2021年9月17日(金)まで、東京ミッドタウン・ホールでは生誕260年記念企画 特別展「北斎づくし」が開催されています。20歳で浮世絵師としてデビューしてから90歳で没するまでの70年間、常に挑戦を続けて森羅万象を描き抜こうとした画狂の絵師・葛飾北斎。本展ではその生誕260年を記念し、代表作である「北斎漫画」「冨嶽三十六景」、「富嶽百景」の全頁(ページ)・全点・全図を展示しています。
会場に足を踏み入れると、そこは四方八方、北斎の世界。このセクションでは、江戸の風俗、職人の作業の様子を始め、動植物、風景、建築、人物、故事から妖怪に至るまで、約3,600図が生き生きと描かれた「北斎漫画」が展示されています。
当初、絵手本として1冊で完結予定の「北斎漫画」でしたが、庶民から大名までたくさんの人々の話題を呼び、最終的には全15編が刊行されました。北斎の優れた観察眼によって描かれた画(え)は、「風」やのような目には見えないものまでもが的確に描写されています。
次のセクションでは、皆様ご存知「冨嶽三十六景」が、来場者を取り囲むように並びます。こちらは富士山を主題として描かれた大判錦絵の風景画揃物。藍の主版を用いた36点に加え、本展では好評により追加された墨の主版を用いた10点の計46点で構成されています。
いまや世界中で日本のアイコンとして浸透している「凱風快晴」(通称:赤富士)や「神奈川沖浪裏」(通称:大波)はもちろん必見ですが、そのほかの作品からもまだ知らなかった富士山の姿を見つけることのできるまたとない機会ですので、一点一点ぜひじっくりご覧ください。
見どころの1つとなっているのは、文化財デジタルアーカイブ実績を誇る凸版印刷による、和紙の繊維まではっきり確認できるほどの高精細なデジタル画像を活用した超没入シアター。本作品の為に設計された壁面の大型スクリーンと、空間に設置された和紙製の特製スクリーンに、展示作品から飛び出した図像の数々が縦横無尽に現れます。
展示空間を手掛けたのは建築家・田根剛、ブックデザイナー・祖父江慎ら北斎をリスペクトするクリエイターたち。それぞれ、「北斎とレオナルド・ダ・ヴィンチこそが、人類史上で生きとし生けるものを描きつくし、そしてその画に生命を宿し、動きを与えたいと神に願った執念がある」(田根)、「北斎といえばやっぱり"笑い"です。印刷技術を使って、これほど庶民をあっと驚かせ続けた絵描きっていません」(祖父江)と見どころを明かしています。
本展では会場だけでなく、オンラインでのミュージアムショップも開かれています。本展覧会に出展される全作、全編、全頁を完全収録した展覧会公式図録をはじめ、ポストカードやエコバッグ、Tシャツ、蕎麦猪口や豆皿など、北斎を身の回りに感じられるグッズが目白押し。あわせてご覧ください。
「北斎づくし」のタイトル通り、空間すべてが膨大な北斎作品によって埋め尽くされた本展。綿密でありながらも遊び心溢れる北斎の世界観を、たっぷりと堪能できるひと時となりました。
編集部 高橋
生誕260年記念企画 特別展「北斎づくし」
会場:東京ミッドタウン・ホール
会期:2021年7月22日(木)~9月17日(金)
※9月7日(火)は休館日
時間:11:00~19:00(入館は閉館の30分前まで)
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://hokusai2021.jp/