アレクサンダー・カルダー氏の個展「カルダー:そよぐ、感じる、日本」が、麻布台ヒルズ ギャラリーで9月6日(金)まで開催中です。
カルダー氏は、動く彫刻「モビール」の発明者として20世紀のモダンアートを代表するアーティストです。本展では、1920年代から1970年代までの約100点もの作品を見ることができます。
本展の会場デザインを担当するのは、長年カルダー財団に協力してきた建築家の後藤ステファニー氏。展示スペースの壁の一部には和紙や漆喰が使われており、モダンな雰囲気を演出します。
1925年、ニューヨークのアート・スチューデンツ・リーグの学生だったカルダー氏は、動物園を訪れては動物のスケッチを描きました。勢いのある線で躍動感を表現する手法は、墨絵に倣ったものだそうで、日本とのつながりを感じさせます。
パリに拠点を移した1926年以降、カルダー氏は針金を使った彫刻の芸術活動に力を入れていくようになります。モビールの発明によって、ブロンズや石を使った従来の彫刻芸術とは異なる、新たな表現方法を生み出しました。
直訳で「日本の影響」と題された《Un effet du japonais》は、扇状に広がる針金や丸型のオブジェクトのかすかな揺らぎに奥ゆかしさを感じる造形です。生前、日本を訪れることはなかったカルダー氏ですが、作品の端々から日本的な感性を感じることができます。
1950年以降になると、カルダー氏はボルトで固定した鉄板を使って壮大なスケールの屋外彫刻の制作に取り組むようになります。
晩年に作られた《Fafnir》は名古屋市美術館が所蔵する《Fafnir-DragonⅡ》(1969)と姉妹関係にある彫刻です。「Fafnir(ファフニール)」とは北欧神話のドラゴンの名前から来ています。
針金や金属板の他に、リサイクル素材が使われた作品もありました。《Tines》は貝殻やガラス片、農具の一部をマテリアルとして使用しています。
会場では、カルダー氏がモビールを制作している様子が上映されていました。カルダーの代表作である作品集「サーカス」に登場するような針金製の人形の制作過程などを見ることができます。
カルダー氏は「作品名などというものは、その全体像から思いつくこともあれば、ちょっとした細部から思いつくこともある」と語っていたそうです。彼が付けた作品名の意図を想像しながら見て回るのも楽しいかもしれません。
日本では最大規模となり、約35年ぶりに東京で開かれる本展。カルダー氏の芸術活動における探求の軌跡を見に訪れてはいかがでしょうか。
All works by Alexander Calder © 2024 Calder Foundation, New York / Artists Rights Society (ARS), New York
編集部 山下
「カルダー:そよぐ、感じる、日本」
会期:2024年5月30日(木)~9月6日(金)
休館日:2024年6月4日(火)、7月2日(火)、8月6日(火)
開館時間:10:00~18:00(最終入館 17:30)
※金曜日・土曜日、祝日・休日の前日は10:00~19:00(最終入館 18:30)
主催:麻布台ヒルズ ギャラリー
共催:Paceギャラリー
企画:アレクサンダー・S.C.ロウワー(カルダー財団理事長)
展示デザイン:STEPHANIE GOTO ARCHITECTURE
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.azabudai-hills.com/azabudaihillsgallery/sp/calder-ex/