TOTOギャラリー・間では、「西澤徹夫 偶然は用意のあるところに」が11月26日(日)まで開催しています。
本展は、美術館の会場構成を数多く担当していることで知られる建築家・西澤徹夫さんの初の個展です。「京都市京セラ美術館」や「八戸市美術館」など、これまで手掛けてきた建物や会場の模型などが展示されています。
本展のタイトルにある「偶然は用意のあるところに」は、学者ルイ・パスツールの格言からの引用。幸運を呼び寄せるには心の準備、膨大な試みが必要であるという意味で、その考え方は建築や会場デザインにおいても通ずるものだと感じ、タイトルに取り入れたそうです。
会場内では、2つの作品を1セットとして扱う形で構成されています。展示だけでなく解説文も対になっており、初めの一文は同じ文章で始まります。
たとえば、「907号室の場合」の《梁飾り棚模型》と「八戸市美術館」の《ジャイアントルーム模型》は、前者は2015年に手掛けたもので後者は2021年のプロジェクト。 このように、セットになっている作品は、時期や場所など、一見共通点がなさそうに見えますが、ある部分が似ていたり、制作中に考えていたことが近かったりするそうです。
美術館の会場構成を数多く手掛けているだけあって、本展も非常に洗練された内容になっています。なぜこの展示が最初なのか? どうしてこの作品がセットなのか? など、隠れた意味を探りながら会場を回るといいかもしれません。
一つの建物を一人の設計者による一つのアイデアでコントロールすることを疑問視し、手がけるプロジェクトは基本的にチームを組んで行うという西澤さん。本展も、自分以外の作品を紹介したいという思いから、3階から4階へ続く中庭には、彫刻家・曽根裕さんの作品が展示されています。西澤さんが学生時代に大きな影響を受けた存在だそうです。
4階も、3階と同じく、2作品1セットで紹介されています。
特に、壁を床面に見立てて設置された2つの模型が目を惹きます。それぞれ、「東京国立近代美術館リニューアル」 の《第2回「MOMATコレクション」再現模型》と、青森県にある「八戸市美術館」の《個室群模型》です。
4階の入り口付近には、この展覧会に出品している模型のためのスタディの一部、《模型の模型》があります。ちょっとわかりにくい場所にあるので、よく探してみてください。
また、4階では壁に2つ穴があり、そこを覗くと西澤さんが会場構成を担当した「京都市京セラ美術館開館1周年記念展『森村泰昌:ワタシの迷宮劇場』」の模型が見られます。そんな遊び心も溢れている展覧会でした。
編集部 齊藤
「西澤徹夫 偶然は用意のあるところに」
会期:2023年9月14日(木)~11月26日(日)
開館時間:11:00~18:00
休館日:月曜日・祝日
入場料:無料
会場:TOTOギャラリー・間
主催:TOTOギャラリー・間
企画:TOTOギャラリー・間運営委員会
特別顧問=安藤忠雄、委員=貝島桃代/平田晃久/セン・クアン/田根剛
後援:一般社団法人 東京建築士会、一般社団法人 東京都建築士事務所協会、公益社団法人 日本建築家協会関東甲信越支部、一般社団法人 日本建築学会関東支部
展覧会HP(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://jp.toto.com/gallerma/ex230914/index.htm