TOTOギャラリー・間では、3月24日(日)まで「能作文徳+常山未央展:都市菌(としきのこ)――複数種の網目としての建築」を開催しています。
本展では、現代都市と生態系をテーマに批評的な建築実践を行っている、東京を拠点に活動する建築家・能作文徳さんと常山未央さんが、これまでに手掛けてきた建築物の設計図や設計の際に取り込んでいる独自の素材などを実際に見ることができます。
能作さんと常山さんは建築設計や論考執筆の他、国内外の大学を拠点に、建築と都市と生態系の関係性をリサーチし続けてきました。そんな二人が手掛けてきたプロジェクトの模型や設計図、創作物が展示されています。
設営、撤収時にゴミを出さないということを意識して会場はデザインされています。たとえば、机は本展終了後に再利用できるよう、釘を使わずに組み立てられたものも。調度品のクオリティも高く、会場全体を展示物として楽しめます。
3階のGALLERY 1では、能作さんと常山さんが2017年から住みながら改修を続けている自宅兼事務所の「西大井のあな」についての記録をメインに構成しています。都市の中でもエコロジカルな暮らしができると考える能作さんと常山さん。ここでは、二人の哲学が詰まった「西大井のあな」の1/30模型や、本展を象徴する「物質循環図」、矩計図と各階平面図などが展示されています。展示品を細かく見ることで、能作さんと常山さんの考え方への理解がより一層深まるでしょう。
「西大井のあな」でやりたかったことの一つとして「断熱改修」があったそう。常山さんは「私が就労していたスイスでは、断熱性能が義務化されています。日本のプロジェクトでは低予算のために断熱を諦めないとならない場面によく直面してきました。『西大井のあな』は、住み手である我々の快適性能を上げるのと同時に、環境負荷も減らしていくという両面からのアプローチを実践するためのプロジェクトです」と語っています。
天井には数々の写真も展示され、入口手前から中庭に向けて過去から現在への流れを時系列で見られるようになっており、新たな試みに臨む能作さんと常山さんのこれまでの軌跡を細かく辿ることができます。
また、中庭には本展のために製作された木造のタイニーハウス「書庵」があります。「書庵」は、都立大学の能作研究室の学生が、大工の指導を受けながらノミや手鋸を用いて伝統工法に挑戦したもので、本展終了後には千葉県・釜沼で進行中の「小さな地球プロジェクト」の敷地に移築されるそうです。
その他にも、太陽光発電パネルや蓄電池、竹製の雨樋を採用した貯水タンクなどを備えた「発電パーゴラ」や、足場板で土留めされ、素焼きポットの灌水装置を備える「屋上菜園」が屋外展示されています。「発電パーゴラ」は木造で設計されており、展示終了後には「西大井のあな」に設置予定だそうです。
4階にあるGALLERY 2は、能作さんと常山さんがこれまで手がけてきた全ての作品・プロジェクトの模型を網羅した展示となっています。「西大井のあな」との関連性も感じられる展示物が揃っており、二人の世界観をより感じることができます。壁面も図面や写真資料を額に入れて飾られており、これは会期後保管しやすくしているのに加え、希望する人へすぐに渡せるようにという想いがあるそうです。
能作さんと常山さんは本展について「我々の住む都市には、空き家や不要な資材が溢れていて、建築家はそれを分解して再構築していく『きのこ』のような存在だと思っています。そしてタイトルにもある『複数種の網目』とは、人間中心主義の社会ではなくいろいろな生き物、微生物が絡み合う世界のことです。建築はその網目の一部としてもっと寄り添うように関わり生活できないかと考え、実践していることをこの展覧会にまとめました」と語っています。
そんな二人が追い求める、新たな建築の概念に触れられる展覧会となっています。作品から溢れ出るエネルギーをぜひ体感してみてください。
編集部 最上
「能作文徳+常山未央展:都市菌(としきのこ)――複数種の網目としての建築」
会期:2024年1月18日(木)~3月24日(日)
開館時間:11:00~18:00
休館日:月曜日・祝日
入場料:無料
主催:TOTOギャラリー・間
企画:TOTOギャラリー・間運営委員会
特別顧問=安藤忠雄、委員=貝島桃代/平田晃久/セン・クアン/田根剛
後援:
一般社団法人 東京建築士会
一般社団法人 東京都建築士事務所協会
公益社団法人 日本建築家協会関東甲信越支部
一般社団法人 日本建築学会関東支部
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://jp.toto.com/gallerma/ex240118/index.htm