国立新美術館では7月18日(月・祝)まで、現代美術家タムラサトルの個展「ワニがまわる タムラサトル」が開催されています。
これまでタムラ氏は、意味や目的の排除をテーマに、さまざまな作品を制作してきました。本展では、タムラ氏の代表作「まわるワニ」シリーズが大規模に展開されています。
ポップでキュートな大量のワニたちが、電力とモーターで止めどなく回転し続ける庭園「スピンクロコダイル・ガーデン」。足を踏み入れた途端、どこか童心に帰ったような心持ちにさせてくれます。
大きさはもちろん、ワニの数、速度、色......。個性豊かなワニたちがずらりと並んでいます。広々とした展示空間の中、ひときわ目を引くのが、新作となる約12メートルの巨大ワニ。巨体を反時計回りに、ゆっくりと回転させています。
ちなみに、本展では、ほとんどのワニが時計回りで回っています。タムラ氏曰く、回転する向きに特に意味はないそう。そもそも、「ワニ」がまわること自体には意味はないといいます。
なんだかよくわからないけど、ワニがまわっている。そんな非日常的な、不思議な状況こそが面白さの本質であると、タムラ氏は語ります。
お腹側には、大きな身体を支えるモーターが。パステルグリーン一色で彩られた可愛らしいワニに、武骨でシンプルなモーターが突き刺さっている様は、一見ミスマッチなようですが、ずっと眺めていると馴染んでいるようにも見えてきます。
巨大ワニのほかには、壁側に沿って大小さまざまなワニたちが約1,100体配置されています。
特に速い速度で回転しているのが、高い位置に設置された「スピンクロコダイル」。こちらは1994年、タムラ氏が大学3年生の頃に制作されたものです。4.5メートルの濃い緑色をしたワニの大きさは、ナイルワニを参考にしているとか。
タムラ氏は、この作品をきっかけに「これで作家になれる」と確信したそう。以降、ワニの色や数、回転のさせ方など、バリエーションに富んださまざまなワニが誕生しました。
こちらは、小さめの5体のワニが一緒に回転している作品。口を開けて仲良く並んでいる姿は、どこか楽しそうに見えてきます。
一見ワニらしくないという点では、オレンジ色のワニ6体が縦に並べられた、こちらの作品に目を奪われます。まるで口から尾までを一本の棒で貫かれたような姿は、鳥の串焼きやバウムクーヘンの焼き姿を想起させます。
全身をイエローに塗られたこちらのワニにも、ちょっと変わったポイントが。身体に2箇所穴が開いており、その中にプロペラが仕込まれています。大きなモーター音を響かせながら回転する姿は、かなり迫力満点。
これらのワニの下では、15センチほどの小型ワニがひしめき合っています。一つひとつに名前がつけられていて、その名はお腹側に記載されているそうです。いったいどんな名前なのか、想いを馳せながら眺めてみてもいいですね。
少し離れた場所では、春に開催されたワークショップで制作されたワニたちが回っています。かわいらしくデフォルメされたもの、後ろ足で立ち上がっているものなど、独創的な100体のワニを見ていると、あっという間に時間が過ぎ去っていきます。
6月25日(土)には、ショートギャラリートーク「タムラさんに聞いてみよう!」が開催。タムラ氏と来場者がコミュニケーションをとれる場が設けられています。
展示室では、タムラ氏のインタビュー映像「1,101のワニがまわるまで」も放映。こちらは美術館ホームページでも公開されているそうです。
大きな空間の中、カラフルなワニたちがモーター音を響かせながら回っている姿は実に壮観。入場料無料なので、国立新美術館の近くを訪れた際はぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
編集部 齊藤
国立新美術館「ワニがまわる タムラサトル」
会期:2022年6月15日(水)~7月18日(月・祝)
会場:国立新美術館 企画展示室1E
開館時間:10:00~18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
休館日:毎週火曜日
入館料:無料
主催:国立新美術館
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.nact.jp/exhibition_special/2022/spinningcrocodiles/