TOTOギャラリー・間では、9月11日(日)まで、「末光弘和+末光陽子 / SUEP.展 Harvest in Architecture 自然を受け入れるかたち」が開催されています。
末光弘和+末光陽子 / SUEP.(スープ)は、自然と建築が共生する新しい時代の環境建築デザインを手掛ける建築家ユニットです。地勢、水脈、植生、生態系などに着目し、自然環境にある風・熱・水などの働きをシミュレーションして設計の起点とすることで、建築を媒介した資源の循環システムを構築しています。また建物の居住性能を上げるという機能面はもちろん、住まう人、使う人、地域の人たちが、その循環の一員として参加する喜びを分かち合えることも大切にしています。
本展は、自然の恵みを維持し続けるために、循環する環境の一部としてあるべきこれからの建築の姿を問うものです。タイトルの「Harvest in Architecture」には、私たちが日々地球の恵みを受け取れることへの感謝と、それを継続するために行う努力への決意が込められています。
3階会場は、3つのセクションに分かれています。「01 Market of Ideas」では、SUEP.が設立以来続けてきたLAB活動を通して発見されたアイデアの種を紹介。このLAB活動は、SUEP.にとって苗床のような位置づけのものです。リサーチを通してアイデアの種を発見し、それを育てることで、実際の建築デザインに展開しています。
「02 Section of the Earth」では、LAB活動で発見されたSEED(="自然を受け入れるかたち"の原型)がLANDFORM(=地球の循環)と接続された結果、どのような建築になったかが、7つの建築を例に、模型やイラスト、映像を用いて紹介されています。人や動物が暮らす様子や、自然との調和も模型で表現されており、その場所での暮らしを想像できます。
こちらは展示会場での実験として作られたパビリオン「03 Shading Dome」です。日射環境や風環境、構造などの解析をもとに、最も涼しさを生む形状に屋根のパネルを組んでいます。さらに、TOTOの衛生陶器廃材をアップサイクルした「エコセルベン」という遮熱性のある素材を塗布することで、パネルの表面温度を下げることにも成功。夏でも快適に過ごせる環境が作り出されています。
座面には、「アルミナボール」という、陶器の原料を粉砕するときに使用されるセラミック球が敷き詰められています。触るとひんやりした印象を受けますが、こちらも涼しさを感じるための工夫だそう。
4階会場では、「04 Architecture towards Asia」と題して、これからのアジア型ともいえる"開放系"の建築のあり方が、「SUEP.が今考えていること」として、現在進行中のプロジェクトを中心に紹介されています。
「ミドリノオカテラス」は、都内の住宅地に建てられた全10戸のコーポラティブハウスです。屋上にある共同菜園や、ベンチやテーブルなどが備えられた眺めの良い空間が特徴的です。また、周辺に生息する鳥や蝶などが好む樹木が植えられており、暮らしの快適さと、周辺の生物との共生が両立しています。
「淡路島の住宅」は、2018年度グッドデザイン賞で金賞を受賞した、SUEP.の代表的な作品。海岸沿いの夏の強い日差しを遮るため、約3,000枚もの特注の淡路瓦が、屋根や壁面に用いられています。淡路島の太陽軌道検討模型や瓦のモックアップからは、暑さをしのぎ、風を通す工夫を知ることができます。
人間が一方的に搾取するのではなく、自然との共生により豊かな恵みが続いていくために、建築家として果たすべき役割は何か。SUEP.の思考と試行の全貌を知ることができる展覧会へ、足を運んでみてはいかがでしょうか。
編集部 丹羽
会期:2022年6月8日(水)~9月11日(日)
開館時間:11:00~18:00
休館日:月曜・祝日・夏期休暇[8月8日(月)~8月15日(月)]
入館料:無料、事前予約制
※新型コロナウイルス感染拡⼤防⽌の⼀環として、会期中は展覧会、 Bookshop TOTO共通で事前予約制を導入して開催します。
主催:TOTOギャラリー・間
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://jp.toto.com/gallerma/ex220608/index.htm