多摩美術⼤学TUBは、第27回企画展として「ポケモンと考える アート・環境教育」を2023年3月26日(日)~4月8日(土)に開催しました。今回はその様子をレポートします。
会場には、ピカチュウやイーブイといった有名なポケモンから、ホゲータなど最近登場したポケモンまで、20数体のアート作品が並びました。これらはよく見ると、配線ケーブルや空き缶、パイロン(三角コーン)、傘などで作られています。
展示されている作品は、多摩美術⼤学生産デザイン学科プロダクトデザイン専攻の学生たちが、授業プログラムの一環として作成したものだそう。身の回りにあるものを使って作られた「アップサイクル」のアート作品になっています。
たとえば上記のコリンクは、Wi-Fiケーブルとビデオケーブルを使って、かご編みの要領で作られています。ピカチュウもコリンクも「でんきタイプ」のポケモンですが、どちらも電気製品で制作されているのが面白いです。
会場奥に設置されたモニターには、制作過程が映し出されていました。もとの状態ではただのゴミにみえたものがポケモンに変化する様子は、まさに「進化」そのもの。
制作スタイルは、「どのポケモンにするか決めてから素材を選ぶパターン」と「素材を見つけてからどのポケモンを作るか決めるパターン」の二通りに分かれたそうです。ポケモン愛の強い学生が多かったようで、「どうすればより生きものらしさを表現できるだろうか」と、苦労しながらも夢中で作業していたと、この企画展をオーガナイズした多摩美術⼤学の濱田芳治教授と尾形達准教授が裏話を教えてくれました。
会場では制作した学生から直接話を伺うこともできました。プラスティックのれんげでアルセウスを制作した黒川歩大さんは、「れんげでできているんだ!と気づいてもらえる瞬間がうれしいです。身の回りのものでこういった作品が作れることを伝えたいです」と話していました。
会場には、老若男女問わず幅広い世代のポケモンファンが訪れました。展示された作品を一つひとつじっくりと鑑賞する人が多く、長時間滞在する人も少なくありません。「美術館に連れて行ってもすぐに飽きる子なのに、こんなに集中して展示を観ているのは初めて」という親御さんの声もありました。
壁には、2022年に行われた第15回企画展「ゴミーー我々はこれからゴミ問題をどうデザインすべきなのか?」で制作したパネルも展示。環境問題の今を知ることができます。また、来場者が書き残していったポストイットも。「買ったものは長く使う」「ごみを分別する」など、今すぐできるアイデアの数々で埋め尽くされました。
会期中には、「君だけのモンスターボールをつくる」ワークショップも実施。「君の作るモンスターボールの中では、どんなポケモンが楽しそうにしているのかな?想像して描いてみよう」をテーマに、段ボール古紙を素材とする球状の花火玉皮に水性マーカーでイラストを描きます。計90組の小学生と保護者のペアが参加しました。
アートの入り口としてはもちろん、環境問題を考えるきっかけも生み出してくれた本展。多摩美術大学は、今年も同プログラムを授業で実施するそうです。来年には、さらに多彩な顔ぶれのポケモンと出会える機会があるかもしれません。
編集部 齊藤
「ポケモンと考える アート・環境教育」
会期:2023年3月26日(日)~4月8日(土)
会場:多摩美術大学 TUB
東京都港区⾚坂9-7-1 ミッドタウン・タワー5F(東京ミッドタウン・デザインハブ内)
主催:多摩美術大学 TUB、プロダクトデザイン研究室
協力:一般財団法人 ポケモン・ウィズ・ユー財団
公式サイトで詳細を見る(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://tub.tamabi.ac.jp/exhibitions/3204/