サントリー美術館では1月22日(日)まで、「京都・智積院の名宝」が開催されています。
京都・東山にある智積院は、真言宗智山派の総本山。弘法大師空海が創始した真言教学の正当な学風を伝え続ける寺院です。また、長谷川等伯らによる障壁画をはじめ、多くの文化財を大切に保護してきました。本展では、そんな智積院が秘蔵する多彩な名宝が一挙に公開されます。
会場に入ってすぐのところでは、鎌倉時代から伝わる真言宗祖師の肖像画や、学僧たちにまつわる品々が並びます。
本展最大の目玉は、「第二章 桃山絵画の精華 長谷川派の障壁画」の展示です。桃山時代の文化を代表する長谷川派の絵師たちによる国宝の金碧障壁画が館内の壁を埋め尽くす、ダイナミックで荘厳な空間が広がります。
長谷川等伯による「楓図」は、楓の葉の赤や緑、背景に描かれた水面の目の覚めるような青など、他の金碧障壁画に比べて鮮やかな色使いが特徴的で、実り豊かな秋の風情を感じさせます。
対して、等伯の息子・長谷川久蔵による「桜図」には大輪の八重桜が描かれており、まさに"春爛漫"という言葉がぴったりの作品です。胡粉と呼ばれる白い絵の具を用いて描かれた桜の花は、マットな質感で少しぷっくりと盛り上がっているのですが、これが金色の背景によく映えます。
ちなみに、この「楓図」と「桜図」が並んで展示されるのは今回が初めてのこと。さらに、等伯の傑作といわれる、高さおよそ3.3メートルの大作「松に黄蜀葵図」は、寺外初公開となります。
そんな長谷川派の障壁画群から多大な影響を受けたという近代の画家の作品も同時に楽しむことができます。
堂本印象が1958年に発表した「婦女喫茶図」には、和装の女性と洋装の女性が庭のテーブルでくつろぐ様子が描かれています。取り扱っているテーマはもちろんのこと、軽やかな色彩はモダンな印象で、お寺の襖絵としては「意外」というのが正直な感想です。実際、発表当時も大いに話題になった作品だといいます。
寺内外の多くの学僧たちとの繋がりを持っていた智積院には、真言宗に限らず様々な宗派の仏教美術が残されています。智積院の明王殿(不動堂)に安置されていた「釈迦如来坐像」や国宝の「金剛経」をはじめ、その種類は多岐にわたります。
実際に智積院の修法で用いられてきたという密教法具も魅力的です。古代インドの武器に由来するという不思議な佇まいは、他の展示品とはまた違う、神妙な雰囲気を醸し出しています。
本展示は、智積院が秘蔵する多彩な名宝を一堂に堪能できる貴重な機会です。煌びやかな障壁画をはじめ、滅多にお目にかかることのできない国宝の数々が並ぶ様子は、まさに"宝の山"。日本美術に興味がある方はもちろんのこと、それ以外の方にとっても見ごたえが十分に感じられるはず。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
編集部 尾原
サントリー美術館「京都・智積院の名宝」
会期:2022年11月30日(水)~2023年1月22日(日)
※作品保護のため、会期中展示替を行います
※会期は変更の場合があります
会場:サントリー美術館(東京・六本木)
開館時間:10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)
※入館は閉館の30分前まで
※開館時間は変更の場合があります
休館日:毎週火曜日(ただし1月17日(火)は18:00まで開館)
入館料:【当日】一般 1,500円、大学・高校生 1,000円
※中学生以下無料
※障害者手帳をお持ちの方は、ご本人と介護の方1名様のみ無料
主催:サントリー美術館、総本山智積院、朝日新聞社
協賛:三井不動産、三井住友海上火災保険、竹中工務店、パナソニック ホールディングス、サントリーホールディングス
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2022_5/index.html