六本木エリアのギャラリーを編集部の目線で紹介する「六本木ギャラリー探訪」。今回は、ピラミデビルの2階にある「KOTARO NUKAGA 六本木」です。オーナーの額賀古太郎さんにお話を伺いました。
KOTARO NUKAGAは2018年、東京・天王洲に国内外の先鋭的な現代アートを紹介するギャラリーとして開廊。六本木は2021年5月にオープンしました。
額賀さんは「広いスペースを確保できる天王洲だけでなく、よりアクセスが良く多様な文化が交差するロケーションに拠点を持ちたいと思い、この場所に決めました」とオープンの経緯を話してくれました。
「六本木は地元なので、自分自身がリラックスしていられる場所。同時に、特異な者、はみ出し者が集まる街だとも思います。歴史とは社会の枠に収まらない例外者が、リニア(直線的)な時間の流れの中に変革を起こすことによって紡がれてきたのだとすれば、ギャラリーというプラットフォームが例外者たるアーティスト達と共謀できる、理想的なエリアかなと思います」
「(オープン時は)ちょうどコロナ禍の真っ只中だったので、金銭的にも社会的にもギャラリーを拡張することのリスクはありました。しかし、オープニングには行列ができ、ヴァーチャルではない刺激的な文化体験を提示することの大切さをあらためて感じました」
「常にギャラリーの中に再編、再生、新生の思考とエネルギーがあり、それをアーティストや来訪者と共有できるような場づくりを目指しています。作品は、自分が初めて見たときに心地よく感じるものより、頭と心に違和感が走るようなものを好みます。最初良くわからないと思ったものが、だんだん分かってきたり、ある日突然解釈できたりすると楽しくないですか?
現代アートの役割の一つが、既存の枠組みに疑問を投げかけ、因習的なものを打破することだとすれば、ギャラリーという機能自体を脱制度化することも必要だと思っています」
「デザイン&アートの街」としての六本木についてお話を伺うと、「テクノロジーでもアートでも、先端にいないとふるい落とされてしまう時代だと思います。一方で、六本木は武家屋敷の名残や古刹が多くあり、古いものからもインスピレーションをもらえる。面白いバランスのある街だと思います」とのことです。
お伺いした際は、東京とカナダを拠点に活動する現代芸術家・森本啓太さんの個展「A Little Closer」が開催されていました。日常のワンシーンを切り取ったような風景画・人物画を古典的な技法で描く作風で知られています。本展では通常よりも若い世代の来場が多かったそうです。
次回は、現代写真の歴史を切り開いてきたドイツ出身の作家、カンディダ・へーファーの個展が10月13日(土)から開催されます。「図書館、博物館、宮殿などを独特の視点から撮影した大判のカラー写真は、制度化された空間に真正面から対峙するようで、新鮮な視覚体験をもたらしてくれます」と額賀さん。ぜひ、足を運んでみてはいかがでしょうか。
編集部 齊藤
「KOTARO NUKAGA 六本木」
住所:〒106-0032 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル2F
開廊時間:火曜日~土曜日11:00~18:00
休廊:日曜日・月曜日・祝日
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):https://kotaronukaga.com/