東京ミッドタウン・デザインハブでは、2022年12月に「かちのかたちたち展ー捨てる手前と後のこと」が開催されました。記念すべき、第100回となる企画展です。
どこまでがゴミではなく、どこからがゴミなのか? 本展では、「ゴミ」の定義とその境界に焦点を当て、第一線で活躍するデザイナー、クリエイターたちの価値観に迫りました。
会場に入ると真っ先に目に入るのが、発泡スチロールやアルミ缶、ペットボトル、紙などの圧縮されたかたまり。捨てられた後、「ゴミ」から「資源」に生まれ変わる過程のものたちです。このあとリサイクル工場で、再び資材やエネルギーとして循環していきます。
このアルミ缶のかたまりは7,230本分で、重量は60kgに及ぶとか。並んでいるものの中では最も重そうに見えますが、実は軽いほう。ペットボトル176kg(176,000本分)、紙230kg(62,300枚分)と、さらに重いかたまりがありました。
日本ではものを長く使う工夫として、古くからさまざまな方法が実践されていました。たとえば、東北地方では寒さに耐えるため、衣服のすり切れた部分をつぎはぎして補強する衣服、襤褸(ぼろ)があります。
割れてしまった陶器の修復技法「金継ぎ」も、ものを大切に使用し続ける工夫のひとつ。写真手前は、異なる陶器の破片をパッチワークのようにつなげる「呼継ぎ」です。元通りに修復するのではなく、まったく新しいものに作り替えることで、付加価値が生まれています。
参加型の展示もありました。循環をテーマにした際に用いられることの多い、英語の接頭語「Re」。「繰り返す・再び」「後ろ」「反対」と、大まかに3つの意味を持つ「Re」を使って、新たな言葉をクリエイションするという企画です。
会場中央には、あらゆるジャンルのデザイナー・作家による「ゴミとゴミになる手前の境界」を捉えたものが集合。深澤直人さん、柴田文江さん、菅俊一さん、中村勇吾さん、永井一史さんなど、六本木未来会議に登場したことのあるクリエイターも参加していました。
エピソード付きで紹介されているのが面白く、たとえばコンセプトディレクターの前村達也さんは、3Dプリンターとストーブの薪を物々交換した過去から、この二つを並べていました。
そのほか、包装紙を捨てる前にノートにしたもの(上写真)や、街中で拾ったオブジェにピンを付けて作成した「クソバッジ」(下写真)など、多種多様なものが集められました。
世界や日本で実践されているサーキュラーな活動家たちの活動も。リサイクル率No.1の自治体、鹿児島県大崎町では、行政や企業も協働して資源の循環に取り組んでいるそう。スナックの袋なども洗ってリサイクルに出す細かな活動は、見習いたいものです。
多摩美術大学生産デザイン学科プロダクト専攻studio3の学生たちが行ったRE-MAKE(アップサイクル)の道具提案では、廃棄資材や中古資材に3Dプリンターで作成したパーツを追加して、その可能性について提示しました。
トースターが引き出しに、テニスボールがクリップに変身するなど、一風変わった作品が多く、非常に未来を感じる内容となっていました。
展示の最後には、ゴミ箱と書かれた段ボールが9つ並びます。ここでは、今日捨てた、あるいは捨てる予定のゴミをイメージした「かちのかけら」を、会場入り口のボードに張り付けることになっています。
通常、展覧会は終了後にゴミを多く排出してしまいますが、本展では最小限で済むような工夫がされているといいます。サーキュラーエコノミーについて、今一度考える良い機会となった展覧会でした。
編集部 齊藤
「かちのかたちたち展ー捨てる手前と後のこと」
会期:2022年12月5日(月)~12月25日(日)
会場:東京ミッドタウン・デザインハブ(東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー5階)
主催:東京ミッドタウン・デザインハブ
運営:多摩美術大学 TUB
監修:永井一史(多摩美術大学 統合デザイン学科教授)
企画構成:前村達也(多摩美術大学 統合デザイン学科非常勤講師/SCALE ONE Inc.)
グラフィックデザイン:木住野彰悟 (6D)
会場構成:吉田あさぎ
公式サイトで詳細を見る(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://designhub.jp/exhibitions/8267/