「生活の中の美」を基本理念に活動を展開してきたサントリー美術館は、2021年11月に60周年を迎えました。そんなサントリー美術館では、現在、没後まもなく「日本仏教の祖」として信仰の対象となった聖徳太子の生涯を辿る千四百年御聖忌記念特別展「聖徳太子 日出づる処の天子」が開催されています。
推古天皇の摂政を務め、十七条憲法の制定や遣隋使の派遣など国家の礎を築いたことで知られる聖徳太子(574~622)。令和3年(2021)は太子の1,400年遠忌にあたり、太子ゆかりの寺院では、周年を迎える令和4年にかけて盛大な法会や記念事業が営まれています。展覧会では、信仰の高まりとともに各地で造られたさまざまな太子像や、太子にまつわる品々が紹介されていました。
入口で来場者を迎えるのは、「太子伝来七種の宝物」の1つである「細字法華経」。その名の通り、長大な法華経が1行34字・1紙51行の細かな文字によって1巻にまとめられています。その長さは21メートルを超えるほど。後ろには太子像がそれを見守るように展示されていました。
一面にずらりと並んでいるのは、太子の生涯を描いた伝記絵「聖徳太子絵伝」です。当時は太子の偉大さを伝える布教ツールとして、僧侶によって絵解き(民衆に向けて分かりやすく説明)されていました。本展では絵解きの代わりに、一幅ずつそれぞれの解説がパネルで示されています。僧侶がどんな風に絵解きを行っていたのか、想像が膨らみます。
現存最大サイズの「聖徳太子勝鬘経講讃図」(写真左)では、太子の生き生きとした姿が描かれていました。太子を囲む聴衆は小野妹子、蘇我馬子、百済博士の学哿、高句麗層の慧慈、太子の息子・山背大兄王とされています。太子の表情はもちろん、それぞれが耳を傾ける姿にも注目です。
本展にも数多くの貴重な美術品を提供している大阪・四天王寺は、推古天皇元年(593)に太子が建立した日本最古の官寺。寛弘4年(1007)に、太子真筆と伝える「四天王寺縁起(根本本)」が寺内で発見されると、太子信仰を核に、観音信仰や浄土信仰そして未来記など、さまざまな信仰を包摂して繁栄する大きな契機となり、「太子の霊場」としての地位をより強固なものとしました。
最後の章では、近代以降における太子のイメージをたどるとともに、天王寺楽所による舞楽と、四天王寺僧侶による声明が交互に奉納される「四天王寺聖霊会」の舞楽所用具など、現在の太子信仰ゆかりの品が紹介されています。
令和3年(2021)、四天王寺では100年に一度の御聖忌(※大阪・四天王寺では「遠忌」を「聖忌」と称する)に向け、新たに「聖徳太子童形半跏像」を造立しました。本展閉幕後、聖霊院に安置され原則非公開となるため、ぜひ見ておきたい作品です。
その名を知らない人がいない聖徳太子。太子の生涯をたどり、没後の太子信仰の広がりを美術品を通して学ぶことで、より深くその魅力を知ることのできる展覧会となっていました。1,400年遠忌というまたとない機会に、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか?
※作品保護のため、会期中展示替を行います
編集部 高橋
サントリー美術館 開館60周年記念展
千四百年御聖忌記念特別展「聖徳太子 日出づる処の天子」
会場:サントリー美術館
会期:2021年11月17日(水)~2022年1月10日(月・祝)
時間:10:00~18:00(金・土は10:000~20:00)
※1月9日(日)は20時まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
休館日:火曜日
※1月4日は18:00まで開館
※12月28日(火)~1月1日(土・祝)は年末年始のため休館
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2021_4/index.html