森美術館では5月29日(日)まで、結成17周年を迎えるアーティスト・コレクティブ・Chim↑Pom(チンポム)の初期から近年までの代表作と本展のための新作計約150点を一挙に紹介する「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」が開催されています。
独創的なアイデアと卓越した行動力で社会に介入し、意表を突く数々のプロジェクトを手掛けてきたChim↑Pom。サブタイトル「ハッピースプリング」には、長引くコロナ禍においても明るい春が来ることを望み、たとえ待ちわびた春が逆境のさなかにあっても想像力を持ち続けたい、という彼らのメッセージが込められています。
会場では作品が「都市と公共性」、「道」、「Don't Follow the Wind」といった10のセクションと共同プロジェクト・スペースに分かれて展示され、順路がない代わりに複数の動線が設けられています。
例えば、展示空間の演出として展示室を二層構造にし、上層部にアスファルトで舗装した大きな道を出現させたり、展示室を丸ごと一室使って、多数の作品を1つの巨大インスタレーションのように構成したりするなど、まるで会場全体が大きな展示のようです。
Chim↑Pomの作品のいくつかは様々な議論を呼び、特に広島と東日本大震災を主題とする作品は論争に発展したことも。本展では、話題となった作品そのものだけでなく、年表や関連資料などの展示や作品にまつわる賛否両論も紹介するなど、複数の視点で論争を再検証する試みも行われていました。
入口付近には、殺鼠剤などの毒への耐性を遺伝化させながら、都市圏で爆発的に増えているネズミに自身の姿を重ねたChim↑Pomの代名詞的作品「スーパーラット」の最新作が。メンバーの一人であるエリイ氏は本作について「展覧会をはじめとした様々な変化やプレッシャーを受けて、我々が成長していく姿を見ていただければ」とコメントを寄せています。
本展のためにつくられた新作は計7点。その中には、2020年のエリイの出産を機に構想された新作サウンド・インスタレーションのほか、Chim↑Pomと同世代の子育て事情から発案された、展覧会場内に託児所を開設するアート・プロジェクト《くらいんぐみゅーじあむ》も。
子育て中の人々が気軽に美術館を訪れることのできる環境をつくるほか、子どもの居場所をクリエイティブに生み出し、子育てに優しい環境作りへの課題を考える契機になることを目的としています(※事前予約制)。
日本社会を鋭い眼差しで観察しつづけてきたChim↑Pom。本展は単なる過去作品の鑑賞の場でなく、今日の社会を参照しつつ、議論のプラットフォームとなることを目指しています。Chim↑Pom の約150点の作品を通して、今、新たに見えてくるものを探しに来てみてはいかがでしょうか?
編集部 高橋
Chim↑Pom展:ハッピースプリング
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)ほか
会期:2022年2月18日(金)~5月29日(日)※事前予約制(日時指定券)
時間:10:00~22:00(最終入館 21:30)
※火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30)
※ただし5月3日(火・祝)は22:00まで(最終入館 21:30)
休館日:なし
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/chimpom/index.html