Karimoku Commons Tokyoでは9月25日(日)まで、「ぐわぐわぬるぬる:森からいづる不可視な境界線を廻って」が開催されています。
本展は、企画主催を務めるアーティストの若佐慎一氏と、メディアアーティストの落合陽一氏の2人展。それぞれの領域による作品に加えて、木材を使用した新作が発表されています。
使用されている木材は、カリモク家具が家具を製造する過程で発生する端材。若佐氏は、その在り方を思索するなかで、「アニミズム」という生命観について再考したといいます。アニミズムとは、生物・無生物を問わずすべてのものに霊魂が宿っているという考え方。自然豊かな日本において、日本人の根幹的な概念といわれることもあります。
今回、森と人との関係性の中にある「見えないモノ」という存在が展示コンセプトに掲げられています。展示会場には、スピリチュアルかつどこか懐かしさを感じさせる独特な雰囲気が漂っていました。
会場に入ると、落合氏の作品《物象化する願い,変換される身体(手足・足長)》が出迎えてくれます。手の先にある銀口魚も、もちろん木製。複雑な形状ですが、落合氏の製作した三次元データとそれを削り出し仕上げるカリモク家具の技術力、職人との協働によって実現されたといいます。
会場内には鐘の音が低く響いています。仏教的な気配のなかにも、どこか不穏な要素が感じられます。右奥の壁に設置されているLEDビジョンも、じっと見つめていると逆に誰かに見られているような、そんな不思議な心持ちにさせられました。
奥へ進むと、床に敷き詰められたおがくずの上に、若佐氏の作品が3点置かれています。木の香りやその野性的な印象から、まるで森の中に迷い込んだような気分になります。
本展の名称「ぐわぐわぬるぬる」ですが、「ぐわぐわ」は若佐氏の作品、「ぬるぬる」は落合氏の作品を表しているのだとか。たしかに作品を見た瞬間に、どちらが手掛けたのか一目でわかりますね。
上記の《Woodlzed Waves - neutral -》は、落合氏の立体作品をもとに三次元データを作成し、他の作品と同じくカリモクのC NC加工機と職人との協働で制作したもの。木材の艶感が特徴的ですが、これはスプレーによるウレタン塗装で仕上げられているそうです。
こちらのインスタレーション作品、中央にあるのは若佐氏の彫刻《森から出づった〇〇様》。その背景には、落合氏によるインフィニティミラーを用いたLEDメディアアートが展開されています。このインパクトは筆舌に尽くしがたいものがあります。ぜひ、実物をご覧になってください。
日本古来の超自然的な存在と、現代的な技巧が合わさった、実に不可思議な展覧会でした。会期中は、若佐氏が在廊している日もあるそうです。芸術の秋の始まりに、ぜひ足を運んでみては?
編集部 齊藤
Karimoku Commons Tokyo「ぐわぐわぬるぬる:森からいづる不可視な境界線を廻って」
会期:2022年9月1日(木)~9月25日(日)
(毎週日曜日は休館、最終日のみオープン)
会場:Karimoku Commons Tokyo
時間:12:00~18:00
入場料:無料
企画主催:若佐慎一
機材提供・技術協力:株式会社セイビ堂
協力:カリモク家具株式会社、Emohaus inc.、inu 合同会社、阿座上陽平、公益財団法人日下部民芸館、飯山寺、神通寺、錦山神社、霊泉寺、株式会社井上工務店、CHAIRMAKER TAKAYAMA JAPAN
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://commons.karimoku.com/