森美術館では「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」が2024年9月1日(日)まで開催しています。
シアスター・ゲイツ氏は、ミシシッピとシカゴにルーツを持つアフリカ系アメリカ人で、日本をはじめとするアジア太平洋地域ともかかわりの深いアーティストです。2004年には陶芸を学ぶために初来日し、愛知県常滑市で20年以上にわたって創作活動を行ってきました。
本展は日本初の個展で、陶芸と彫刻が融合した大型インスタレーションや歴史的資料のアーカイブ、タールを素材とした作品、音響作品、映像作品など、さまざまな作品が展示されます。
タイトルにもある「アフロ民藝」とは、アメリカで1954~1968年にわたって行われた公民権運動の一翼を担ったスローガン「ブラック・イズ・ビューティフル」と日本の民藝運動の哲学とを融合したゲイツ独自の美学のこと。
ゲイツ氏は、このアフロ民藝について「日本におけるブラックネスを認識するもので、カルチャーアイデンティティをありのまま表現するもの」と語りました。
はじめのセクション「神聖な空間」では、ゲイツ氏の作品に加え、彼が影響を受けてきた作り手たちの作品を展示しています。会場内の壁には、京都の「香老舗 松栄堂」の調合師と制作した特別な「常滑の香り」のお香が取り付けられており、心安らぐ香りが広がります。
黒い床は、新作《散歩道》(2024年)です。常滑市で本展のために作られた14,000個の黒い煉瓦が敷き詰められています。
7つのレスリースピーカーと1台のハモンドオルガンで構成された《ヘブンリー・コード》(2022年)は、見どころのひとつ。ハモンドオルガンは、高価なパイプオルガンに代わって黒人居住地区の教会で使われてきた楽器です。
内覧会では、ゲイツ氏率いるバンド、ザ・ブラック・モンクスによる生パフォーマンスが披露されました。会期中は、毎週日曜日にオルガン奏者によるパフォーマンスが披露されるそうです。
ゲイツ氏の代表的なプロジェクトに「ストーニー・アイランド・アーツ・バンク」があります。本展の「ブラック・ライブラリー&ブラック・スペース」は、この施設内にあるアメリカの黒人史において重要な書籍を集めたライブラリーの再現です。
約2万冊の本がシカゴから運ばれ、エボニーやジェットといった著名な黒人向け雑誌を実際に読むことができます。英語の書籍が中心ですが、中には日本語で書かれた書籍もあります。
ゲイツ氏の代表作《ドリス様式神殿のためのブラック・ベッセル(黒い器)》(2022~2023年)や《基本的なルール》(2015年)など、陶芸作品と平面作品も見ることができます。
タール・ペインティングを使用した《7つの歌》(2022年)には、屋根にタールを塗る職人だった父へのリスペクトが込められているといいます。また、本作だけでなく《ヘブンリー・コード》(2022年)で7つのスピーカーが使われていますが、ゲイツ氏の7人の姉、そして黒人音楽がゲイツの現代アートの実践に与えた影響への敬意を表現しているそうです。
最後のセクション「アフロ民藝」は、民藝のエネルギーを凝縮した空間となっています。約2万点の常滑焼作品が飾られる《小出芳弘コレクション》(1941~2022年)は圧巻です。また、ミラーボールと氷山(アイスバーグ)を融合させた彫刻作品《ハウスバーグ》(2018/2024年)も見逃せません。音楽と相まってディスコのような雰囲気を演出しています。
ショップでは、本展冒頭に登場したお香や、日本酒「門 からから」などを購入できます。「門」という名前は、ゲート=ゲイツというダジャレで名付けられたそうです。
本展は、子ども料金(中学生以下)と音声ガイドがともに無料という森美術館初の試みがなされています。音声ガイドはゲイツ氏本人による作品解説が聞ける豪華仕様。ぜひ、お子様と一緒に足を運んでみてはいかがでしょうか。
編集部 佐賀
「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」
会期:2024年4月24日(水)~9月1日(日)
開館時間:10:00~22:00
※火曜日のみ17:00まで
※ただし8月13日(火)は22:00まで
※最終入館は閉館時間の30分前まで
休館日:会期中無休
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
主催:森美術館
協賛:株式会社大林組、ブルームバーグ・フィランソロピーズ、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社、ウッドフォードリザーブ
特別協力:WHITE CUBE
協力:ガゴシアン、GRAY
制作協力:山翠舎、香老舗 松栄堂、宇治茶 堀井七茗園、HOSOO
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.mori.art.museum