21_21 DESIGN SIGHTでは、2023年2月12日まで、「クリストとジャンヌ=クロード "包まれた凱旋門"」が開催されています。
2021年9月、エトワール凱旋門が布で覆われると、周囲は人々の歓声に包まれました。クリストとジャンヌ=クロードが出会い、現代美術作家として創造活動の一歩を踏み出したパリで1961年に構想した、悲願の夢でもあったプロジェクト「L'Arc de Triomphe, Wrapped, Paris, 1961-2021(包まれた凱旋門)」が現実のものとなった瞬間でした。
同じ年の同じ日に、別の場所で生まれたクリストとジャンヌ=クロードは、やがてパリで出会い、共同制作者としてモニュメンタルな環境芸術作品を制作します。2009年にジャンヌ=クロード、2020年にクリストがこの世を去りましたが、多くの賛同者の協力のもと、構想から60年の歳月をかけて、2021年9月に「包まれた凱旋門」が実現しました。
「包まれた凱旋門」は、エトワール凱旋門が16日間に渡り、銀色のコーティングが施された再生可能な25,000㎡の青い布と、3,000mもの赤いロープで包まれたプロジェクトです。本展ではその背景や制作過程を、多くの記録画像や映像を用いて紹介しています。構想、準備、設置、実現までを段階的にたどる空間が展開されています。
会場地下ロビーには、2人がパリで暮らしていた活動初期の作品や、多くの人々が携わり制作されたプロジェクトの数々を紹介する映像が流れています。
また、ニューヨークのアトリエで自身が描いたドローイングを眺めるクリストや、2人が共同作業をする姿などを収めた写真も並びます。「包まれた凱旋門」の準備を行うクリストの様子も、記録映像を用いて紹介されています。
クリストとジャンヌ=クロード2人のプロジェクトを実現するためには莫大な費用が必要だったそうですが、彼らはスポンサーを付けることなく、自らの手で費用を捻出していました。例えば、「包まれた凱旋門」の制作に必要となる、日本円にして約18億円もの費用を工面するために、クロードは2年弱で70点ほどの絵画を制作しています。本展で展示されているドローイングは複製ですが、データを用いて、細部まで忠実に再現されているそうです。
ギャラリー1では、凱旋門の模型を中心に、「包まれた凱旋門」の準備を行うクリストとチームの様子が、映像で紹介されています。大胆で壮大なプロジェクトの背景には、多くの人々と、細かく丁寧な作業が潜んでいると知ることができます。
ギャラリー2には、「包まれた凱旋門」をさまざまな視覚手法で再構成する空間インスタレーションが展示されています。ナショナルモニュメントである凱旋門を傷つけないように工夫を凝らして制作していく様子から、「包まれた凱旋門」が実現し、人々の驚きや歓喜に包まれるまでを、まるで一本の映画の中にいるようなダイナミックな空間を通して体験できます。
映像からは、技術者やスタッフなど多くの人々の手によって、凱旋門がゆっくりと慎重に覆われる様子や、周りで見守るパリの人々、そして凱旋門が布とロープで包まれた瞬間の歓喜が見て取れます。
また、準備や制作に携わった人々の様子を写した写真も展示されています。プロジェクトの実現に尽力した14名のインタビュー映像では、クリストとジャンヌ=クロードの過去作品を踏まえつつ、「包まれた凱旋門」制作の舞台裏や、クリストとジャンヌ=クロードの人柄などが明かされます。
壁面には、重量のバランスをとるための重石の位置を示した図、赤いロープの詳細を示した図など、作業の細部の指示を示した設計図が描かれています。壮大なプロジェクトの背景に、このように綿密な計画と作業があったと気づかされました。
入場無料のギャラリー3には、驚きに満ち溢れたユニークなプロダクトを紹介する「21_21 NANJA MONJA」が新たにオープンしています。本展会期中は、「包まれた凱旋門」をイメージした展示とともに、クリストとジャンヌ=クロードに関する書籍やグッズが多数揃っています。また、自由な発想から生まれたオリジナルプロダクトもぜひ手に取ってみてください。
「包まれた凱旋門」の制作背景と実現に向けた長い道のりに焦点をあてながら、クリストとジャンヌ=クロードが生涯を通じて貫いたものを紐解く「クリストとジャンヌ=クロード "包まれた凱旋門"」。アートやデザインのみならず、日常におけるさまざまなチャレンジにも勇気を与えてくれる本展へ、足を運んでみてはいかがでしょうか。
編集部 丹羽
クリストとジャンヌ=クロード "包まれた凱旋門"
会場:21_21 DESIGN SIGHT
会期:2022年6月13日(月)~2023年2月12日(日)
休館日:火曜日、年末年始(12月27日~1月3日)
開館時間:10:00~19:00(入場は18:30まで)
入館料:一般1,200円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料
※ギャラリー3は入場無料
主催:21_21 DESIGN SIGHT、公益財団法人 三宅一生デザイン文化財団
後援:文化庁、港区教育委員会、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
特別協賛:三井不動産株式会社
協賛:株式会社イッセイミヤケ
特別協力:クリスト・アンド・ジャンヌ=クロード財団
展覧会ディレクター:パスカル・ルラン
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://www.2121designsight.jp/program/C_JC/