国立新美術館では5月10日(月)まで「佐藤可士和展」が開催されています。過去最大規模の個展となる本展では、佐藤可士和自身がキュレーションする会場構成のなかで、約30年にわたる活動の軌跡が多角的に紹介されています。
イントロダクションでは、佐藤の原点とも言える幼少期のコラージュ作品「宇宙」や1989年の博報堂入社当時、Macintosh IIciを用いて初めてコンピュータでデザインした作品「6 ICONS」などが展示されています。
子どものころから絵を描くことが好きだった佐藤は小学校の中学年の頃には、お気に入りのマンガやロゴをノートやプリントの裏に模写していたそう。「今、思えば、あの小さなロゴの中にブランドが持つ広大な宇宙=SPACEを感じ、その魅力に引き込まれていたのだと思う」とコメントを寄せています。
このセクションでは、1990年代後半から2000年代にかけて佐藤が手がけた主要プロジェクトから、ビルボード、連貼りポスターなど屋外広告の数々が、発表時のダイナミックなスケールで展示されています。
本展では、撮影可能なエリアが設けられているので、気になる作品があったらぜひ撮影して手元に残してみてください。
ここでは、私たちが日々慣れ親しんでいる数々のロゴを、巨大な絵画やオブジェへと物質化し、壮大なインスタレーションとして展開しています。
写真の、開催場所となっている国立新美術館のロゴも手掛けました。デザインを手掛けるにあたり、建築と共にその「新しさ」「先進性」「独創性」「進化し続ける精神」を象徴した表現を目指したそうです。
壁を覆い尽くしているのは、佐藤が手掛けたパッケージデザインの数々。コンビニエンスストアで何気なく手に取っている商品ですが、会場で改めて展示されることで、文字の種類や大きさ、どこに何が配置されているのかなどを他の商品と比べながらじっくりと観察できます。
展覧会の最後には、佐藤自身の「アイコン」とも言うべき2つのアートワークのシリーズ、「LINES」と「FLOW」の対比的なインスタレーションが展開されています。
佐藤は直線(LINES)を人間だけが持つ概念の特徴として捉え、思考の美を見出してきました。また、紙にいっさい触れることなく、動力と重力だけで描かれる「FLOW」は、目に見えないエネルギーやパワーが可視化されています。
会場を抜けたロビーには、本展のために特別に制作されたクロームメッキ仕上げの「N box Chrome」が。佐藤は「N box」に始まるHondaの軽自動車「Nシリーズ」のブランディングを、発売当初から担当しています。車全体が日の光を受けて、未来の乗り物のようにキラキラと輝いていました。
六本木未来会議では、本展を佐藤可士和と国立新美術館の宮島綾子主任研究員とともに回りながら「クリエイティブディレクションとは何か」をテーマにお話していただいた「六本木未来大学」第27回講義レポートを掲載中。あわせてご覧ください。
編集部 高橋
佐藤可士和展
会場:国立新美術館 企画展示室1E
会期:2021年2月3日(水)~5月10日(月)
開催時間:10:00~18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
休館日:火曜日
※ただし、5月4日(火・祝)は開館
展覧会サイト:(URLをクリックすると外部サイトへ移動します)
https://kashiwasato2020.com/