サントリー美術館では9月18日(月・祝)まで「虫めづる日本の人々」が開催中です。会場内には虫の声が鳴り響き、涼しげな雰囲気を味わえます。
日本美術では草木花鳥がモチーフとして取り上げられることは多く、これまでも花鳥画の展覧会が数多く開催されてきました。一方で、虫もまた重要なモチーフではあるものの、それに焦点をあてた展覧会は少なく、サントリー美術館でも虫をテーマに取り上げるのは今回が初めてだそうです。
ここでの「虫」とは、いわゆる昆虫だけではありません。蜘蛛、蛙、蛇などの小さな生き物たちも当時は虫として親しまれていました。本展では、そんな虫たちが登場する物語や和歌、工芸品、浮世絵などが集められました。
「第一章:虫めづる国にようこそ」では、物語に登場する虫に注目しています。玉虫の姫をめぐって蝉、きりぎりす(現在のコオロギ)、ひぐらしが争うなど、ユーモアたっぷりに擬人化された虫が描かれた《きりぎりす絵巻》などを見ることができます。
続く「第二章:生活の道具を彩る虫たち」では、酒器、染織品、簪などの身近な道具が並びます。蝶は古くから縁起の良い生き物とされてきました。ここでは、夫婦円満を表す吉祥文様としての蝶をとりあげています。
「第三章:草と虫の楽園―草虫図の受容について―」では、草虫図が多数登場します。草虫図は中国で成立した画題ですが、日本に伝来し、将軍や大名など特に権力者に愛されました。どこに虫が描かれているのか、じっと目を凝らして探してみてください。
階段を下った先は「第四章:虫と暮らす江戸の人々」。江戸時代の作品が中心になります。虫を売り歩く「虫売り」が登場し、その様子が描かれています。また、蛍狩りが娯楽として広まった頃でもあります。蛍は恋心の象徴ともされており、《夏姿美人図》(遠山記念館)では蛍狩りの準備をする女性が描かれています。(※展示は8月21日まで)
先の「第五章:展開する江戸時代の草虫図―見つめる、知る、喜び―」では、博物図譜や狂歌絵本が並びます。西洋から新しい学問が入り、虫を見る人の視点が変わった頃の書籍になります。
最後の「第六章:これからも見つめ続ける―受け継がれる虫めづる精神―」では、明治から昭和、そして現代の作品が並びます。「虫めづる精神」がいかにして受け継がれているのか、ぜひ会場に足を運んでご覧ください。
編集部 齊藤
「虫めづる日本の人々」
会期:7月22日(土)~9月18日(月・祝)
※作品保護のため、会期中展示替を行います。ポスター等に掲載している伊藤若冲《菜蟲譜》の展示期間は8月9日(水)~9月18日(月・祝)で、期間中に場面替があります。
休館日:火曜日
※9月12日(火)は18:00まで開館
開館時間:10:00~18:00(金曜日・土曜日は10:00~20:00)
※9月17日(日)は20:00まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
主催:サントリー美術館、朝日新聞社
協賛:三井不動産、三井住友海上火災保険、竹中工務店、サントリーホールディングス
展覧会HP(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2023_3/index.html