化ゆかりの道具を見た後は、大名や姫君たちの雅な生活を物語る豪華絢爛な品々が私たちを迎えてくれます。
「第3章 求美」でひときわ輝きを放つ皿と盃はどちらも純金。三代将軍家光の娘である千代姫の輿入りの折、婚礼調度品として尾張家に贈られました。
国宝《胡蝶蒔絵将棋盤・駒箱》も千代姫の婚礼調度品の一つで、盤の四側面には精巧な蒔絵が施されています。
特別公開となる国宝《源氏物語絵巻》は会期中、4度の展示替えが行われます。これらの絵巻は以前、詞書と絵をそれぞれ別の額に入れて飾っていましたが、繊細な修復作業の末、絵の段ごとに「巻子装(かんすそう)」と呼ばれる巻物の形に戻りました。詞書から絵までをひと続きに見ることができ、絵巻本来の良さを楽しめます。
物語の主人公が光源氏から薫と匂宮に代わり、宇治を舞台に繰り広げられる「宇治十帖」。「橋姫」は宇治を訪れた薫が大君・中の君姉妹を垣間見する場面です。晩秋の霧が立ち込めるなか、美しい姉妹に見惚れる薫の様子が描かれています。
尾張徳川家の至宝を堪能した後は、甘いもので一息つくのもおすすめ。2024年7月3日(水)から9月1日(日)までの期間、サントリー美術館3階shop×cafe内「カフェ 加賀麩不室屋」にて、本展限定メニュー「初音の調べパフェ」を味わえます。金箔やゆうぜん麩菓子の華やかな見た目は、国宝《初音の調度》をイメージしているそうです。
2004年開催の「徳川美術館名品展 姫君の華麗なる日々」以来、サントリー美術館としては20年ぶりとなる同美術館の至宝を集めた本展。大河ドラマで注目を集めている家康や、源氏物語に関係する品々が一挙に鑑賞できるこの機会を、ぜひお見逃しなく。
編集部 山下
※作品は全て徳川美術館所蔵
「徳川美術館展 尾張徳川家の至宝」
会期:2024年7月3日(水)~9月1日(日)
※作品保護のため、会期中展示替を行います
休館日:火曜日
※8月27日(火)は18:00まで開館
開館時間:10:00~18:00(最終入館 17:30)
※金曜日および8月10日(土)、8月11日(日・祝)、8月31日(土)は20:00まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
主催:サントリー美術館、徳川美術館、読売新聞社
協賛:三井不動産、竹中工務店、サントリーホールディングス
展覧会サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2024_3/