サントリー美術館では3月27日(日)まで、正倉院宝物の精巧な再現模造の数々を一堂に公開する「御大典記念 特別展 よみがえる正倉院宝物-再現模造にみる天平の技-」が開催されています。
正倉院宝物とは、奈良・東大寺の倉であった正倉院正倉に伝えられた約9,000件におよぶ品々のこと。聖武天皇ゆかりの品をはじめ、その多くが奈良時代のもので、調度品、楽器、遊戯具、武器・武具、文房具、仏具、文書、染織品など多彩な分野にわたります。
1,300年近くという長い時代を経ているため脆弱な正倉院宝物ですが、明治時代に奈良・東大寺で開催された奈良博覧会を機に模造製作がスタート。昭和47年(1972)からは宝物を管理する宮内庁正倉院事務所によって宝物の材料や技法、構造の忠実な再現に重点をおいた模造製作が行われるようになりました。
本展では、これまでに製作された数百点におよぶ再現模造作品の中から、選りすぐりの逸品を一堂に集めて公開。天平の美と技に触れると共に、日本の伝統技術を継承することの意義を感じることができます。
正倉院宝物は、聖武天皇の御遺愛品が東大寺の大仏に捧げられたことに始まります。入り口付近に展示されていたのは、正倉院宝物を代表する優品「螺鈿紫檀五絃琵琶」をはじめとする楽器類の模造、大仏開眼会の際に演じられた伎楽の面や衣装などの模造。職人の手によって描かれた細かな模様や、鮮やかな色合いを間近で堪能できます。
今では機械を使うような細かで多様な技法が職人の手によって実現されていて、その技術力と美意識に裏付けられた天平工芸の水準の高さに驚かされます。
模造製作時はX線による調査も行われました。例えば、黄銅合子の原宝物は見た目以上に複雑な構造で、塔形の鈕(つまみ)部分は五十数枚ものパーツが重ねられており、さらにはそれらが特殊な形状のびょうで留められていることが判明。模造を手がけた専門家は当時の技術の高さを再認識したそうです。
技術の高さにおいて正倉院宝物の代表ともいえる鏡・調度・装身具も、本展の見どころの一つ。煌びやかな螺鈿や、東西交易によってもたらされる貴重な紺玉(ラピスラズリ〔青金石〕)をあしらった帯は、国際性豊かな天平文化を我々に伝えています。
こうした宝物を、材質・形状・文様・技法等あらゆる面で忠実に再現することは、天平の工芸品の息吹を今に伝えるだけでなく、後世の日本の工芸を発展させる原動力になるかもしれません。
およそ1,300年の時を経て、正倉院宝物の製作当初の鮮やかな姿が、現代の名工たちの技によってよみがえった本展。継承された伝統の技に加え、CTスキャンなどの最新の技術が融合することにより、内部構造までも再現した逸品が次々と製作されています。
再現模造の逸品を一堂に集めて公開するのは、およそ20年ぶりのこと。この機会に、ぜひその"技"を確かめに来てみてはいかがでしょうか。
※作品保護のため、会期中展示替を行います
編集部 高橋
御大典記念 特別展
よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる天平の技―
会場:サントリー美術館
会期:2022年1月26日(水)~3月27日(日)
時間:10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)
※3月20日(日)、3月21日(月・祝)は20時まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
休館日:火曜日
※3月22日は開館
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2022_1/