現在、森美術館では、今なお世界各地で挑戦を続ける70代以上の女性アーティスト16名に注目し、その活動に光を当てる「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人」が開催されています。
参加アーティスト16人全員が70代以上という本展ですが、年齢は71歳から105歳まで、全員が50年以上のキャリアを持っているという異色の展覧会です。
最年長となるカルメン・ヘレラは、1950年代初頭から限られた色彩で幾何学模様を描く抽象絵画を制作し続け、そのキャリアは70年にも及びます。写真は、日本の禅の思想から生まれた「京都(緑)」。
ヘレラ氏は繊細な線と形が織りなす作品の美しさから、米国におけるミニマリズム絵画の先駆者の一人とも言われています。105歳になる現在も、これまでの絵画シリーズに加えて大型のパブリックアートを発表するなど、精力的に創作を続けています。
最年少であるミリアム・カーンは、力強い木炭ドローイングや色彩豊かな油彩が特徴のスイスを代表する画家。作品は彼女自身のアイデンティティや生まれ育った時代に多大な影響を受けつつも、いつの時代も変わらない普遍的なメッセージを持っています。
日本からは宮本和子と三島喜美代の2名が出展。市販の糸と1,900本以上の釘のみを使用した「黒い芥子」は、鑑賞位置により見え方が変わる宮本氏の作品です。
氏は1970年代に自身のドローイングをもとに糸と釘の立体作品に取り組み、シンプルな二次元形体の反復から始まって、だんだんと複雑な三次元的な形態へと発展していったそうです。
積み重なった新聞紙に、うず高く積まれたアルミ缶。美術館の一角がゴミ捨て場に? と思いきや、こちらは三島氏の作品の一つ。まるで本物の紙くずや空き缶のように見えますが、これらはすべて精巧なやきものでできています。
身体を越えるスケールで積み上げられた新聞は、情報の溢れる私たちの社会であり、容易に破壊され崩壊しうる危機感をはらんでいるというメッセージを伝えています。
大型の作品は三島氏だけではありません。高さの異なる21本の脚によって支えられたフィリダ・バーロウの新作「アンダーカバー 2」や、2,400cm×380cm超えのロビン・ホワイト&ルハ・フィフィタ作「大通り沿いで目にしたもの(「コ・エ・ハラ・ハンガトゥヌ:まっすぐな道」シリーズより)」も見どころです。
絵画、映像、彫刻、大規模インスタレーションにパフォーマンスなど多彩で力強い作品約130点が一堂に会した本展。彼女たちを突き動かす特別な力「アナザーエナジー」を感じることができる展覧会でした。コミュニティウェブサイト「Flickr」では展示風景を見ることができます。実際に足を運ぶことが難しい方も、ぜひご覧ください。
編集部 高橋
「アナザーエナジー展:
挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人」
会期:2021年4月22日(木)~9月26日(日)
休館日:会期中無休
時間:10:00~20:00(最終入館 19:30)
※火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30)
※当面、時間を短縮して営業いたします。
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/anotherenergy/index.html