東京ミッドタウン・デザインハブでは、5月6日(月)まで第107回企画展「PROGETTAZIONE(プロジェッタツィオーネ)イタリアから日本へ 明日を耕す控えめな創造力」を開催しています。
タイトルにある「プロジェッタツィオーネ」とは、イタリア語で「プロジェクトを考えて実践すること」を意味します。英語のDesignが一般的でなかった第二次大戦後、イタリアではデザイナーは「プロジェッティスタ」と呼ばれ、社会性のある創造を行ってきました。
本展のプロローグでは、代表的なプロジェッティスタとして、ブルーノ・ムナーリ、アキッレ・カスティリオーニ、エンツォ・マーリ、アンジェロ・マンジャロッティの4名が紹介されています。
本展は2部構成となっており、まず第1部「PROGETTAZIONEの日本への移植」でミラノでプロジェッティスタたちと協働した城谷耕生氏の仕事が紹介されています。
たとえば、日本の別府温泉街では蒸気を利用した「地獄蒸し」が盛んですが、城谷氏はこの蒸し型に着目し、地域の伝統的な手工業である竹細工の職人たちと竹でできたウォールランプ「APTENIA」を生み出しました。
地域とのつながりを大切にしていた城谷氏。2012年の夏以降には、ミラノからの帰国後拠点としていた故郷の長崎県小浜町でのエコヴィレッジ構想をきっかけにショップ兼カフェの「刈水庵」をオープンさせました。本展では、当時の様子がたくさんの写真と共に紹介されています。
第2部「優しき生の耕人たち」では、プロジェッタツィオーネの核心である「控えめな創造力」に辿り着いた、日本の4地域で実施された活動に着目します。
はじめに登場するのは、日本六古窯のまち愛知県常滑市のクリエイターたち「スベル」による展示「土の朋輩」。デザイナーや陶芸家、建築事務所など、土にかかわるスペシャリスト6人の仕事ぶりを見ることができます。
2022年度グッドデザイン大賞に輝いた奈良県生駒市にあるチロル堂の活動も紹介されています。会場にはガチャガチャが設置されています。実際のチロル堂では、店内通貨の「チロル」をゲットできますが、本展では創設者三人からの「問い」が入っています。無料で体験できるので、ぜひ回してみてください。
「奥能登曼荼羅」のコーナーでは、東京で生まれ育ち、アメリカ生活を経て石川県奥能登に移住した萩野紀一郎氏と萩のゆき氏による「土地に根ざした学び場・まるやま組」と「の菓子」などが紹介されています。昔ながらの里山の知恵をどう伝承していくか、という工夫が見られます。
会場奥にあるのは、福井県福井市の「じわじわ変わる[小さなデザインの教室XSCHOOLから]」。2016年秋に開校したXSCHOOLでは、専門性や背景、拠点の異なる受講生が約4か月間福井に通い、さまざまなプロジェクトを生み出してきました。
たとえば、重度の障害がある子も健常な子も遊べる遊具のOMORIやUKABI、YURAGI。これらが誕生した背景について、模型を見ながら知ることができます。さらには、UKABIを実際に体験できます。
通常デザインハブで行われている展覧会と比べると、展示物がかなり多い本展。写真や文章で詳細に説明されているので、会場内をぐるりと回るだけで大きな学びを得られるでしょう。
会場で使われている什器は展覧会終了後、希望者に低価格で譲渡されるとのこと。詳しくはデザインハブウェブサイト等でご確認ください。
編集部 齊藤
「PROGETTAZIONE(プロジェッタツィオーネ)イタリアから日本へ 明日を耕す控えめな創造力」
会期:2024年3月22日(金)~5月6日(月・祝)
4月14日(日)、4月27日(土)に出展者によるトークイベントを開催
時間:11:00~19:00
会期中無休・入場無料
会場:東京ミッドタウン・デザインハブ
主催:東京ミッドタウン・デザインハブ
共催:「PROGETTAZIONE」展実行委員会
運営:公益財団法人日本デザイン振興会
企画:多木陽介・田代かおる・谷口真佐子
クリエイティブディレクション・会場デザイン:川浪寛朗(Hiroaki Kawanami Design)
グラフィックデザイン:古庄悠泰(景色デザイン室)
制作コーディネーション:山崎超崇
「PROGETTAZIONE」展実行委員会:オク・ウンヒ、川浪寛朗、多木陽介、田代かおる、谷口真佐子、古庄悠泰、諸山朗、諸山岳志、山﨑超崇
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.takaishiigallery.com/jp/archives/31940/