現在サントリー美術館では、由緒正しい神社や崇敬を集めてきた寺院に奉納され、伝来した貴重な刀剣が一堂に会するサントリー美術館 開館60周年記念展「刀剣 もののふの心」が開催されています。
所持した武将とその英雄譚、鍛え上げた刀工、守り伝えた人々などについて、様々な伝承が大切に受け継がれてきた刀剣。本展ではそういった刀剣にまつわる伝説についても、絵画や史料などを通してその意義を深く掘り下げています。
見どころの一つとなるのは、歴史上でも有力な戦国武将がかつて所持していた伝承をともなう、貴重な名刀の数々。源氏の重宝として名高い通称《膝丸》(大覚寺)や、織田信長が桶狭間の合戦で今川義元から奪った《義元左文字》(建勲神社)、さらには豊臣家ゆかりの《骨喰藤四郎》(豊国神社)など、天下の名刀が時代を超えて我々の前にその輝きを見せています。
敵と闘うための武器として知られる刀剣ですが、鬼やもののけを退治する刀剣の霊威ともなう力は、中世の軍記物などを通して長い間人々の信仰を集めてきました。こういった刀剣は武器としてというよりも、身を守り、世の中の平和を願うものとして大切に受け継がれてきたのです。
こちらは実際の武器ではなく、当初から巨大な鉾頭として作られたもの。かなりの長さでありながら、地鉄(折り返し鍛錬によって生じた模様)がしっかりと鍛接されていて、反りも強い立派な姿をしています。このつくりから、同刀の作者・来金道は高い技術の持ち主であったと考えられています。
刀剣にまつわる説話を描いた絵巻には、邪悪なものを退治する勇猛な武家とともに刀剣が象徴的に描かれています。狩野元信による《酒伝童子絵巻》では、源頼光が率いる渡辺綱ら四天王と藤原保昌が、刀剣によって酒伝童子を退治する一連の描写が収められています。こちらは、今回が重要文化財指定後の修復を経た状態での初めての公開となるので、お見逃しなく。
本展では、PCブラウザ&スマホアプリゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」とのコラボレーションを実施中。オリジナルグッズの発売や、骨喰藤四郎、秋田藤四郎、宗三左文字、膝丸の等身大パネルが館内に登場するほか、音声ガイドのナビゲーターを骨喰藤四郎役・鈴木裕斗が務めるなど、ファン必見の内容となっています。
刀剣だけでなく、絵画や甲冑武具、刀装具などを通して知る"もののふ"の心。多くの人々を魅了してきた刀剣文化の奥深さや、武家の心に培われた凛々しい美意識を改めて感じることができる展覧会でした。
編集部 高橋
サントリー美術館 開館60周年記念展「刀剣 もののふの心」
会場:サントリー美術館
会期:2021年9月15日(水)~10月31日(日)
時間:10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)
※9月19日(日)、22日(水)、23日(木・祝)、26日(日)は20時まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2021_3/index.html